クレジット・サイクル・モデル(CSM)
Credit Cycle Model in Knowledge Production
池田光穂
クレジットとは、信用のことである。クレジットサイクルモデルとは、研究者の成功を、科学的成果の信用が増大、展開することで説明しようとする社会モデルのことであり、日本のバイオサイエンス研究者の文化人類学的研究をおこなったサミュエル・コールマン(2002)が、その分析に使った。
ビジネスや資本主義経済をかじった人ならすぐにわかると思うが、実体経済は「資本」を投下しそれを展開させて利潤を回収するしくみで動いている。他方、科学の世界は(経済的利潤を生むような社会的営為ではなく)、むしろ外部から資金などが投入されるのので、実体経済とは縁もゆかりもないような活動に見える。しかし、資金というかたちで投下され、利潤というかたちで回収されるものが「信用=クレジット」であるとみると、資本主義のメカニズムに関する批判的研究の枠組みが、科学者の営為の分析にも使えるという単純な類推の発想を応用したものである。
このクレジットサイクルモデルは一見オリジナリティがあるようだが、じつはデミングとシュハートのマネジメントサイクルであるPDCAと類似のものである。PDCAで管理されるものは生産物の品質であるが、クレジットサイクルで保証される ものは研究者・研究集団の名声(文化資本)である。下図の両者を見比べてほしい。


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文献
コールマン、サムエル 2002 『検証 なぜ日本の科学者は報われないのか』岩館葉子訳、東京:文一総合出版。