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カーゴ・カルト・サイエンス

Cargo Cult Science, by Richard Feynman, 1985

池田光穂

科学のふりをした非科学、似非(えせ)科学、偽科学 のこと。科学のふりとは、「研究の一応の法則と形式に完全にしたがってはいるが……何か一番大切な本質がぽかっとぬけているもの」(ファインマン[大貫 訳]2000:294)のことをさす。"So I call these things cargo cult science, because the follow all the apparent precepts and forms of scientific investigation, but they're missing something essential " (Feyman 1985:340).

異名や異表記がたくさんあり、カーゴカルトサイエン ス、カーゴカルト科学、積み荷科学などとも呼ばれる。Cargo Cult は、19世紀後半から20世紀中ごろまでに、メラネシアを中心として、西洋の植民地主義により、先住民・原住民に大量の物量や、彼らの技術にはない珍奇で 奇跡的な技術の導入により、彼らの間で認知的混乱がおこり、その時に同時におきた社会不安に乗じておこった「千年王国運動(millennium movement)」と呼ばれる宗教的熱狂運動のこと。カーゴとは、船や飛行機の積み荷のことで、彼らは、自分たちが物質的に西洋人に対して貧困である ――そのようなイデオロギーは西洋人が武力と物量で持ち込んだのだが――ことの原因を考え、それは(キリストの救世主に似た)救済主が豊かな物量をもたら す至福の時が、いずれ近々おこるだろうと信じて、手作りの飛行場――もちろん実用的価値はない――や、木製の飛行機の像を造って、その積み荷の招来を期待 した。もちろん、積み荷などやっては来ずに、各地で熱狂的な運動は急速に醒めることになったが、広域的な地域の局所的な部分で、この間(7-80年間)散 発的に起こりつづけた。

このようなことは、現場に居合わせた宣教師や人類学 者によって、西洋社会に些かか面白おかしく伝わり、「未開人の無知蒙昧」のさまとしてステレオタイプとして伝わった。リチャード・ファインマン(Richard Feynman, 1918-1988)は、このステレオタイプに基づいて、自分の身近にある似非科学の実態――彼は、そのひとつにリフレクソロジーを挙げている――をカー ゴカルトサイエンスとして『ご冗談でしょう、ファインマンさん』(1985)の中であげている。

『ご冗談でしょう、ファインマンさん』愛読者ならよ く知られた事実だが、ファインマンのこの著作の最終章で、彼は健全な科学的精神の称揚をおこなっている。しかし、同書には、いたずら好きの天才であるリ チャードが、さまざまな科学上のレトリックや先行する知的知識や方法を「(修辞的)加工」して、自分の知的遍歴を開陳しているので、彼の科学者の人生物語 という寓意そのものが、その読者にカーゴカルト化している感はいなめない。

カーゴカルトそのものはメラネシアで終焉したが、よ くよく考えてみれば、「脳科学ブーム」や「天才の育て方」、はては「FXで驚異的に設ける金融工学の精髄」など宣伝文句で表現される多くのものをみても、 我々の身の回りにもカーゴカルトサイエンス(積み荷科学)が蔓延しているので、墓場のファインマン先生には申し訳ないが、メラネシアの先住民・原住民に は、それ以外のすべての住民を代表して謝罪したいと同時に、カーゴカルトサイエンスは、人類の普遍的な「知的態度」ないしは「宗教的態度」のひとつである ことを申し添えておきたい。

文献

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