感情労働
emotional labour
感情労働とは、相手(=顧客)に特定の精神状態を創り出すために、自分の感情を誘発したり、逆に抑圧したりすることを職務にする、精神と感情の協調作業を基調とする労働である。
この用語は、社会学者A・R・ホッシールドによる。感情労働の典型として表されたのは、航空機における白人女性の客室乗務員であるが、現在では、医療者をはじめ、ファストフードの販売担当者や企業のクレーム処理担当者など、さまざまな生活の局面で感情労働に従事する人たちを観察することができる。あるいは、交渉相手の個人情報が入手できなかったり、あるいはその必要がない、私たちの日常生活の中では、感情労働は、誰しもが身につけている「作法」の一部と言うこともできる。
理論用語としての感情労働が意味するものは、労働力商品として感情を表出したり制御することが労働者に要求されていたり、日常生活の「普通」の感情表出が阻害(疎外でもある)されているということである。
したがって、この用語の理論的難点は、感情の商品化の測定が果たして可能であるのか、あるいは、感情労働に対するストレス負荷の個人的差異を、労働にともなう疎外と考えるかという、感情労働の負荷の測定に関わる問題である。現代社会が抱える質的な問題として、感情労働を議論する際には何の問題もないだろうが、感情という曖昧で、歴史的社会的文化的に相対的な概念を、量的に評価することは難しいだろう
【文献】
ホックシールド、A.R.2000.『管理される心:感情が商品になる時』石川准・室伏亜希訳、世界思想社(The managed heart : commercialization of human feeling / Arlie Russell Hochschild. -- University of California Press, 1983).
池田光穂「感情労働」(pdf)