おへその象徴論
へそ、という言葉がその形から小さな突起を表わすとともに、胎児と母を結ぶ絆に由来して“大切なこと”“肝要なこと”を指し示していることは誰でも知っている。
へそはまた、その与えられた位置に由来し“中心”を意味する。均整に描かれたレオナルド・ダ・ビンチの人体図を思い起こしてみなさい。四肢と体幹はへそを中心にしてバランスよく円のなかにまとまっている。
古代インド医学では、人体にはいくつかの中心があり、チャクラ(円盤)と呼ばれている。そのうちの重要なチャクラの3番目はへそにある。へそよりも少し下方の部分をさす丹田(臍下丹田)は、我々の身体にとって気合いや元気の源泉であるが、このようなアジア医学の伝統の影響を受けていることは明らかだ。
生後間もないへそは突起しているが、成長につれてやがて小さな窪みになる。古代ギリシャのビーナス像のへそは、現在の我々の審美的センスからみても、美的対象ではある。しかしそれは、生殖器のような身体の開口部を連想させエロティシズムにおける潜在的な対象であるといっても過言ではない。
へその開口部は身体の中央に位置することから、大地や宇宙の中心――とくに地下界へと通ずる――としてもみなされる。大きな沼地や火山の噴火口が“大地のへそ”と称されて崇拝対象となることもある。他方、大地から大空にそびえ立つ中心は、それを樹にたとえて宇宙樹と呼ばれる。その点では、大地のへそと宇宙樹はともに宇宙の中心のシンボルなのである。
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