暴力について考える
On Thinking on Violences
解説:池田光穂
[学習目標]
(1)人間が行使する暴力の多様な様相について理解する。
(2)アカデミズムの世界において暴力について語られてきた、さまざまな思想・主張・意見を概観する。
(3)さまざまな暴力の事例について多角的に考察することができる。
(4)さまざまな暴力の事例について、どのように向き合い、対処する実践が可能であるかについて意見表明ができるようになる。
[授業の内容]
20世紀は戦争と革命の世紀だとレーニンは予言したが、「革命」の現実が無残な姿をさらけ出した今、アーレントの言うようにそれはまさに暴力の世紀であり、暴力の世紀はいまだに終わっているわけではない。授業目標に掲げているが、暴力はあまりにも我々の前に圧倒的で多様な姿を現し、とりつく島がないという絶望感を覚えるものがいるかもしれない。元来、暴力について語ることは、おもに政治経済学(歴史を含む)と心理学(精神医学をふくむ)の「言語」で語られることが多かった。硬直した紋切り型の「暴力」理解を打破しうる社会と文化を機軸にした人間の暴力への理解――解釈と実践――に道を切り開くべく、教師は授業を盛り上げていきたい。
Z・ブレジンスキー(1993)によれば、今世紀(1993年までの)の政治暴力の犠牲者の推計は、1億6700万人ないしは1億7500万人以上と概算している(ヒェーと言いたい、他方でだから何なんだとも突っ込みたい)。
[キーワード]暴力、革命、戦争、拷問、解放、和解
[スケジュール] ここよりリンク
[授業のチェックポイント] ここよりリンク
[テキスト]
歴史的記憶の回復プロジェクト編、2000『グアテマラ 虐殺の記憶』飯島みどり他訳、東京:岩波書店。それ以外の印刷物は授業で配布。
エリザベス・ブルゴス編著*『私の名はリゴベルタ・メンチュウ : マヤ=キチェ族インディオ女性の記録』高橋早代訳、東京:新潮社、1987年
*この本の著作権めぐってブルゴスとメンチュの間に争いがあります。またこの本に記載されている内容をめぐって、メンチュとストールの間に論争があります。これについての知るには次の太田好信(2001)を参照すること。
太田好信『民族誌的近代への介入 : 文化を語る権利は誰にあるのか』京都 : 人文書院、2001年
ハンナ・アーレント『暴力について : 共和国の危機』山田正行訳、東京 : みすず書房、2000年
ハンナ・アーレント『全体主義の起源 1.反ユダヤ主義』大久保和郎訳、東京 : みすず書房、1986年
「この本は(引用者注:『全体主義の起源』)、最初一瞥したときには、いやもう一度見直したときにすらも、まったく言語道断としか見えないことを理解しようとする試みなのである。/理解ということはしかし、前代未聞のことを前例から演繹すること、もしくは現実のインパクトや経験のショックがもはや感じられないようなアナロジーや一般原則によっていろいろの現象を説明することによって言語同断さを打ち消すことを意味するのではない。それはむしろ、事件がわれわれの肩に載せた重荷を良心的に検討し担う――そうした事件の存在を否定するのでも、現実におこったことは別の形では起こり得なかったのだとでもいうように意気地なくその重みに屈するのでもなく――ということである。要するに理解するということは、現実――それがいかなるものであるにしろ、またあったにしろ――に成心なく、しかし注意深く直面し、抵抗することなのだ」(ハンナ・アーレント『全体主義の起源 1.反ユダヤ主義』大久保和郎訳、p.viii、1986年)。
現代思想「和解の政治学」『現代思想』Vol.28(13)、2000年11月号、東京:青土社
Carmack, Robert M. ed. 1988. Harvest of violence : the Maya Indians and the Guatemalan crisis. Norman : University of Oklahoma Press.
フォルジュ、ジャン−フランソワ『21世紀の子どもたちに、アウシュビッツをいかに教えるか?』高橋武智訳、作品社
ファッセル、ポール(Paul Fassell)『誰にも書けなかった戦争の現実』宮崎尊訳、草思社、1997年
歴史の修正主義者に読ませたい一冊。あるいは全体主義者の戦争は糞で、連合軍の戦争行為はよいという浅はかな認識も、この本の前では無力だ。前線でも、銃後でも、そこには愚かな幻影に動かされる人びとがいる。そのような挑発に載らないためには、ただひとつ。反省心なしに社会全体のために奉仕することは美しいという条件反射をやめることだ。
真鍋祐子『光州事件で読む現代韓国』東京:平凡社、2000年
限定辞がつかない民主化ではなく「韓国ナショナリズムにとっての民主化」のパブリックメモリーを考える必読書。分析は紋切り型かもしれない、人類学者にとっては「恨」を解釈図式に持ち込むよりも、研究者をも巻き込んだその民衆的再生産のほうに興味がある。
Z・ブレジンスキー『アウト・オブ・コントロール』鈴木主税訳、草思社、1994年
[関連リンク]
[評価方法]
課題論文の評価点、平常点、試験の総合評価
[履修上の指導]
(c) Mitzub'ixi Quq Chi'j. Copyright 2001-2009