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CSCDスペシャル活動レポート

ありかのありか〜宇宙と写真の存在論〜

ありかのありか〜宇宙と写真の存在論〜

2014年11月16日(日)、大阪大学豊中キャンパスにて行われた科学技術社会論学会(STS学会)に合わせて、知デリを開催しました。今回は、写真家と天文学者とともに「ありかのありか」を探ります。

知デリ

大学と社会が連携して、アートや科学技術、文学など、様々な領域で活躍するゲストを迎え、表現や技術について話し合うトークプログラム。それぞれの専門領域における「知術」(知識と技術)を参加者のみなさんと横断・交換し、新しい発想の創出やアイデアの実現につなげることを目指しています。
知デリHP


私たちは何を持って存在というものを感じているのでしょうか。見えないものでも認識しているものは身の周りにたくさんあります。例えば時間や空間、空気など、見えないけれども認識しています。どのような根拠で見えないものが存在していると証明するのか、また、見えないものの存在をどのようにして可視化するのか。

ゲストのお一人である佐藤時啓さんは東京芸術大学の教授であり、光・時間・空間・身体をテーマに数多くの写真の作品を残しています。具体的にはペンライトや手鏡を用いて長時間露光することにより、光の痕跡を残して様々な写真を撮影されています。

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佐藤 時啓(美術家/写真家 東京芸術大学教授)

1957年酒田市生まれ。1983年東京芸術大学大学院美術研究科修了 長時間露光により風景や物事の間に光を彫り込んでいくような写真作品の制作や、カメラの構造による公共的な場や空間、装置を各地に展開している。「第6回ハバナ・ビエンナーレ」(1997)「第9回バングラデシュビエンナ-レ」(1999)ほか多くの国際展に参加。 Leslie Tonkonow 画廊(ニュ-ヨ-ク) HAINES画廊(サンフランシスコ)などの画廊や、シカゴ美術館(2005) Frist Center for the Visual Arts(2010)、東京都写真美術館(2014)などの美術館にて個展


もう一人のゲストは大阪大学大学院理学研究科准教授の藤田裕さんです。藤田さんは、理論上は存在するけれど体感しがたいダークマターやブラックホールのほか、宇宙線の加速の研究から銀河団に関する研究まで、様々な理論宇宙に関する研究を行っています。

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藤田 裕(宇宙物理学者 大阪大学大学院理学研究科准教授)

1968年東京生まれ。宇宙物理学者。もともと望遠鏡で星空を眺めていた天文少年で、趣味と実益を兼ねて宇宙の研究者になることを志したが、実際に研究者になると、周囲に星空を眺める人はおらず、方程式を解くことに没頭している人ばかりで、少々がっかりした(?)。そういう自分も最近は夜空は見上げていないが、最近観測で訪れた、すばる望遠鏡のあるハワイのマウナケア山でみた星は綺麗だった。主な研究分野は高エネルギー宇宙物理学、銀河・銀河団天文学。2008年日本天文学会欧文研究報告論文賞。
研究室ウェブサイト


まずは佐藤さんに、生い立ちや作品についてのお話をしていただきました。佐藤さんの実家はお寺だそうで、子供のころは救われて帰っていく人の姿を日常的に見ていたそうです。そのこともあってか、絵を見ることと寺に来ることは何か共通しているものがあるとおっしゃっていました。佐藤さんは身体の表現を自分の写真に収めたいということで、写真には自分自身は写っていないですが、その痕跡を光という形で写真に残しています。佐藤さんの作品はどれも幻想的なものばかりで、光の痕跡が生の息吹を感じさせるものとなっていました。また、佐藤さんの作品を見ると、その作品の制作過程が思い浮かび、作品の背景にある制作者の存在が垣間見えた気がします。


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次に、藤田さんが生い立ちについてお話してくださいました。なんと藤田さんの両親が東京芸術大学出身だそうで、小さいころにはよく美術館に連れて行かれたそうです。しかし、そのことにより美術館が嫌いになり理系の道を選ばれたという話をして、来場者の笑いを誘っていました。また、幼いころから天文学者になるのが夢で、毎晩天体観測をしていたそうです。天文学者は光で天体を観測するのは当然ですが、可視光で見えないものは電波や赤外線、X線を使って観測するそうです。目で見ることのできない光を用いて天体を観測するということを聴いて、五感で感じとれないものが世の中にはたくさんあるということに気付かされました。藤田さんはとても楽しそうに宇宙の話をしてくださったので、来場された方にも宇宙の魅力が十二分に伝わったのではないでしょうか。


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それぞれのお話の後、両者の対談に移ります。藤田さんが天文学者になった動機は「好奇心」だそうで、我々はどこから来たのか、我々とは何なのか、というような宇宙の謎を解き明かしたいそうです。このような話を聴いて佐藤さんは、天文や芸術の分野に関しては、今も昔も追い求めている根本的なものは変わっていないということをおっしゃっていました。天文と芸術は全然違うものだと思っていたのですが、お二人の話を聞いているうちにどちらの分野も神秘的なロマンがあり、お二方とも非常に強い探究心を持って活動していらっしゃるように感じました。 


来場された方からは「宇宙の膨張の速度と光の速度はどちらが速いのか」と専門的な質問も出ました。宇宙の膨張の速度は光の速度を超えることもあるそうで、宇宙の凄さを知るとともに宇宙への興味が湧いてきた気がします。また、アンケートでは、「このような科学コミュニケーションもよかった」「また宇宙のお話が聞きたい」など、とても喜ばしいコメントをいただきました。


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写真家と天文学者には多くの共通性があり、異分野で活動をなさっていても何か通じるものがあるのだとこの対談で改めて感じました。普段身の回りにあるものから未知の領域のものまで、物の見方を変えて想像するのに非常に良い機会になったと思います。

(報告:中嶋研生/大阪大学基礎工学部4回生)