代理出産
surrogacy
翻訳
解説:池田光穂
【定義】
Surrogacy[=代理出産] is a method of assisted reproduction whereby a woman agrees to become pregnant for the purpose of gestating and giving birth to a child for others to raise. She may be the child's genetic mother (the more traditional form of surrogacy), or she may be implanted with an unrelated embryo. In some cases surrogacy is the only available option for parents who wish to have a child that is biologically related to them.(source: wikipedia, "surrogacy," except Japanese translation)
【体外受精 in vitro fertilization, IVF】
精子と卵子を体外で人工的に受精させることをいう.すでに各種の哺乳動物(マウス,ラット,スナネズミ,ハムスター,イヌ,ヤギ,ヒツジ,ウシ,ブタ,サルなど)において成功しており,さらに受精卵を一定期間体外で発育させた後,再び子宮内に戻して着床させ(→胚移植 embryo transfer;ET),成熟仔を得ることに成功している.これを体外受精・胚移植法(IVF‐ET)と一括して呼ぶ.ヒトにおいても,1978年,イギリスのEdwardsとSteptoeが世界初の体外受精児を誕生させ不妊治療の画期的方法として注目を浴びた.現在イギリス,アメリカ,オーストラリアを中心に,世界各地で試みられ,わが国でも1983年第1児が出生した.当初は卵管性不妊の治療法として開発されたが,その後適応が精子異常症,免疫性不妊,原因不明不妊,子宮内膜症へと拡大されてきている.排卵誘発剤を用いて多数の卵胞を発育させ,腹腔鏡または超音波断層法を用いて経腹壁的,経膀胱的あるいは経腟的に採卵し,体外で媒精後,通常2日後に2〜4細胞期となった胚を子宮頚管より子宮腔内へ胚移植(ET)するのが一般的な方法である.奇形発生率は自然の妊娠と変わらないが妊娠成功率が10〜20%と低いので今後の技術改良が望まれている.婚姻した夫婦以外に本法を適用すると,倫理,法律ならびに宗教上のいろいろの社会問題が生ずるので,生命倫理的観点からの規制のもとに実施されている.(出典:南山堂医学辞典第18版)
【用語集】
-Surrogacy:代理出産
-surrogate mother:代理母。子供の産みの親で遺伝的繋がりあり。
-host mother:ホストマザー、貸し/借り腹。産みの親であるが、遺伝的繋がりなし。
-contract conception:契約妊娠
-preconception arrangement:妊娠前の養子協定
-AIH, 配偶者間人工授精:夫の精子を使用する人工授精。
-AID, 非配偶者間人工授精:精子提供者の精子を使って行う人工授精。
-lVF-ET, 体外受精=胚移植: 卵子と精子を体外に取り出して受精させ、受精卵(胚)を子宮腔に移植する方法。採卵数を増やす目的で、通常は排卵誘発が行われる。
-lVF-IVM, 体外受精 体外培養:GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン, Gonadotropin releasing hormone)アナログやhMG(更年期婦人尿由来の性腺刺激ホルモン)製剤を使用せず、自然周期の7日〜10日目で直径7〜10mmの卵胞を吸引し、未熟な卵を体外で受精可能なまでに培養していく方法。
-ART, Assisted Reproductive Technologies(生殖補助技術)――厚労省は「生殖補助医療」と翻訳:体外受精、顕微授精などの先端生殖補助医療技術。
-ICSI, intracellular sperm injection, 顕微授精:卵子と精子を体外に取り出して受精させ、受精卵(胚)を子宮腔に移植する体外受精の一種なので、採卵数を増やす目的で、通常は排卵誘発が行われる。顕微鏡下で人為的に、精子を直接卵子の中に一個注入して受精させる。
-「特定不妊治療助成」:体外受精−胚移植や顕微受精を行うとき各都県より一定の条件の対象者に補助金が助成される制度 -生物学的父親(genitor):ジェニター
-社会的父親(pater):ペーター、ないしはペイター
-生物学的母親(genitrix):ジェニトリックス
-社会的母親(mater):メーター、ないしはメイター
【日本における代理母論争】
代理母出産については、生殖補助医療の進展を受けて日本産科婦人科学会が1983年10月に決定した会告により、自主規制が行われているため、国内では原則として実施されていない。しかし、代理母出産をそのものを規制する法制度は現在まで未整備となっている。/この制度の不備を突く形で、諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘院長が、国内初の代理母出産を実施し、2001年5月にこれを公表した。また、タレントの向井亜紀が国内の自主規制を避ける形で海外での代理母出産を依頼することを大々的に公表し、これを実行した。そして、これらの事件により、代理母出産は、その是非も含めて社会的な注目を集めることとなった。/このような状況を受け、厚生労働省及び日本産科婦人科学会は対応策の検討に乗り出したが、その結論は代理母出産を認めないというものであった(厚生労働省の審議会(厚生科学審議会生殖補助医療部会)が2003年にとりまとめた『精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書』及び日本産科婦人科学会の会告)。これは、主に妊娠・出産に対するリスクの問題を軽視していること等をその理由としている。/しかしながら、厚生労働省は上記報告書の法制化を公表したにもかかわらずこれを実現できず、また、日本産科婦人科学会の会告は同会の単なる見解に過ぎず強制力を持たないため、代理母出産の実施に歯止めをかけることはできなかった。そうした中、2006年には、向井亜紀と高田延彦夫妻が2003年に代理母出産によって得た子供を養子ではなく戸籍上の実子として扱うよう求めたものの東京都品川区は出生届を受理しなかったため、夫妻側は処分取り消しを東京家裁に申し立てた(2005年11月に却下され即時抗告)事案について、9月に東京高裁が、1審の決定を取り消し、品川区に出生届を受理するように命じた決定を下した(但し、2007年3月23日の最高裁決定により、この東京高裁決定は破棄されている)事例や、10月に根津八紘医師が特殊な代理母出産(年老いた母親に女性ホルモンを投与し娘のための代理母にした、というケース)を実施したことを公表した事例が発生し、それまでも事例の積み重ねにより徐々に認知度を高めていた代理母出産が、再度社会的な注目を集めることとなった。/なお、代理母出産に係る事態を収拾できなくなった厚生労働省及び法務省は、2006年11月30日、日本学術会議に代理母出産の是非についての審議を行うよう依頼を行い、2007年2月現在、同会議が審議を継続しているところである。しかし、その間にも、日本弁護士連合会が代理母出産を禁止すべきという2000年の提言の補充提言を発表したり、根津八紘医師が代理母出産の法制化に向けた私案を公表するなど、事態は混迷の様相を深めている。(出典:ウィキペディア[日本語]http://ja.wikipedia.org/wiki/ の「代理母」の項目――この項目は記述の中立性について議論されている)
【審議会以外では報道されにくい倫理上の諸問題】
(1)子供の福祉における、「出自を知る権利」の保証:精子提供者の匿名性が、子供が成人してから「親探し」をするケースが増え「知る権利」を保証しようとする。スウェーデンでは1984年「人工授精法」で採用。日本の法制化では15歳以上の子供開示請求は認めるが、親の告知義務規定はないために、権利が行使できない可能性が浮上。
(2)体外受精では、一般に余剰胚が産出される。また排卵誘発剤の使用は多胎妊娠の原因となり、減数[減胎]手術は避けられない(にも関わらず減数手術は母体保護法で禁止されている)。
(3)代理出産そのもののが禁止されている国(ドイツ、フランス)や商業利用の禁止(英国)がある一方で、契約に商業化されている国(アメリカ)がある。他方、商業化されていても、契約行為の妥当性(代理母にさまざまな契約上の制約が課せられる)。契約の破棄という事後に問題がおこりうることも否定できない(出産後に子供の引き渡しを拒否した1984年「ベビーM事件」)。
(4)親子の権利義務を定める民法などは、生殖技術の急速な発達と普及に対応しにくくなっている。不妊治療が商業的に成功するのは、まず不妊治療の関連産業が「儲かる」ことによる。商業化の多くは、その産業に与らない人には何のメリットももたらさないので、生殖補助技術(ART)に関する倫理的関心や権利義務についての世論を引き起こしにくい(あるいは歪んだり、一方的なかたちで報道されたりする)。
【ベビーM事件】
1985年二月、メアリーが、スターン夫妻と、ニューヨーク州ノエル・キーンの不妊センターを介して契約を結ぶ。契約内容は以下の通り。妊娠したら薬をいっさい飲んではいけない。羊水診断を受け、胎児に障害があれば中絶すること、その場合は報酬はなし。流産・死産には千ドル、健康な子が生まれたら1万ドルを受け取る。出産後、ただちに養子契約にサインし、親権を放棄する。2年以内に妊娠しなかったら、報酬はなし。契約後、すぐ依頼者の夫の精子と代理母の卵子を用いた人工授精が始まった。全部で九回人工授精を受けた結果、妊娠し、1986年3月に女子を出産(精子が夫のもの、卵子及び子宮は代理母)した。しかし、出産後、報酬の受取りと子どもの引き渡しを拒否した。そのため、依頼者夫婦が子どもの引き渡しを訴え裁判になった。1987年3月ニュージャージー州上級裁判所判決は、契約を合法として代理母の親権を認めず。1982年2月州最高裁判決は、有償の代理母契約を無効として親権を回復したが、養育は依頼者の夫(スターン)がおこなった。
教科書:
池田光穂・奥野克巳編『医療人類学のレッスン』学陽書房、2007年。レッスン7(リプロダクションの全部)不妊の夫婦が子ともを持つ方法は一つではない:里子-養子、ヌアー社会(教科書p.162)。生殖=親子関係ではない:アフリカ諸社会、バンクス社会(教科書p.162)
【問題】
映像資料を視聴したあと、次の3つの課題について答えなさい。
(1)代理出産を認めるべきだと考える人たちの意見をなるべく多く集約し、箇条書きにしなさい。
(2)代理出産を認めるべきでないと考える人たちは、どのような理由を述べて反論していただろうか。その意見をなるべく多く集約し、それぞれ箇条書きにしなさい。
(3)上の2つの意見の集約をした箇条書きの情報について全員が共有した後で、各グループで[現時点でメンバー間の意思統一として]認める/認めないというどちらかの意思決定をおこなってください。条件つきで認める/認めないという判断をされる場合は、それらの条件もまた列挙してください。認める(認めない)場合は、上記で箇条書きにした個々の反対意見にどのように反論するのか意見をまとめてください。
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