動物実験
animal experiment, experimental trial by using animals insted human object
解説:池田光穂
動物実験(どうぶつじっけん)とは、科学的成果を得るための動物をつかったあらゆるタイプの生物実験であり、虐待(abuse)でないものをいう。この場合の動物とは、一個の生物としての「全体性」をもっているものであり、人間を含む動物から摘出した、細胞、組織、臓器、あるいは身体の一部のことを想定してない。動物実験に使われる動物は、集合的に実験動物(experimental animals)と総称される。
動物実験においてもっとも重要なものは、臨床医学における人間を被験者とする前におこなう試験であり、動物実験が不可欠だと主張するほとんどの生物医学者は、人間の患者に対する実用的応用には欠かせないと主張する。つまり、新しい治療法が今後も登場する限り、動物実験を廃絶することは不可能であるという。
他方、アニマルライツ(動物の諸権利)の擁護を主張する人たちは、動物実験は残虐である、科学的有用性は動物実験を行わぬとも可能、動物実験の様子が公開されていない、という主張をもって、動物実験の制限・一時的中止・廃絶などを要求している。
そのため、動物実験をおこなう生物医学者は、実験の残虐性の軽減(例:無痛や非侵襲)、動物実験の不可避性(in vitro と in vivo の根本的違い)についての啓蒙活動、および、情報公開と動物実験の倫理的判断に対する施設内委員会(IRB)による審査など、アニマルライツ主義者の理解と誤解の軽減に務めているというが現状である。
他方で、動物実験の洗練化精緻化を前提(=目的)とした実験動物の開発(例:ノックアウトマウス)などの開発と、それを使った科学的成果の産出は、今後ますます進んでいく模様である。また、アニマルライツ派の中には、生物医学側の対応に対して不満をもち、また満たされない「動物解放」の情念(passion for "animal liberation")ゆえに(他の政治的原理主義運動と類似して)過激化、武装化する傾向があるものがあり、両者の溝は、すぐに埋まる様子はない。
動物実験への反発は、動物と人間の種的相違性よりも類似性の認識があるからだという単純な解釈も可能であるが、人間と動物を峻別してきた伝統の強い英国においてアニマルライツが生まれ(ただし奴隷廃止や動物虐待の廃止を法で禁止するのも英国の近代初期であることと関係があるかもしれない)、動物と人間の間の類縁関係や擬人化にはそれほどの抵抗を覚えない日本人が、(少なくとも2009年の暮れにおいては)それほどアニマルリベレーションに苛烈にならないのかということから、動物と人間の関係についてと、社会運動としてのアニマルライツの情熱の高低の間に単純な関係を見ても、それは論証に耐えられないだろう。
文献
マカージー、M.,「動物実験の倫理性」(関裕子訳)『日経サイエンス』1997年11月号、Pp.118-127、1997年
Cyranoski, David., 2000. Row over fate endangered monkeys. Nature 408(6810):280.
池田光穂「動物実験倫理講義録(=黒澤先生講義録)」
文部科学省(文書の写)「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」
社団法人日本実験動物協会 (文書の写)「実験動物の安楽死処分に関する指針」
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