アドボカシー
advocacy
アドボカシーが保健と福祉の領域で盛んに言われるようになったのは1990年代以降のことである。
福祉領域においてアドボカシー概念は、それに先行するノーマライゼーションの思潮と深く関わる。ノーマライゼーションの発想は、障害者の社会参画を、健常者とまったく区別のない社会への復帰過程としてとらえる。障害者をノーマルなものとして受け入れるために変化しなければならないのは社会の側であり、ノーマルなものとして再登場するための前提をつくりあげると理解する。
他方で、ノーマルな障害者の参画過程には、障害者自身が独立した主体として登場し、自己の権利を主張しなければならない。ところが、参画者を受け入れる側に障害者の権利主張を主体として受け入れる社会的制度が十分に整備されていないために、それに代わって権利主張をおこなう弁護者が必要になる。アドボカシーは、彼/彼女らに代わって権利主張を代弁し(represent)また弁護しなければならない。なぜなら障害者は自己の権利主張を十分におこなえる社会制度が十全に整備されていないからである[あるいはその社会状況をそのように行為者が定義している]。
またアドボカシーは、理念や制度の成立よりも、個々人の主体としての権利主張とそれらが充足されているかどうかを個々の実践者のレベルからとらえようとする。そのためにアドボカシーの議論は、他者を表象・代弁する権利の可能性や手続きの正当性をめぐって、将来、深刻な論争がおこる可能性がある。
池田光穂「「医療と文化」再考:グアテマラにおける医療人類学の再想像」『思想』第908号(2000年第2号),pp.199-218,岩波書店、2000年
◆ 医療人類学辞典
Copyright 2000, Mitsuho Ikeda
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