大阪大学 COデザインセンター

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スペシャル授業レポート
授業レポート

集中講義「協働術H(表現の場を作る)」(2)

COデザインセンター開講科目<協働術>
2018年10月 2日(火) 投稿

COデザインセンターでは多様な授業が開講されています。


その中のひとつである、2018年度集中講義で展開される「協働術H(表現の場を作る)」(田中 均 COデザインセンター准教授)。シラバスには、


この授業の目的は、「協働術」(さまざまな現場で複数のアクター/プレーヤーとともに支え合い、わかちあい、つくりあうためのアーツ)を学ぶことです。
特にこの授業では、表現活動を通じて社会的課題に向き合う取り組みが行われている現場に入り、町を歩き、ワークショップを経験することを通じて、「表現が行われ、受け入れられる場」を作り、維持することはいかにして可能かを考えます。
この授業の場合、「現場」は、かつて日雇労働者の町として知られ、現在は単身高齢者が多く住む西成区の通称釜ヶ崎地域です。高齢化の進行と周辺地域の再開発とともに、この地域は急速に変化しつつあります。NPO「こえとことばとこころの部屋」(ココルーム、代表・上田假奈代氏)はこの地域で2012年から「釜ヶ崎芸術大学」(釜芸)を開催し、哲学・音楽・詩の講座を通じて、誰もが表現できる場を作り出そうとしています。
この授業では、ココルームとの協力のもと、さまざまな仕方で「表現の場を作る」ことに取り組んできた4人のゲスト・アーティストといっしょに釜ヶ崎の町を歩き、彼らが企画する釜芸の講座に参加し、そこに集う人々と対話します。


と、あります。
いったい、どのような授業なのでしょうか。

2回にわたってレポートする、2回目です。

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前回のレポートは、こちらからご覧ください。

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本授業は、釜ヶ崎芸術大学(通称:釜芸)の授業の一部と共同で開催されています。

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釜ヶ崎芸術大学(通称:釜芸)
2012 年より大阪市西成区釜ヶ崎でスタート。「学びあいたい人がいれば、そこが大学」として、地域のさまざまな施設を会場にした、ゆるやかな釜芸プロジェクト。天文学、哲学、美学など、年間約100 講座を開催中。近隣の高校や中学校への出張講座を行う。展覧会など:ヨコハマトリエンナーレ 2014、アーツ前橋「表現の森」(2016)、鳥の演劇祭(2016)、大岡信ことば館「釜芸がやって来た!(2017)」招聘。

釜芸のウェブサイトはこちらをご覧ください。


NPO法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)
釜芸を運営するアートNPO法人 。2003年、大阪市の現代芸術拠点形成事業に参画し、いまはない新世界フェスティバルゲートで活動スタート。「表現と社会と仕事と自律」をテーマに喫茶店のふりをしながら、さまざまなであいと問いを重ねてきた。2007年に市の事業は終了し、2008年釜ヶ崎の端の動物園前商店街に拠点を移す。2016年同商店街の南に移転し「ゲストハウスとカフェと庭ココルーム」を開所。

ココルームのウェブサイトはこちらをご覧ください。

今回は、2018年6月27日の授業についてのレポートです。


この日のゲストは、マット・ピーコックさんです。
マットさんは、イギリスでホームレスの人びととともにオペラを制作することを通じて、彼ら・彼女らを支援する活動を行ってきました。
また日本でも横浜寿町や大阪釡ヶ崎でワークショップを開かれた経験があります。

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マット・ピーコック (Matt Peacock) さん

ストリートワイズ・オペラ アーティスティック・ディレクター

ホームレスの経験のある人びとを音楽を通じて支援する団体、ストリートワイズ・オペラを2002 年に創設し、芸術的価値と社会的価値の両方を追求するオペラ制作を行う。
2011 年にはエリザベス女王からMBE 勲章を受け、2013 年には、ゴードン・ブラウン元英国首相の著書『Britain's EverydayHeroes』で、30 人の社会活動家の1 人として取り上げられる。
2016 年には、アートとホームレスのための活動の国際的なネットワークを作るプロジェクト「With One Voice」を開始して、リオデジャネイロ文化オリンピックでは40 のイベントを行った。


授業が始まりました。

最初に、アイスブレイクを兼ねて、ペアになってお互いの似顔絵を書く、というミニアクティビティを行いました。

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特徴的?!な似顔絵が、たくさん完成しました。

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自分の似顔絵を手に、笑顔になる参加者の皆さん。

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一気に会場の雰囲気が和やかになりました。
この授業には、学生だけでなく、一般の方々も多く参加されています。

次は、マットさんが制作したオペラを皆で鑑賞します。

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マットさんは、もともとは音楽ジャーナリストとして活躍されていました。
そんなとき、ある政治家の「ホームレスはオペラハウスに来ないでほしい」という趣旨の発言が大問題となりました。

マットさんは、これは典型的なホームレスの人々への反応だ、と言います。

そういう状況の中で、「あなたは音楽について仕事をしているので、この状況をぜひ変えてほしい」と言われたそうです。
マットさんは、どうしたら良いかはわからないが、やってみようと考え、オペラハウスの知り合いに依頼して、パフォーマンスをする許可を得ました。デザイナーと一緒に、小道具、コスチュームを作るところから企画を始めたそうです。

その活動を進めるうちに、センターの雰囲気も変わってきたそうです。
最初は、活動に対して受動的だったホームレスの人々が、いつの頃からか能動的に表現しようとし始めました。
パフォーマンスが終わったときに起きたスタンディングオベーション、それはホームレスの方々にとって初めての賞賛とも言えるものでした。

今、マットさんは、NPOをつくり、毎週様々なアクティビティを行なっています。
ホームレスについて話される内容をどんどん変えていきたい、と、マットさんは話します。
マットさんは、失敗や恐れは何かを教えてくれるものである、と捉えているそうです。
NPOの活動の中で、困難だと感じることも数多くあるそうですが、いつもその思いをもって取り組んでいると話していました。


マットさんが強調していたのは、アートはとても重要性だ、ということです。
アートを通じて様々な人がコラボレーションをすることが、世界を強くしていく、と話します。

人はどうしても、自分は学生だ、社会人だとラベルをつけたがり、そこに人としての価値を置きがちです。
そして、学生でなくなったり、仕事がなくなったりしたときに、自分に人としての価値がなくなったと感じるときがあります。

アート、スポーツなどの前向きなアクティビティは、もう一度、人として「何ができないか」ではなく、「何ができるか」ということを思い出させてくれる、とマットさんは強調します。

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参加者の皆さんからの質問に、マットさんが一つ一つ丁寧に答えてくださいました。
学生たちも熱心に耳を傾けていました。

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続いて、本日2つめのアクティビティです。

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参加者全員で、一つのメロディーを歌います。

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最初は歌うことに少し緊張していた参加者の皆さんも、どんどん笑顔になっていきます。

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挨拶を交わすように、アイコンタクトをしながら歌います。

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アクティビティが終わる頃には、会場全体に、楽しい気持ちがあふれていました。

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最後に、今日の授業の感想を短冊に読みます。

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それぞれの気づき、思いを短冊にこめて発表しました。

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授業の中で鑑賞したマットさんが制作されたオペラは、胸を打つものでした。

「アートによって、自分を表現することはとても大切なこと。それには、人を癒す力がある。」
と話すマットさんの言葉を、参加者皆で実感し、さらにその楽しさを皆で共有できた時間だったと思います。


釜ヶ崎芸術大学では、このようにCOデザインセンターと共同で行なっているプログラムのほかにも、多くのプログラムが用意されています。
興味のある方は、ぜひ釜芸のウェブサイトをご覧ください。


(書き手:森川優子 COデザインセンター特任研究員)