CSCDスペシャル活動レポート

自分の研究、説明できる?

科学技術コミュニケーションの理論と実践(1)

自分の研究、説明できる?

東日本大震災をテーマに、様々な研究科に所属する学生たちが議論する授業。それぞれの領域の専門家として社会のなかで必要なコミュニケーションの力を身につけるため、彼らに最初に課された課題とは?

東日本大震災から1ヶ月半ほどたった、4月下旬。震災について議論する授業があるときいて取材に行ってきました。といっても、この授業の目的は、単に震災について知ることではありません。


「科学技術コミュニケーションの理論と実践」(集中講義)

われわれは科学技術とともに生きることを選択した社会に暮らしている。現代生活において科学技術が果たす役割は大変大きいし、今後ともこのことは変わらないであろう。大学院に学ぶ学生はこのような科学技術に大きく依存した社会において、知的な専門性を持った人間として生きることになるはずである。このような人々が社会から信頼され、尊敬されるようになるには何が必要だろうか。(CSCD科目シラバスより)


それを考え体感するために、この授業では、多様な研究科の学生が集まり、現代社会において話題になっている科学技術の具体的な事例をテーマに議論します。
授業を担当するのは、CSCD科学技術部門の小林 傳司さん八木 絵香さん山内 保典さん

CSCDは出会い系?

この授業の座長的存在である小林さんの口癖は「CSCDは出会い系」。その言葉どおり、様々な研究科の学生が集まりました。理学研究科、工学研究科、基礎工学研究科、情報工学研究科、それから、文学研究科。

この授業では、「異なる専門分野が、自らが専門としている対象に関して異なる視点、発想、方法でアプローチしていることの理解」の獲得を重視してます。だから、「科学技術コミュニケーション」といっても、受講生は理工系の大学院生だけではありません。文系の参加が重視されています。

シラバスには、こうあります。
「本演習では、研究の細分化により生じている専門家間のコミュニケーションの困難さを実感させることを目的とする。」

最初の自己紹介で、
「所属は、臨床哲学研究室です」。
こう答えた学生に、さっそく小林さんからツッコミが入りました。
「『臨床哲学研究室』じゃなくて『文学研究科』ね。まず研究科名を伝えないと、他の研究科の人にはわからないよ」


Transferable skills:互いの研究を2分で紹介してみる

簡単な自己紹介のあと、最初に受講生がチャレンジしたのは「Transferable skills」を獲得するためのワークです。


Transferable skills

非専門家とのコミュニケーション力やプロジェクトをマネジメントする能力等、汎用的でかつどこにおいても必要とされるスキル。


2列に並べられた椅子に向かい合わせに座り、それぞれ向かいの人と2分間、自分の研究について紹介し合います。2分たったら、席を右に一個ずれ、また向かいの人と研究の紹介し合う。それを繰り返します。

110615_transferable skills1.jpg 110615_transferable skills2.jpg 110615_transferable skills3.jpg

2分経つたびに、「ええ、もう終わり!?」「難しい!」と声があがります。
このワークを紹介してくれた山内さんがコツを教えてくれました。

山内「最初は絶対、うまくいきません。繰り返すたびに、相手の反応をみながらちょっとずつ説明を改良していくのがコツです」。

しかし、「回を重ねるごとにうまくなるどころか・・・どう話したら伝わるのかわからなくなって、どんどん話せなくなっちゃった」という人も。


研究の7つ道具:道具からみえてくる専門性

110427_7tools.jpg次に配られたのは、「研究の7つ道具」と書かれたA4の紙。

八木「みなさんの研究に欠かせない7つ道具を書いてください。これは、他の専門分野の人は使わないだろうというものがあれば、ぜひ、それも」

110427_7 tools.jpg書き終わったら、お互いの7つ道具を発表し合います。
まず注目を集めたのは、基礎工学研究科の北村さんの7つ道具「モデルハウス」。快適な室内環境を自立的に構築するシステムを開発しているそうです。
また、西洋史が専門の菊地さんの「ルーペ」にも、「文系がルーペ? 何に使うの?」と質問が殺到。
「写本を読むのに絶対必要」との答えに、「写本って、いつの時代のもの?」「言語は?」「ショートSにロングS? 何それ!」・・・道具をきっかけに、どんどん話が弾みます。


八木「今日は、最初に普通の自己紹介をしてもらったあと、ちょっと変わった2つのやり方を体験してもらいました。自己紹介といっても色々なやり方があることがわかったと思います。一番いいのは、相手が質問してくれるようにすること。研究の7つ道具は、そのきっかけになったのでは?」

その言葉どおり、みなさん休み時間になっても研究の7つ道具の話で盛り上がっていました。

次回は、受講生のみなさんが震災について議論する様子をお届けます。


(報告:松川絵里/大阪大学CSCD特任研究員)