医療倫理学
Medical Ethics
医療倫理学(いりょう・りんりがく)とは、保健ケアとくに医療に関する倫理的事象をあつかう研究分野である。医療のむならず、生物学、政治学、社会学、文化人類学、法学、哲学などのさまざまな分野と関連性をもつ、学際的な研究分野である。生命倫理学(bioethics, バイオエシックス)と医療倫理学はテーマを共有することが多いので、「基本的に同じ」と判断しても間違いではない。
私は、別項で生命倫理学を次のように定義しました。「人間を対象にした治療および実験に関する倫理・道徳、ひいてはそれらに関する諸研究」(→出典「生命倫理学と医療人類学」)
ただし医療倫理学が、生命倫理学(bioethics, バイオエシックス)と対比されて論じられる場合、前者を専門的な医療専門家が取り扱う倫理、後者がより包括的で一般的な問題を取り扱うかのような取り上げられかたをするが、これには留意が必要である。なぜなら、医療の専門家――とくに生物医学や臨床医学――が、上記の隣接科学から接近する倫理学的アプローチをしばしば生命倫理学として、医療倫理学を狭い意味での臨床医学の支配的言説で領域を確定し、隣接領域の専門家の排除しようとする傾向が[その多くが例外だが]全くないとは言えない。
医療倫理学が取り扱っている事象は以下のようなものがある。
1.生命の始まりや出産にかかわる健康(リプロダクティブ・ヘルス)の問題
着床前の診断、出生前の診断、人工授精、性別生み分け、人工妊娠中絶、減数手術、
2.遺伝子診断
遺伝カウンセリング、DNA鑑定、心理学的・法学的・倫理的問題
3.脳死と臓器移植
臓器の収穫と分配、テクノロジーと倫理、臓器の商品化、バイオポリティクス
4.末期医療
終末期ケア、安楽死(尊厳死)、認知症(→老年学)
5.人体を対象とする臨床試験
ヒト胚研究、インフォームド・コンセント(情報を与えられた上での合意/非合意)
6.基礎研究
動物実験、バイオハザード、遺伝子汚染(遺伝子組替生物の自然拡散の問題)