陰謀理論
Conspiracy Theory
かいせつ 池田光穂
陰謀理論とは、さまざまな社会現象の背景に、それを仕組んだ個人や集団の「陰謀」があると、根拠もなく思いこむ思考方法のこと。
陰謀は、社会集団を営む人間がしばしば、自分たちの利益を守ったり進展しようとしたりするときに、秘密裏にかつ非合法的にそれをやりとげようとする現象で、それ自体はとりたて珍しいものではない。
しかし陰謀集団の存在は、社会的不正義を蔓延させ社会の崩壊につながるために、しばしばそのようなことがおこらないように近代社会では、その行為そのものを非難したり、また生起しないような道徳的規準もうけている。
しかしながら、ここでいう陰謀理論とは、社会の中の異質分子を非難する際に、その個人ないしは集団を〈陰謀をもった悪意ある存在〉と根拠なく位置づける便法のことを指している。
陰謀理論は、人間のもつステレオタイプや偏見の一例とみることができる。K・ポパーは陰謀理論による説明が、迷信の世俗化したものであり、結果として起こったことと陰謀集団の意図という説明の不整合から、この理論を論破できると主張する。
しかし、非合理的なこと、あるいは事前には想像もできなかったことなどに、陰謀理論がしばしば登場することから、ポパー流の論駁が、実際の歴史的社会的現実にどれほどの判断力を行使できるのかは不明確である。
魔女裁判、妖術、流言飛語と、それにもとづく社会の変動は、事後的にはさまざまな理由をつけて解釈することができるが、解釈しにくい奇妙な出来事も、我々の現実には数多く存在する。
陰謀理論は、ポスト・ホック(事後的)には容易に論破できるが――なぜならその多くは誇大妄想的で根拠がないから、事後的に証拠が不在ということで判断することができる――その渦中において抑止させることがきわめて難しいからである、
もちろん陰謀理論の再燃を防ぐためには、ポパー流の論理的判断を鍛える教育と、過去の陰謀理論の無根拠性についての歴史的検討の継続が不可欠である。
文献
ポパー、カール 1980 「社会学の自律」(第14章)『開かれた社会とその敵 第二部予言の大潮』未来社