CSCD

CSCDとは

研究テーマ群

コミュニケーションデザインの課題

CSCDでは、コミュニケーションデザインの課題として、主に7つのテーマに取り組んでいます。CSCDにおけるプロジェクトや研究は、これらの複数のテーマを横断するかたちで進められます。

▽科学技術

私たちの身の回りには、科学技術によって産み出された製品やサービスであふれています。それらは、私たちの生活に豊かさや便利さをもたらしてくれますが、その一方で危険やリスクも存在します。

今や、生命技術やIT技術に典型的に見られるように、科学技術は私たちの生活や将来に正負両方の面で大きな影響を与えるものです。とすれば、科学技術の正と負の影響を受ける普通の人々にも発言権があっていいはずです。しかし、社会には、そのような人々の声を聞き応答してくれるチャンネルがありません。

知識のない人はまずそれを習得しない限り、専門家に意見を言う資格はないのでしょうか? 科学技術の影響を受けて生活する人々の声を、社会に活かすことはできないのでしょうか? 様々な領域の専門家が、生活者とともに科学技術のあるべき姿を話し合うにはどうすればよいのでしょうか?

CSCDでは、科学技術をめぐる様々なコミュニケーション不全の問題に取り組み、望ましいコミュニケーションのスタイル、デザインの開発を目指しています。

▽コミュニティ

私たちの生活は、個人や家族だけでなく、さまざまな規模の地域コミュニティに依存して成り立っています。多様な人々が暮らす地域や国家においては、文化・言語・立場の異なる人たちが、互いの考えを理解し、コミュニティの方向性をともに考えてゆく必要があります。

たとえば、「まちづくり」とは、本来、人間が地域生活をおこなうかぎり続いてゆく、「まち育て」と呼ばれるべきものです。そのためには、専門知識と技量を有するコンサルタントや研究者、行政担当者だけでなく、市民がコミュニティの課題を自分たち自身の問題として継続して話し合う必要があります。
また、同質的な慣習や制度が色濃く残る地域社会においても、人々の流動化が国境を越えて活性化し、多言語・多文化化する傾向にあります(例えば、外国人旅行者(「インバウンド観光客」)増加による人流・交流の影響、定住型外国籍住民人口増加など)。

相互の違いをも認めつつ、可能なビジョン共有するにはどうしたらよいのでしょうか?
臨機応変に議論を組み立て、成果をコミュニティにフィードバックするために何ができるのでしょうか?

CSCDでは、交通を活かしたまちづくり、地域活性化、交流型ツーリズム、多文化共生など、地域協働と多文化共生の二つの観点から、多様化する地域社会に必要な地域恊働デザインの教育と実践的研究に取り組んでいます。

▽臨床コミュニケーション

「臨床コミュニケーション」とは、人間が社会生活をおこなうかぎり続いてゆく、ある具体的な結果を引き出すためにおこなう対人的コミュニケーションのことです。

ここで言う臨床とは、狭い専門領域としての臨床(clinic)ではなくその現場における実践状況(human care in practice)のことをさします。臨床コミュニケーション研究において、このような脱専門領域の意識を共有することは重要です。なぜなら、臨床コミュニケーションとは、専門家どうしの対話のみならず、専門家と普通の人、そして日常経験の中に生きる普通の人どうしの対話などから成り立っているからです。

たとえば、医療・福祉・看護などの現場においては、具体的な専門知識と技量を有する医療関係者と、問題を抱えその解決を求める患者とのあいだのコミュニケーション、治療やケアといった具体的業務を確実に行うため、異なる領域の専門家同士のコミュニケーションが不可欠です。さらに、その成果を現場にフィードバックし、現場で得られる知恵を習得・継承・発展させてゆく必要もあります。

本センターでは、とくに、医療・看護・福祉の現場、紛争の現場、異文化間における臨床コミュニケーションに焦点をおいて、教育と研究を進めていきます。

▽アート&コミュニケーション

人間は、特定の時間や空間を共有し、あるいは時空を超えて、さまざまな芸術(アート)によって、論理的な言語では困難なコミュニケーションを行なってきました。芸術は、視覚や文字や知識だけに依存せず、複数の感覚に働きかけ、さまざまな障壁を超えて理解しあう助けになる、いくつもの意味でユニヴァーサルなコミュニケーションです。芸術は多くの人々に直接訴える〈ちから〉をもっています。

また、芸術は、私たちの感受性を豊かにするだけではなく、積極的に参加する、つまり、自らつくったり、制作に協力したりすることによって、より肯定的な自己イメージの形成を助け、私たちに勇気や自信を与えます。ときには、痛みや醜ささえ表現することによって、他の人々や社会や環境への洞察力を育む助けにもなります。

CSCDでは、文化施設だけでなく、医療・福祉・教育施設、オープンスペースや都市などでの実践を通じて、芸術・文化の〈ちから〉を活かす道を探求しています。また、教育現場と連携して、芸術・文化の観点から、地域社会や国際社会に貢献できる媒介者を育成します。

▽デザイン&メディア

デザインは、社会生活における様々なコミュニケーションのための具体的なモノや場を創りだす大切な手法であり考え方です。

CSCDでは、具体的な映像やグラフィックなどモノのデザイン、そしてそれら総合的な場のデザインを通して、人と社会、大学と社会、産業と社会をつなげていくコミュニケーションを実現します。また、その成果と手法をデザイン教育や社会との関わりのために公開・提案していきます。さらに、こうしたデザインへの取り組みは、コミュニケーションのメディア(コミュニケーションを媒介するさまざまなモノ・カタチ)に関する研究と実践にも接続します。

CSCDでは、文字・画像・音声・映像の各メディア、そしてデジタル/アナログを越境するコミュニケーションの場・回路・メディアの考案と開発を行います。また、例えば、コンピュータネットワークを介して複数の人間が文字ベースの議論を行うための手法から、映像を軸とした対話空間の創成など、さまざまな実践の場面に即した研究にも取り組んでいます。

▽思想・歴史

高等教育においてコミュニケーションデザインを探究するためには、コミュニケーションに関わる多様な技法的・実践的課題に取り組むだけでなく、思想や歴史という奥行きの次元を視野に収めていることもまた不可欠になります。言語や身体、文化や宗教という問題から人間と社会を問い直す、あるいは、西洋や東洋、日本やアジアの視点から現代社会を論じる、こうした人文学的知性は、文系・理系の専門の区別を問わず異種のものが出会い、対話してゆくための基礎となります。

また、CSCD では「高度教養教育」という今後の大学の課題にこたえるための具体的な方針や方策を探っていきます。コミュニケーションデザインとしての歴史・思想は、専門的な知の操作や伝達よりむしろ、異なるものを連絡させながら認識を批判的に深化させるという媒介的知性として、高度教養教育における重要な役割を担うことでしょう。

▽減災

日本の防災対策は、建造物の耐震・耐火等による被害抑止(ハード対策)に重点が置かれてきました。また、災害発生後の対応に関しては、自治体と公的機関(消防・警察・自衛隊)が中心でした。 しかし、阪神・淡路大震災(1995年)は、このようなハード重視の防災対策と公的機関による災害救援の限界を露呈させました。同時に、ボランティアによる柔軟な対応が評価され、被災者自身によるくらしの再建の重要性が理解されてきました。

ところが、依然として、風水害・地震・津波の予知・予報、地質や地盤情報などの防災情報は専門機関に集中し、その多くは専門知識がないと読み解けません。一方、被災者の生活やボランティアによる災害関連の様々な取組みは、必ずしも専門家に理解されているとはいえないのが現状です。

災害の被害を受け、長期にわたる復興へと進んでいくのは被災者です。被災者をたくさんの市民や専門家が支えることができるはずです。被災者(市民)を中心に据えた防災・減災のあり方を提案していくことが必要です。

減災という分野では、専門家と一般市民がともにそれぞれの知を理解し、伝達し、行動へとつなげていくことを、被災者に焦点を当てながら、実践的かつ理論的に検討していきます。