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CSCDスペシャルインタビュー

今は「人はみんな違う、そういうものなんだ」と思える。

早川 由紀子(第54次南極地域観測隊越冬隊気水圏モニタリング隊員)

今は「人はみんな違う、そういうものなんだ」と思える。

今回はなんと南極から、レポートが届きました。南極観測隊として活躍する早川 由紀子さんは、平田オリザ教授の授業『文理融合創造ゼミナール』を受講し、様々な発見があったそうです。

CSCDの授業『文理融合創造ゼミナール』を受講されたとのことですが、受講したきっかけを教えてください。

きっかけは2点あります。一つは、平田オリザさんの演劇ワークショップを大学生の頃に受けたことがあり、それが大変面白かった事です。それで演劇ワークショップを用いた授業に興味を持ちました。もう一つのきっかけは、当時「異なる意見を持つ人にどうしたら自分の考えをうまく伝えることができるのか」とよく考えていた事です。授業を受けることによってそのヒントを得られるのではないか、と思い受講しました。

CSCDの授業を受講する前と後で、感覚、思考、行動等において変化したことがあれば、教えてください。

授業を受ける前は、自分の意見が相手に伝わらないことばかりが気になっていました。例えば仕事では、達成しないといけないことがあります。でも、それは大抵、一人ではできないものです。何かを達成するために人と一緒に仕事に取り組む過程において、相手に伝えたいことがあるのに伝わらないというようなことがあると、今までの私は「なんで伝わらないのか?」「なんでうまくいかないのか?」ということばかり考えていたようなところがありました。それで悲しく思ったり、苛立ったり、ということが多々あったのです。
でも平田さんの授業を受けて、まず相手が「何を言おうとしているのか」に意識を向けるようになりました。それは私にとって、大きな変化でした。

平田さんは、「基本的に人はみんな違う」とおっしゃいます。「だから大変なんだ」と。平田さんのその言葉を聞いて、「人によって考え方や意見は違う。それが当然。そういうものなんだ。」と思えるようになりました。考え方や意見は人によって違うけれども、違うということそのものが問題なのではなく、その違いをすり合わせて目的に向かって物事を進めていくことが重要だと気付いたんですね。"意見が違う、考えが違う"それはとても大変なことだけれど、感情的になるべきことではない。そう思えるようになりました。


CSCDの授業で特に印象的だったことを教えて下さい。

平田オリザさんが「ワークショップを実施するときは、参加している人のこれまでの人生を尊重することが大事です。」とおっしゃったのが非常に印象的でした。自分ではない他の誰かが歩んできた人生を尊重するというのは難しいことだと、私は思います。特に「先生」のような「何かを教える立場」であった場合、どうしても自分が行きたい方向に誘導しようとすることが多いのではないでしょうか。

その人の人生を尊重しなければ、何かを伝えたいと思っても何も伝わらないのだな、平田先生はそういう風に考えてワークショップをされているのだな、すごいな、ととても印象に残りました。私自身もこれから誰かと関わっていくときに、相手の人生を尊重することを意識しなければいけないな、と思いました。もちろん、なかなかできないことなのですが...。それでも、意識するだけでもやはり違うと思います。

また、授業の中で様々な実践事例も紹介されていました。その中でも「小学校の理科の授業にダンスを取り入れている」という事例が大変興味深かったです。メダカの生態をダンスで表現するために、子どもたちがみんな一生懸命メダカを観察するそうです。しかも子どもたちのダンスはとても生き生きとした素晴らしいもので、見ていて楽しかったです。


最後に、現在の業務の内容について教えて下さい。また、ご自身が業務の中で発揮されている「ご自身らしさ」「ご自身の強み」についても、教えてください。

私は、第54次南極地域観測隊越冬隊気水圏モニタリング隊員として、大気中の微量成分観測・エアロゾル観測・雲の観測・氷床の質量収支観測等を行っています。

自分らしさや自分の強みというのは、自分では良くわからないですね...。強いて言えば、「今置かれた状況の中で楽しみを見つけることができる」ということでしょうか。これは努力して身につけたわけではないのですが、好奇心は強い方だと思います。

この仕事をやっていて経験する過酷な状況もとても面白いです。例えば、南極の越冬期間中はとても寒い時期があって、-35度くらいの気温の中で外作業をしたこともあります。それこそまつげがすぐに凍ってしまうような寒さで、作業はとても大変でしたが、普段出来ない経験だと思うと楽しかったです。野外活動中、−24度の気温の中、テントで睡眠をとるというようなこともありました。かなり寒いのですが、こんな経験は二度とない、日本では絶対にできない、と思うと「面白い!!」とワクワクしてテンションが上がります。

ただ、1年以上このような環境にいるとそれはそれで慣れてきて、南極にいること自体が珍しいと思えなくなることもあります。その中でも意識的に周りを見渡して「これは他ではできないな!」と楽しんでいます。


先ほど早川さんがおっしゃっていた「人によって考え方や意見は違う。それが当然」というのは、「他にはないこと」を見つけて楽しむという好奇心を、人との関係性においても発揮できるようになったということでしょうか。

うーん、そういう風に思えるようになれればいいな、と思います。実際はなかなか、難しいです。今までも私の中に「現象・環境」については積極的に面白いと感じる性質はあったのだろうと思います。一方、人との関係において、もちろん自分と違う新しい考えや感覚に出会ってとても面白いと感じることも多々ありますが、すべてを楽しむところまではなかなか行き着きません。でも平田さんの授業を受けて、「これは違うな」と感じても、それはそういうものなんだ、それで当然なんだ、と思えるようになったのはとても大きなことでした。そういう意味では、こういう風になれればいいな、という方向に、一歩進んだのかもしれませんね。

ありがとうございました。


(聞き手:森川優子/大阪大学CSCD特任研究員)