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大学・博物館等が保管してきたアイヌ遺骨の返還問題について

On repartriation of bones of the Ainu people from universities and museums

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池田光穂(大阪大学)・丹 菊逸治(北海道大学)

「「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」 (平成20年6月6日)及び「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」の報告書(平成21年7月29日アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会決定)等 を踏まえ、……過去に発掘・収集され、現在大学が保管するアイヌの人々の遺骨及びその副葬品の中には、アイヌの人々の意にかかわらず収集されたものも含ま れていると見られていることから、アイヌの精神文化の尊重という観点から、遺族等への返還が可能なものについては、各大学等において返還するとともに、遺 族等への返還の目途が立たないものについては、国が主導して、アイヌの人々の心のよりどころとなる象徴空間に集約し、尊厳ある慰霊が可能となるよう配慮す る」というのが現在の文部科学省の方針である。

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訴訟関連資料

「北海道大が1930〜50年代ごろ、研究目的で墓 地からアイヌの遺骨を掘り出したのは供養の侵害に当たるなどとして、アイヌや浦幌アイヌ協会が北大を相手取り、遺骨返還などを求めた訴訟で、札幌地裁(本 田晃裁判長)は25日、原告の居住地域から掘り出された身元不明遺骨11体をコタン(集落)再建を目指す「コタンの会」(清水裕二代表)に返還することを 柱とする和解案を提示し、双方が受け入れた。……1636体のうち、身元判明遺骨はわずか23体に過ぎないが、原告側は「アイヌはコタンで先祖供養してい た。身元が分からなくてもコタンに返してほしい」と訴え、第1次分として計78体の遺骨返還を求めていた。/この日の協議では、原告の居住する浦河町杵臼 (きねうす)で掘り出されたと認定された身元不明遺骨11体と身元判明遺骨1体を返還。祭祀承継者が分からない身元判明遺骨4体は北大が開設するウェブサ イトで返還先の特定に努め、見つからなかった場合には、浦河町などでコタン再建を目指しているコタンの会に返還することを決めた」毎日新聞,2016年3 月25日)http://mainichi.jp/articles/20160326/k00/00m/040/197000c

以上のことを踏まえて、丹菊逸治(北海道大学)と池 田光穂(大阪大学)は、共同で「大学・博物館等が保管してきたアイヌ遺骨の返還」に関するガイドライン(試案)をウェブの読者たちに提言することとする。

個人が特 定されないアイヌ遺骨等の地域返還手続きに関するガイドライン(案)
20170913

前文

アイヌ民族の遺骨および遺骨と対になった副葬品の不当な発掘・不適切な保管は学問の名において行われてきたものである。それを行ってきた学問界とそれを許 容してきた大学は深く反省し、アイヌ民族の遺骨・副葬品の不当な発掘・不適切な保管について謝罪するものである。また、たとえ合意の元に発掘・保管された 遺骨、あるいは偶発的な事情により保管されるにいたった遺骨であっても、その保管がアイヌ民族の文化的伝統に反すると判断されるならばアイヌ民族の文化的 アイデンティティを尊重する形で返還されるべきである。

1.本ガイドラインの位置付け

本ガイドラインは「『民族共生の象徴となる空間』作業部会報告」(平成23年6月)及び「アイヌ遺骨の返還・集約に係る基本的な考えについて」(平成25 年6月14日政策推進作業部会報告)を踏まえ、文部科学省が実施した「大学等におけるアイヌの人々の遺骨の保管状況の調査結果」(平成25年6月、平成 26年1月更新)においてアイヌ遺骨を保管している旨回答した大学が、個人が特定されないアイヌ遺骨及び当該遺骨と対応する副葬品(返還時に係争中のもの を除く。)(以下「地域特定遺骨等」という。)を、再埋葬を実施する団体(以下、再埋葬実施団体と呼ぶ)に返還するための手続に関して具体的な指針を定め るものである。
なお、個人が特定されていないアイヌ遺骨を保管する大学において個人が特定されたと認める場合は、速やかに文部科学省に報告し、「個人が特定されたアイヌ 遺骨等の返還手続に関するガイドライン」を考慮して返還の手続を進めることとする。

2.本ガイドラインにおける遺骨返還の考え方

 地域特定遺骨を返還する意向がある大学(以下「関係大学」という。)は、民法及び裁判例等を考慮し、返還と再埋葬(火葬の後の納骨を含む)を希望する再 埋葬実施団体に返還するものとする。

3.返還・再埋葬に向けた手続

(1)    返還に向けた事前準備

○関係大学は、民法その他関係法令及び本ガイドライン等を考慮しつつ、申請者から返還の要請があった場合における地域特定遺骨等を返還するための手続を速 やかに整備する。
なお、手続の整備に当たっては、地域特定遺骨等に係る返還申請から返還までの諸手続が、申請者等に過大の負担を与えないよう十分配慮するものとする。

○関係大学は、地域特定遺骨等を確実に返還するため、各地域団体等の同意に基づくDNA鑑定等による確認の実施について事前に検討し、必要に応じて規程を 整備するものとする。

(2)    地域特定遺骨等に関する情報の公開

関係大学は、地域特定遺骨等に係る遺族のプライバシーを尊重しつつ、地域特定遺骨等に係る以下の情報をホームページ等に可能な限り公開するものとする。
[1]発掘・発見された時期
[2]発掘・発見された場所
[3]性別、推定年齢
[4]その他参考事項

(3)    関係機関による情報の周知等

○関係大学は、発掘・発見した場所が特定されている地域特定遺骨等については、
3.(2)に定める地域特定遺骨等に関する情報の公開を行った後、文部科学省に報告を行う。文部科学省は、ホームページ等で当該情報を周知するとともに、 当該地域を管轄する市町村及び(公社)北海道アイヌ協会等関係機関に対して、当該情報の周知等の協力を求めるものとする。

○関係大学は、地域特定遺骨については、プライバシーへの配慮をしつつ祭祀承継者もしくは関係者(遺骨の所属していたコタンの構成員の親族等)に連絡を取 るよう努め、積極的に情報の周知をはからなければならない。

(4)    関係大学に対する返還申請
地域特定遺骨等の返還を希望する団体は、関係大学に対して、当該大学の定める書類に、自団体が祭司承継者もしくは関係者を含む可能性があること、もしくは 再埋葬実施団体としてふさわしいことを示す書類(構成員の一部の家系図、戸籍・除籍謄本等)を付して、地域特定遺骨等の返還を申請するものとする。

(5)    祭祀承継者(再埋葬実施団体)の確認

○3.(4)の申請を受理した関係大学は、地域特定遺骨等に関する情報と申請団体から提出のあった書類を総合的に勘案して、申請団体が祭司承継者もしくは 関係者を含む可能性があることを確認することとする。

○関係大学は、申請団体が祭司承継者もしくは関係者を含む可能性があるか確認できないときは、次の優先順位を考慮しつつ、当該申請団体と協議の上再埋葬実 施団体を決定する。

★「再埋葬実施団体」の決定に際しての優先順位
次の優先順位を設ける
1.地域特定遺骨の祭祀承継者を含む可能性がある団体
2.地域特定遺骨の所属していたコタンの構成員の祭祀承継者を含む団体
3.地域特定遺骨の所属していたコタンの構成員の親族を含む団体
4.地域特定遺骨にもっとも近い地域にある団体
また、再埋葬(もしくは火葬の後納骨)の実施能力がないと判断される場合には再埋葬実施団体となることができない。なお、再埋葬後におけるアイヌ式の供養 の実施能力についてはこれを問わないこととする。

○関係大学は、申請団体が祭司承継者もしくは関係者を含む可能性があるか否かの確認を行う際又は返還に必要なDNA鑑定等を利用する際等には、必要に応じ て、客観性・中立性を確保する観点又は技術的な助言を得る観点から、例えば、申請者と直接的な利害関係のない者であって、アイヌの文化を継承する者や相続 に関する法制又はDNA鑑定についての専門的知見を有している者等により構成される第三者委員会等を設置して意見を聞くものとする。

(6)    再埋葬実施団体に該当しないことが確認された場合

関係大学は、再埋葬実施団体に該当しないことが確認された場合は、その旨を申請団体に通知するものとする。

4.返還

○関係大学は、申請団体が祭司継承者もしくは関係者を含む可能性があることを確認した場合には、申請団体に当該地域特定遺骨等を返還することとする。
なお、地域特定遺骨の返還に当たっては、尊厳をもって扱うよう十分配慮することとする。

○関係大学は、申請団体と協議の上、当該地域特定遺骨の返還について、引き渡し日時、場所及び方法等を決定することとする。
なお、申請団体との合意は、書面をもって行うものとする。

○地域特定遺骨等の返還に係る搬送に際し発生する費用については、関係大学と申請団体との間で協議することとし、原則として関係大学が負担することとす る。

★「再埋葬実施団体」に返還する条件
1.返還された地域特定遺骨はすみやかに土中への再埋葬もしくは火葬を行うものとする。火葬後の遺骨は墓地または納骨堂に納骨する。
2.返還後は再埋葬もしくは納骨が完了するまで絶対に研究利用は行わないこととする。
3.埋葬法を考慮し、アイヌ民族の文化的アイデンティティと結びついた再埋葬を実施すること。
4.再埋葬後の供養については、遺骨の個人が特定されなくとも祭祀承継者と推定される人々が存在する以上、その意向を優先すること。

5.返還の目途が立たない場合

○次のいずれかに該当する地域特定骨等については、別に定めるところにより、北海道白老町に整備する「民族共生の象徴となる空間」に集約するものとする。
@再埋葬実施団体から返還請求がなかった場合

6.その他

○関係大学は、返還手続の実施状況について、文部科学省に随時報告するものとする。

○文部科学省は、関係大学からの報告を取りまとめ、内閣官房と協議の上、アイヌ政策推進会議及び同政策推進作業部会に報告するものとする。

○3.(1)に係るDNA鑑定等本ガイドラインに基づく返還に向けた手続に係る詳細、及び地域が特定されていない遺骨であっても現在大学が保管するものに ついてのDNA鑑定等による個人の特定の可能性や実効性に関し、今後、文部科学省において検討を行うものとする。

以上


 Negative_Legacy_Anthropology■アイヌ遺骨の取り扱いに対する自然人類学研究者たちの負の遺産について考える

日本の人類学者15.小浜基次(Mototsugu KOHAMA)[1904−1970]

児玉作左衛門

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