ヘルシズム
healthism
解説:池田光穂
ヘルシズムとは、人びとが健康状態を達成しようとすることが強制されることを通してではなく、むしろ積極的に自らすすんで心がけ、それを実践するという社会現象あるいはイデオロギー的実践である。
健康法および自然食品運動の隆盛に関連して論じられる議論にヘルシズムがある。
デュボス『健康という幻想』(1977[1959])によると、アメリカ合衆国では1950年代にはすでに日常生活のなかにヘルシズムが浸透していることがうかがえる。ヘルシズムは、先進工業国においておおむね見られる現象であり、健康とその帰結として長寿が、人びとの日常生活において高い価値が与えられることに特徴があると同時に、医療および健康維持に関連する専門職支配と密接な関係をもっていることが指摘されている(Zola,I.K.,1977,Healthism and Disabling Medecalization, in "Disabling Professions"(I.Illich ed.,)Marion Boyars)。
黒田(黒田浩一郎,1992,情報の観点からみた現代医療,思想,817:95ー107)は今日の社会におけるヘルシズムが増大してきた要因として次の3つを挙げている。すなわち、
(1)第2次世界大戦以降における生活水準の向上や政治的安定の結果、日々の衣食住の不安が相対的に軽減されたこと。
(2)乳幼児死亡や若年の感染症による死亡が減少し、老齢以前の死亡が“無意味な死”として見なされるようになってきたこと。および
(3)肉体的および精神的な健全さと若々しさを強調する価値観の浸透である。
この指摘は、健康法や自然食品の需要の増大に関してもある程度符合する。
ヘルシズムというものが一部の市民の過剰な思いこみだと判断される方は、近所の書店の医療や健康のテーマを扱う書棚をご覧になることをおすすめします。最初やれやれと思って冷静に眺めているけれど、やがてご自身やその家族の病気や健康問題に関するテーマにふと手を伸ばしているご自身に気づくはずですよ(2010年4月豊中市内で撮影)。
(c) Mitzub'ixi Quq Chi'j. Copyright 2003-2010