CSCDスペシャルインタビュー

「こうしていれば」思いを胸に、次は高校生と

科学技術コミュニケーション理論と実践(3)

「こうしていれば」思いを胸に、次は高校生と

CSCDの授業の特徴は、多様な研究科の学生が集まること。受講した人が「もう一度やりたい」、そう思う理由は? 「科学技術コミュニケーション理論と実践」の受講生にききました。

坪内 邦男(つぼうち くにお)

工学研究科博士前期課程1年。非線形プラズマ実験室(坂和研)にて、宇宙の爆発現象や複雑な物理・惑星内部の超気圧状態を大型レーザーで再現する研究をしている。2011年4月〜6月、東日本大震災をテーマに科学技術と社会の関係について考える集中講義「科学技術コミュニケーション理論と実践」を受講。


CSCD:何故、CSCDの授業を受けようと思ったのですか?

坪内さん:私はもともと、厳しい環境に身を置こうと思って阪大の大学院を選びました。私の大学院での目標は、研究を突き詰めることとコミュニケーション能力を高めることなんです。そういう思いのもとでCSCDの授業を知り、受講しようと思いました。

CSCD:授業を受けてみてどうでしたか?

坪内さん:私は今まで学生団体に所属してきた経験もあり、自分自身のコミュニケーション能力はそれほど低いとは思っていなかったのですが‥‥実際にやってみると、科学技術という観点でのコミュニケーションは難しいなと実感しましたね。バックグラウンドが違う人同士が議論すること自体がとても難しいことですし、話し合いのゴールもあらかじめ明確に決められるわけではない‥‥自分の無力さを痛感しました。すごく良い経験だったと思います。

CSCD:そのように感じたのは、どのような場面ですか?

sciencecommu2011_gw.JPG坪内さん:授業では、まず最初に、ブレインストーミングによって考えられうる限り多くの論点を洗い出しました。その上でそれら論点を整理し、まとめていくというステップを踏みました。私もグループの意見のとりまとめに貢献したいと思ったのですが、実際は出てきた意見がばらばらすぎてどうまとめればいいのか全然思いつきませんでした。同じグループにずばっと切り込むことができる人がいて、その人の意見を聞いて「はあ、すごいなぁ」と思うのがやっとでした。授業が終わってからも「もっとこうすれば良かったんじゃないか」と私自身の議論への関わり方を何度も振り返りましたし、「もう一度やりたい」と今でも思っています。それくらい印象深い授業でした。

CSCD:どういう点について、もう一度やりたいと感じていますか?

坪内さん:授業では「震災について提言をとりまとめる」というテーマを取り上げたのですが、こういうテーマは収束が見えない議論になりますよね。他のグループはそんな議論の中でも「この点がつながっていて、この点はつながっていない」というのをすごく分かり易くまとめてプレゼンしていました。

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この経験をとおして、収束の見えない議論であっても、議論に参加している人が「この議論に参加して良かった」と思えることが大事だと感じました。そして、「私らしい議論への関わり方」を見つけたいと思うようになりました。例えば私自身を客観的にみると、議論が煮詰まってきた時に少し人と違う発想を提案して議論を進めるということが得意だな、と。緊張した議論を少し緩ませて、より議論を深めるというか。もう一度議論をするなら、そういう「自分らしさ」を発揮したいと思います。

坪内さん:それから私は、議論の間中ずっと、大阪大学の学生として何か強みを活かすことができないだろうかと考えていました。せっかく大学の授業の中で議論しているのだから、誰でもできることをやるのではなく、私たちだからこそできることをやるべきなのでは、と考えるようになりました。

CSCD:今後、どのような形でこの経験を活かしたいですか?

坪内さん:この授業の有志で、ある高校を訪問したんです。その高校の生徒会の方々が震災の後「自分たちに何ができるのか考えたい」と言っていると聞き、では私たちでサポートしよういうことになったんです。その議論においては、授業での経験が活きたかな、という実感があります。生徒会の方々にも非常に好評で、秋に二度目の会を実施することになりました。そこでは、今回の経験を活かしてもっと自分らしく議論に関わりたいと思っています。

(聞き手:森川優子/大阪大学CSCD特任研究員)


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