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古典的なリベラルアーツ教育と、現代大学教育におけるリベラルアーツの共通点と相違点

Between classical libral arts education and modern universtiy libral arts education


Hugh of Saint Victor, 1096-1141

池田光穂

ここでは「古典的なリベラルアーツ教育」と「現代大 学教育におけるリベラルアーツ」の共通点と相違点を明らかにする。だが、そのまえに、この2つの「リベラルアーツ」について、個々に説明しておいておかね ばならない。

【古典的なリベラルアーツ教育】

西洋中世の大学制度におけるリベラルアーツ (artes liberales)は、Martianus Minneus Felix Capella(5世紀頃)に自由七科に由来する。リベラルアーツの語源とは、人間を自由にする技芸という意味で、文法・修辞・論理の3つの学(three arts, trivium)と、算術・幾何・天文・音楽の4つの科(four subjects, quadrivium)からなる。当初は人間を陶冶するための7つの学芸の領域とされていたが、後に神学・法律・医学を学ぶ専門教育(=学部)が確立した時に、それらを学ぶ前に履 修すべきものとして、教養というものが再定義されたことに由来する。(→「リベラル アーツ」ウィキ日語)

このような「教養」教育をおこなうのが、古典的な意 味でのリベラルアーツ教育なのだが、その教育担当セクションにあたるのが、今日で言う所の哲学部や学芸学部であった。中世からの歴史を継ぐ哲学部一例とし てオックスフォード大学哲学部(University of Oxford, Faculty of Philosophy: -> site )が、その歴史は12世紀にまで遡れて古い(History of Philosophy at Oxford)。

後発近代国家として近代的な大学としてベルリン大学 を創設した、プロシアのヴィルヘルム・フォンフンボルトによる「フンボルト・システム」(フンボルト大学)では、教室講座制の研究中心の教室運営で徒弟制 に近い教育がおこなわれてきた。教養は、それまでの大学までの教育で十分に陶冶されて、それらの上に、大学の教育カリキュラムもまた、そのような教養の上 に統合されたものであるとした。(→フンボルト・モデル

【現代大学教育におけるリベラルアーツ】

アメリカの北東海岸にあるアイビー・リーグ(Ivy League)と呼ばれる名門私立大学(Brown, Columbia, Cornell, Dartmouth College, Harvard, Princeton, Pennsylvania, Yale: ダートマス以外は総合大学を名乗っている)などは、もともとは、入植者の子弟に高等教育をさずけるリベラルアーツ・カレッジ(=教養教育を旨とする単科大学)であった。1960 年以降、それらの大学は大学院を中心とする研究大学へと変貌しリベラルアーツのセクションは残しながらも、リベラルアーツ教育の中心は州立大学や私立のカ レッジなどに移っていく。アメリカの教育は国公立は少数派で、多くは私立大学ないしは公的支援を受けている私立大学が中心である。また卒業生から資金をあつめ、それを成績優秀者に奨学金 という形で還流させるような財政機構を長年の歴史のなかで身に付けるようになった。伝統的には少人数教育で全寮制である。またリベラルアーツ・カレッジ は、大学院をもたず人文・社会・自然科学をバランスよく履修し、学士課程教育が 中心になる。

授業の内容は、自由七科——正確には上掲のように三 学四科であるが——の伝統を継いだものがあるが、それ以外に近代で発達した、語学(外国語学)、各種の自然科学や経済学などの他に、専門教育とされてきた 神学(宗教学を含む)、法律学、医療保健学なども「教養」科目の中に入ることになった。一言で言えば、「教養」教育科目の内容が増えたのである。

日本では、1948-49年の新制大学の設置以降、 そのような既成の学問の中心で「教養」教育を運営してきた。そこでは、「一般教育科 目、外国語科目、保健体育科目、及び専門科目」という大学科目の区分があり、そのなかで、「一般教育科目(人文・社会・自然)、外国語科 目、保健体育科目」が、ここで言う「教養」科目に相当していた。一般教育科目には、人文・社会・自然という三分類がなされていたこと、外国語と保健体育 も、教養科目を構成するものになっていたことが重要である。しかし、1991年におこなわれた文部省・大学審議会(1987--2000)による「大学設 置基準の大綱化(Deregulation of University Act)」が謳われて、旧い大学設置基準で「一般教育科目、外国語科目、保健体育科目、及び専門科目」と第19条で分けられていた科目群の規定を廃止し て、新しい基準ではその同じ第19条が「大学は、当該大学、学部及び学科又は課程等の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を開設し、体系的に教育 課程を編成するものとする……教育課程の編成に当たっては、大学は、学部等の専攻に係る専門の学芸を教授するとともに、幅広く深い教養及び総合的な判断力 を培い、豊かな人間性を涵養するように適切に配慮されなければならない」とされた。この変更の含意は、「学部等の専攻に係る専門の学芸を教授するととも に、幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養する」ためには、各大学は、自由に「教養科目」を自由裁量で構成してもよいということに なった。

【共通点と相違点】

共通 点:

相違点:

古典的リベラルアーツ 現代的リベラルアーツ
  • 自由七科(文法・修辞・論理・算術・幾何・天文・音楽)
  • 人間を「自由」にすることを標榜しながら、科目編制は万古不易
  • ラテン語という標準語をもつ(それ以外の学術外国語はない)
  • 保健体育科目はない
  • 科目編制が固定されていた、学ぶべき内容がある
  • 受動的学習(教授の発話をノートする)
  • 人文・社会・自然の下位の3分野からなる一般教育科目
  • 人間を「自由」にするために、科目編制はフレキシブルでよい
  • 外国語科目がある
  • 保健体育科目がある
  • 現在では、それらの科目の横断する学際科目を設置してよい
  • 受動的に加えて能動的学習が推奨される

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【図像説明】