低強度紛争
Low Intensity Conflict, LIC
解説:池田光穂
強度を低レベルに抑えた戦争状況、あるいは戦争遂行理論のこと。
対ゲリラ戦略に対して、代替する広範囲にわたる戦略として考案されたもの。低水準紛争とも言う。
米国を例にとると、包囲された特定の地域内(ニカラグア)を、経済的・政治的に破綻させるために、メディア(反共ラジオ放送)、外交政策(周辺諸国への政治的経済的支援)、国際経済政策(ニカラグアの輸出産品にたいする国際価格の操作=下落)外交的介入(国外での反共的な臨時政府樹立を支援、承認)など、直接行動(軍事介入)ではなく、間接的に対象地域を不安定にし、対象地域を制圧(臨時政府によるサンディニスタ政府の代替)する方法。
直接的な軍事介入をするのではなく、長期的な展望に立って、作戦行動を有機的に関連させる戦略である。したがって、この作戦の遂行には、個々の戦術の、(1)時間的余裕、(2)長期的展望、(3)多極的でかつ有機的連関が不可欠とされる。この要素が欠けると、戦略は遂行側の時間的焦燥感、目的の忘却、戦術の自己目的化、などによる意欲喪失が問題化され、戦略は失敗する。(狐崎知己氏の教示にもとづく)
加藤朗によると、1985年のレーガン政権のアフガニスタン反政府ゲリラへの援助以降、低強度紛争(LIC)は、内乱鎮圧のタイプから内乱煽動へとその戦術が変化したという。というのは、旧ソ連が植民地からの独立をもとめて民族解放闘争(national liberation)を支援してきたが、長期的な冷戦構造の結果、今度は米国がソ連の援助を受けて成立した政府に対する反政府抗争を支援するようなったという。
「この内乱鎮圧から内乱煽動への戦術転換によって、援助の性格がきわめてイデオロギー的、あるいは軍事的色彩の濃いものになり、しかも秘密工作による援助が多くなった。その端的な例が中米と中東を結ぶイラン・コントラ事件である。」(加藤朗『現代戦争論』中公新書,1993:109)
※ケネディ時代の対ゲリラ戦の効用計算については「マクナマラの戦略」に関する項を参照のこと。
※政治思想的背景には、松岡完「反乱鎮圧戦略」(第二章)『ケネディの戦争』、東京:朝日新聞社、1999年が大変訳にたつ。
【参照語】
対反乱 counterinsurgency
「転覆的反乱を鎮圧するために、[政府によってとられる]軍事的、準軍事的、政治的、経済的、心理的、および市民的活動」(p.88)
対ゲリラ戦 counterguerrilla warfare
「ゲリラに対し、軍隊、準軍事部隊または[政府の]非軍事的機関よって行われる作戦と活動」(p.88)
出典:
『最新軍事用語辞典』三修社、1983(Department of Difence Dictionary of Military and Associated Terms)
文献
松岡完 1999 『ケネディの戦争』、東京:朝日新聞社。
バー、ウイリアム 1999 『キッシンジャー「最高機密」会話録』鈴木主税・浅岡政子 訳、東京:毎日新聞社。
■ 医療人類学辞典(池田光穂)
- ゆきゆきてベトコン!
- 愛の新世界
- ぢごくの黙示録
- 戦争表象論
- 科学としての戦争神学
- 帝国と医療
- 戦争神学
毛沢東の遊撃戦論
抗日遊撃戦争の戦略問題(『毛沢東』選集第二巻、三一書房、1957)