PDCA
ピーディーシーエー、PDCA
解説:池田光穂
PDCA=品質管理の経営学におけるエドワード・デミングとウォルター・シュハートの提唱したマネジメントサイ クルのモデル。PDCAサイクルともいう。PDCAとは、計画(Plan)・実行(Do)・点検(Check)・改善の実践(Act)の頭文字を順に並べたアクロニム のこと。
この4つの項目にしたがって具体的な行動を記述すると実践してゆく。つまり、計画(Plan)をし、それを実行(Do)し、その結果を点検(Check)し、改善の実践(Act)をおこなうことで、次の計画立案に繋げてゆくという発想である。この手法により、生産物の品質をあげてゆくということが、当初のデミングとシュハートのアイディアであったが、この手法はサービス産業を含むあらゆるビジネスの現場で応用可能なフィードバックループモデルにほかならないことが用意に分かる。
例えば、多文化共生に関する教育を半年後に控えている教員のチームは、PDCAサイクルに従うと次のように動くはずである(もちろん実際のチームはさまざまに動くのでこれは、解説者が思いついた一例であり、これがすべてではない)。
1.計画
5W1Hで計画を練る。誰が(教育のプロジェクトチーム)、何を(大学院生に対して多文化共生の授業を)、いつ(半年後から4か月かけて)、どこで(本学のXキャンパスのY教室で)、どうして(大学院の共通カリキュラムとして本学の大学院生のすべてが身につけておかねばならない「多文化共生」のスピリットを陶冶するために)、そして、どのように(一人の教員の独断場とするのではなく、対話型の授業を取り入れ、受講生は事態を複眼的に考えられるようにする)
2.実行
ここではカリキュラムを作成することが実行である。多文化共生の15コマの授業計画を立てる。それぞれの授業に、どのような教員を割り当てすればよいのか、その教員は全体の理念にもとづいてどのような授業を実行するだろうか、授業で理解したことを学生がどのように発展させてゆけばよいのかなども、イメージしてカリキュラム案を作成する。
授業のシラバスの事前アナウンスをどうするのか、受講者が多い時/少ない時どう授業を運営するのか、授業の予習復習をどのように提示するのか、途中で情熱ややる気が減退する学生にはどうするのか、やる気がありすぎて授業ではものたりない学生にはどのような発展を促せばよいのかなども考慮のうちに入る。ただし、この時点で現実原則に合わせる必要はなく、夢は大いに語るべし。
3.点検
複数の教員が考えたカリキュラムをもちより、相互に批判する。計画で立てた具体的項目にあっているのかを点検する。
講義中心の座学だけではなく、実習やOJT(実際に行われている現場での訓練)を取り込む必要があるか、もしそれらを実行するのであれば、その評価はどうするのか、実習にともなうリスクはなにかなど、授業の実際の運営に際して生起することなども考慮に入れはじめるのも、この時期である。
4.改善の実践
点検にもとづいて、それぞれのカリキュラムの内容についてシュミレーションをおこなう。想定される受講生のレベルは授業にきちんとついていけるか、学生が不明瞭なことはどのような学習の資源(教員、教科書、配布されるハンドアウト、インターネットリソース、辞書辞典類など)によりリカバーできるのかを複数の教員で多角的に検討する。
場合によっては、その授業を教員同士であるいは、実際にモニターになってくれる学生を徴募して試験的にセミナーをおこなってみる。その際には、実際にビデオをとって、時間配分、内容の粗密、なども事後的にチェックするようにする。
このようなことを通してシラバス案が完成し、校閲を得て次年度のシラバス集に収載される。
PDCAのサイクルは、時系列にしたがって次のサイクルを実践することに意味がある。前のサイクルの経験をもとに、次のサイクルをまわし、改善をルーティン化するだけでなく、サイクルに変化があることから品質改善のフィードバックをつねに持ち続けることができるという利点がある。
1.計画(第2サイクル)
授業が正式科目として承認されてから、実際の授業開始までに、具体的な準備、必要な機材、プレゼンスライドやハンドアウトの具体的作成などのチェックシートをつくる。
2.実行(第2サイクル)
実際に授業をおこなうことである。
3.点検(第2サイクル)
教員同士の相互批判、受講生からのリアクションペーパーからのフィードバックを集約したり、個々のクレームを処理し、それについて学習する。
4.改善の実践(第2サイクル)
その後の授業に改善点を盛り込んでいったり、授業の実施教員の間で反省会を実施し、具体的にどのようにすれば問題を解決することができるのか(短期・中期・長期)考える。
このようにPDCAのサイクルは、現場で応用可能な簡便な方法でありながら、なかなか奥が深いテクニックである。奥が深いというのは、そのプログラムに参加する人たちのプログラムに対する意識化(パウロ・フレイレの言葉)を可能にするからである。
デミングらの思想は、日本では西堀栄三郎(1903-1989)が戦後から精力的に導入したことで、日本型のカイゼン(KAIZEN)と舶来のPDCAに対する信仰が新 しいミレニアムになっても衰えない。むしろ、現在では政府系エージェントや政府の機関でもPDCAによる業務改善 が叫ばれる始末である。