はじめてのフェミニズム
解説;池田光穂
I-B、コアIII、現代と社会I、「はじめてのフェミニズム」、選択、2単位、木曜3限、池田光穂、1996
(キーワード)
フェミニズム、従軍慰安婦、エロスと母性、社会理論、文化人類学
(授業の目標、講義概要)
生まれながらのフェミニストはいない、人はフェミニストになるのだ。現代を生きる我々にはこれは容易に想像できる言葉です。私はこのシラバスを書いている今(1996年12月)の時点ではフェミニストではありません。これを読んでいる皆さんもそうかも知れません。しかし文化人類学者という職業柄、フェミズムについて学んだり議論したりするなかで、フェミニズムはまさに20世紀に生まれた社会理論の中で最も重要な貢献のひとつであることを私は信ずるにいたりました。もちろん現代のフェミニズムの姿は歴史的な所産であり、またその考え方や行動についてもさまざまな「声」があります。
私のこの授業での関心は、
(1)フェミニズムの多様性について知ること、
(2)女性の母性とエロスの「分業」の問題を従軍慰安婦を事例にして考えること、
(3)フェミニズムが我々の生き方に対して問いかけるもの、
にあります。
(授業の内容)
授業は基本的にグループ学習とそれに伴う発表と全体での討議という方法をとります。グループ学習では、メンバー間の協調性と課外での学習などのスケジュール調整が学生に要求されます。この方法になじめない学生は参加しないでください――なぜならグループ学習が始まると他のメンバーの議論の遂行の妨げになるからです。 時間割は表記のとおりですが、グループによっては自由な時間に集まって教室以外で議論されることもかまいません。ただし、グループの発表や全体討論の時には特定の時間をとって集まる必要も生じるでしょう。
たぶん私も含めてフェミニズムにはじめて触れる人を対象にしていますので、最初から高度な授業でぶっ飛ばすということはしません。私が大切にしたいのは、権威によりかかった高度な議論よりも幼稚でもいいから自分たちで考えたオリジナルな議論です。
またこの授業はコチコチの女集団の授業だと偏見で想像してはいけません。担当教官は男(少なくとも外見上は)ですし、授業を運営する側からはコチコチの反フェミニスト、女性差別論者、非フェミニストなどの「論客」も大歓迎します。なぜなら、フェミニズムはそれに対抗する論理を検討し、それらを乗り越えようとするところから、社会理論として「洗練」されてきたという経緯があるからです。さまざまな「声」を反映しない社会理論は平板で魅力のないものです。
授業形態:
グループ学習、発表、全体討議
テキスト:
大越愛子『フェミニズム入門』ちくま新書、筑摩書房、1996年
吉見義明『従軍慰安婦』岩波新書、岩波書店、1995年
池田光穂「男性と女性の人類学のゆくえ」
参考書:
全員で探し、その情報を共有します。
評価方法:
出席点、グループあるいは全体討論への貢献度、小レポートなどから総合的に判断します。毎回出席し討論に参加すれば単位を落とすことはありません。ご安心下さい。
(この授業内容を深めたり、広げたりするための指針)
学問は、日常生活における認識や洞察を深めるだけではその半分の機能しか果たしていません。学問が意味をもつのは、その認識や洞察が社会的な場で実践される瞬間です。そのような学問は教師の戯言のなかにあるのではなく、我々の日常生活のなかにどこにでもころがっているものです。私がフェミニズムから学ぼうとしていることは、ここにあります。
文化人類学の学び方(池田光穂)
Copyright, Mitzubishi Ikeda, 1996-2003