文化人類学調査研究入門01
テーマ:文化人類学者の情報収集
文化人類学の学問的定義にまつわる話はこの行でリンクしているページで説明しているので、ここでは省略する。
文化人類学者の仕事は2の活動からなりたっている。ひとつはフィールドワークとよばれる社会調査で、他のひとつは民族誌とよばれる書物や論文を書くことである[最近はマルチメディア時代を反映して、民族誌は動画や音声をウェブページやビデオ映像などのメディアを介して公開されることもある(例:民族誌映像→映像人類学)]。
フィールドワーク(field work)は研究対象となっている人びとと共に生活をしたり、そのような人びとと対話したり、インタビューをしたりする社会調査活動のことである。
民族誌(ethnography)は、フィールドワークの記録を基礎にした書物=論文[さらに映像・ウェブページなどの類するもの]である。民族誌(エスノグラフィー)は、今世紀初頭(具体的には1922年)に定式化されたいくつかのものが英語で公刊されて以来、さまざまなスタイルの変化はあるものの、人類学者に書かれ読みつがれてきた。民族誌=エスノグラフィーの狭義の意味は、対象の民族(エトノス)の記録(グラフィー)であるが、現在では、民族誌は人間の社会や文化について考えるための、文字記述を中心とした、人間ないしは人間集団を対象にした実地調査にもとづく記録ということができよう。
社会学者とならんで、そのオリジナルな活動を探検から調査へと転換させてきたのは文化人類学者(民族誌学者・民族学者)たちではあるが、フィードワークは、社会学者や文化人類学者だけに独占されているものではない。だが、フィールドワークを専業としてきた民族誌学者たちは発達させた独自の方法論という歴史的伝統を文化人類学者たちは受け継いできているのも事実である。また、今日におけるビデオ機材や録音器具の性能向上により、フィールドワークの姿は技術革新の影響を受けたものになっている(→文献:佐藤郁哉,1992,『フィールドワーク』新曜社)。
■ フィールドワーク
■情報源
インタビュー[構造的/非構造的]:
参与観察:
対話・会話:
■情報を記録する技術
フィールドノート
録音器具:(例:テープレコーダー)
映像記録器具:(例:ビデオレコーダー)
■リンク先
文化人類学者が、どのような情報収集をおこなうかを理解する鍵は、まず民族誌がどのように書かれているのかを知ることである。民族誌は、研究対象になった人びとの文化や社会が、文化人類学者が描きたいと考える筋書きに沿って書かれている。これは、民族誌が、文化や社会についての理論書であると同時に、文芸的作品として読めることをあらわしている。しかし、民族誌における文芸上の修辞(レトリック)は、あくまでも前者の<文化や社会についての理論書>としての体裁を保証するための手段として使われていると考えるべきだ[少なくとも当面は]。
民族誌は、古典とよばれている主要な著作や論文がある(→ブックリストの【著作年表】・【名著論文選】を参照)。文化人類学者、それらの学界内部で敬意をもたれていたり、自分の興味にあった学派の著作や論文を手本にしたり、あるいは、文化人類学以外の著作や論文からインスピレーションを受けて著作や論文をまとめようとする。
従って、文化人類学者はその研究者の仲間でよく読まれている学会誌や研究雑誌、さらには著名な人類学者の著作を読むことに専念する。
■ アメリカ人類学協会(American Anthropological Association, AAA)
略号がAが3つ並んでいるので、トリプル・A[エー]とよばれることがある。アメリカのさまざまな人類学会をとりまとめている学会の連合体でかつ、それ自体がひとつの巨大な学会。。ただし、応用人類学会(The Society for Applied Anthroplogy)だけは、これに所属していない。American Anthropologistを発刊。タブロイドのニュースAnthropology Newsもある。
■ 王立人類学協会(The Royal Anthropological Institute)
どうも欧米かぶれですんません。英国の、ということは社会人類学関連のリソース、Journal of the Royal Anthropological Institute (Incorporating 'MAN')やAnthropology Todayに関連した情報がわかる。
■ 日本文化人類学学会(Japanese Society of Cultural Anthropology)
日本の文化人類学者の学会である。『民族學研究』を発刊する。日本における文化人類学の成立には独特の経緯があるために、同学会員には、日本人類学会、日本民俗学会(→これらは日本民族学会のブックマークにリンクがあります)に所属している人も多い。
■ 人類学者バイオグラフィー・ウェブ(Anthropology Biography Web)
英語圏の人類学者に偏ってますが―もちろん人類学の最大のヘゲモニー言語は英語ですので―人類学者の伝記的事実、著作文献などをしらべる優良のサイトです。人類学の歴史を勉強する人はハマりますよ。
■ カルチュラル・サバイバル(Cultural Survival)
地球上の先住民族との連携をとりながら、先住民族の権利の保護と伸長を試みている国際的組織です。実践派の人類学者たちにとっての重要な議論の場でありかつ情報源です。
■ アリアドネ
日本語で入れる人文社会系リンクに関するコンテンツとしては最良・最大サイト
■ アジア歴史資料センター(Japan Center for Asian Historical Records)
日本ならびにアジア近隣諸国の公文書類のデータベースとそれにリンクするデータベース。
■ インターネット・サーチ・エンジン
| Anthropology Resources on the Internet |
■アンカバー
UnCover (c): 論文データベース
■人類学レビュー年報(Annual Review of Anthropology):
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フィールドワークで得た資料があり、さまざまな民族誌論文・著作を読んだ経験があっても、民族誌を書かねばただの調査ディレッタントである。
自分が心酔している著者のスタイルをまねても、オリジナルの苦労仕事でも何でもいいから、民族誌を書かねば文化人類学者とは言えない。
しかし、民族誌学にもとづく論文や著作は、フィールドを知れば知るほど<書けなくなる>という逆説が、研究者のあいだではよく言われる。調べれば調べるほど、新たに調べる項目やテーマがどんどん増殖していくのである。
このため、欧米の研究者のあいだでは、調査期間が終わった博士課程の研究者は、すみやかに隠遁して比較的に集中して博士論文を書き上げることと助言する先達の人類学者も多いと言われている。そして、この助言は日本でも通用すると思われる。
民族誌論文でも著作でも、結局はアイディアが固まったら、どんどん書いてゆき、ある程度まとまったら、小出しに独立した論文にするか、同業者の集まる研究会や学会で発表したり、先達の人類学者に読んでもらって批判や助言を受けることである。
以上のような知的生産のプロセスは、フィールドワークで得たデータを実験室で得たデータだと考えれば、いわゆる実験系の研究者と同じプロセスをたどって、論文生産にこぎつけていることになる。だから、文化人類学の論文生産は、外側をなぞれば実験系の科学者とおなじことをやっていることになる。ただし、実験とフィールドワークが根本的に異なることがある。それは、フィールドワークの研究対象は、生身の人間であり、情報の質やその加工には倫理的な関係が生じるということである。もっとも、自然系の実験でも、人間を相手にする医学研究における人体実験は当然のことながら、動物実験でも倫理要綱が定められており、なんでもありというわけではないことは当然である。
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