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イベントレポートスペシャル
未来共生セミナー:SOGIの多様性と共生の課題

「セクシュアリティの病理化と非病理化」

開催レポート
2018年3月13日(火) 投稿

2017年7月、大阪大学は、大学における全構成員のSOGI (Sexual Orientation and Gender Identity: 性的指向と性自認)の多様性と権利を認める基本方針を発表しました。高等教育におけるSOGIの多様性の認識と理解は初等中等教育に比べ大きく遅れているのが現状です。また、この問題はジェンダー平等や性差別撤廃に関する取り組みと密接なつながりのなかで考える必要もあります。

セクシュアリティ(性)とジェンダー(性別)に関わる課題が"マイノリティ"として括られるひとびとのみならず、すべてのひとに関わるものであることを再認識し、どうすれば大学キャンパスにおいて誰もが尊重され、安心して生活を送ることができるのかを考えるために、セクシュアリティとジェンダー研究の第一線で活躍するひとたちによる講演と来場者との対話からなる連続セミナーを開催します。

第一回目は、2018年3月2日(金)、大阪大学 豊中キャンパス 全学教育推進機構実験棟 I サイエンス・スタジオA
にて、「セクシュアリティの病理化と非病理化」をテーマとして行われました。

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性的指向や性自認が典型的でないひとたちは、長らく社会のなかで異端視されてきたとともに、近代医学においても「性的逸脱」や「障害」と見なされてきました。社会の認識が変化するにつれて、典型的でない性的指向や性自認をもつことは病気ではなく、性愛と性別は、異性を愛し性別違和のないひとたちを含む多様なひろがりを有しており、典型・非典型を問わず、だれもがもつ性に関わる権利として考えらえるようになっています。今回は、こうした歴史を振り返りながら、性的指向や性自認の多様性と権利について考えます。

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最初に、毎年大阪大学の授業でゲスト講師としてお話しいただき、今回は一般向けセミナーの企画に携わっていただいた土肥いつきさん(高校教員・大阪府立大学大学院博士後期課程)より、今回3月2日、16日それぞれのセミナー講師について紹介がありました。

「今回のセミナーでは、康さんと東さんのお二人にお話していただくことにしました。
私は、このお二人のおかげでセクシュアリティについて知見を広めることができました。康さんには、セクシュアリティに関する歴史について、東さんからはセクシュアリティに関する世界の動きについて教えていただきました。そういう意味で、このお二人は私の先生です。このお二人のお話を聞くことによって、まさに広く、このテーマについて捉えることができるのではないかと考えました。」

土肥さんは、「セクシュアリティの脱病理化」という今回のテーマが、性同一性障害がよく知られるようになった現在の日本において非常にクリティカルなテーマであると言います。

「トランスジェンダーの立場からすると、出生時に指定された性別と自認する性別とが、みなさんよく一致しているなと思えます。性別に違和感がない、一致しているということは、針の先に糸を通すような、非常にまれなこと、と考えることもできるのではないでしょうか。」

つまり、性別が一致している、一致しないは『病気』ではなく、それぞれ多様性の一部ということになります。その一方、

「性同一性障害という『病気』ととらえるということが、『ケアを受けることができる』ということにつながるという側面もあります。」

当事者の運動によって「同性愛」が病気ではないとみなされるようになった歴史があるにもかかわらず、皮肉にも「同性愛も病気だったらよかったのに」とツイートする当事者も現れます。

「日本の社会全体が『病理』のなかに包まれている現状を考える必要があります。セクシュアリティとジェンダーに関する長い歴史の中で、今、この『病理』の状況にある日本が、次の一歩を踏み出すことができるのか、あるいはここに止まるのかという岐路にある、と言っても過言ではないと思います。」

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次に、康純さん(精神科医・大阪医科大学)より、ジェンダーに関する日本における歴史、世界における歴史について講演がありました。

「外見で「その人がどういう気持ちなのか」ということは判断できない。この点が非常に大切。」
「同性愛については、西洋の歴史の中で宗教的ないしは道徳的な罪(Sin)とされ、その後同性愛の犯罪化、病理化、そして脱病理化に至る大きな流れがある。」

19世紀末に登場した性科学者は当事者の声に耳を傾け、観察し、罪や犯罪ではなく、人間の多様なあり方の一つとしてとらえようとしてきた側面がある。同性愛と性別違和は当初明確に区別されていなかったが、やがてそれぞれ異なるものとして認識され、同性愛は当事者による抗議などにより精神疾患から外されるようになった経緯がある。性別違和についても、世界の動向としては病気ではなく、「セクシュアルヘルス」に関わる事項として医療的なケアを受ける対象であると考えられる方向にある。

「性と性別に関する言葉として、sex, gender, gender identity, gender role, sexual orientation 等の言葉がある。現在は、性の多様性を示す表現として、SOGI (Sexual Orientation & Gender Identity)という言葉が用いられるようになってきている。」
などのお話がありました。
学校教育におけるLGBの理解の遅れについても指摘がありました。
また、最後に、性別に関する違和感に対する医学的な考え方、医療のあるべき方向についてもご説明いただきました。

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セミナーの後半は、ほんまなほ さん(大阪大学COデザインセンター准教授)による進行で、土肥さん、康さん、参加者のみなさんの間で、非常に活発な質疑応答、意見交換がなされました。

次回、第2回目は、「トイレ・更衣室問題から考える多様性」がテーマです。
2018年3月16日開催です。(詳細はこちらをご覧ください)是非多くの方にご参加いただきたいと思います。


(書き手:森川優子 大阪大学COデザインセンター特任研究員)