
民俗学
folklore, みんぞくがく
解説:池田光穂
民俗学(folklore)とは、英語のフォークロアの翻訳に由来する学術用語であり、古くから伝えられてきた(これを伝承=でんしょう、と呼ぶ)人びとの語りを収集整理する記述学問体系ののことである。
民俗学のフォークロアと、人々の語り(folk-lore)としての民話(フォークロア)は同音であり、実質的に同義語でもある。
つまり民俗学は、近代国民国家(modern nation state)形成時期に、国の正史を編纂する歴史学(history, historiography)に対して、それと補完ないしは対抗しつつ、国をになう国民(nation)としての民衆=人びと(folk)の口頭つまり非文字による歴史的記述や、神話(myth)や民話(folklore)などの編纂の必要性が、国家形成にかかわる知識人ナショナリストなどから出てきたという経緯がある。[→民族]
日本では、国民を形成するフォークを民族という用語で使った例もあり、また民俗学と民族学は、ともにみんぞくがく、という発音がおなじために、さまざまな混乱が現在までも続いているし、またその副産物として、民俗学と民族学は実質的に同義語として機能していることもある。
さらに現在では、歴史学の領域のなかから文字化されていない人びとの語りを、歴史的に文脈化してゆく口頭伝承ないしは口頭史(oral history)という領域も形成されて、状況は複雑である――だからといってその全体像把握は困難というわけではなく、むしろ研究が多角化してさまざまな研究の可能性を切り開いた。
なお、現在の用法による民俗学と文化人類学の違いは次のように理解すればよいだろう。日本での民俗学はしばしばフォークロアとよび、文化人類学の同義語である民族学の英語読みであるエスノロジーと、呼称によって区別している。そして、前者のフォークロアとは実質的に日本民俗学と呼ばれる学問領域であり、主に、日本ないしはアジアをフィールドにするエスノグラフィー(民族の生業にを中心とした生活の記述)をもとに、さまざまな文化的現象について考察している。他方、文化人類学の多くの研究者たちは、自文化以外の人間集団を研究対象にするエスノグラフィー(民族の生業にを中心とした生活の記述)をもとに、さまざまな文化的現象について考察しているとみてよいだろう。
日本における民俗学者は文化人類学の著述をよく読んでおり、その逆も言える。両者の間には友好的な協力関係もあり、ライバル関係になるのは、むしろ学説上の特定の論争をめぐってである。
◎ 民俗学(日本民俗学)リーディングス
1. 柳田国男『民間伝承論』、共立社*、1934年
*その後、筑摩書房、第三書館等より文 庫本など復刻版が多数あり
2. 柳田国男『郷土生活の研究』、筑摩書房*、1935年
*その後、筑摩書房等より文庫本 など復刻版が多数あり
3. 柳田国男『明治大正史世相編』、1930年
*その後、筑摩書房、講談社などより文庫 本など復刻版が多数あり
4. 色川大吉『昭和史世相編』、小学館*、1990年
*1994年小学館ライブラリーとし て文庫本化
5. 宮田登ほか『民俗調査ハンドブック』、吉川弘文館、1974年
6. 宮田登ほか『民俗研究ハンドブック』、吉川弘文館、1978年
7. 坪井洋文『イモと日本人』、未来社、1979年
8. 坪井洋文『稲を選んだ日本人』、未来社、1982年
9. 福田アジオ『日本村落の民俗的構造』、弘文堂、1982年
10. 福田アジオほか『講座日本の民俗学(全11巻)』、雄山閣、1996年より現在刊行 中
文化人類学入門
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