CSCDスペシャルインタビュー

「規定路線に乗らないこと」が"cutting edge"を生む

上田晶子(大阪大学グローバルコラボレーションセンター特任准教授)

「規定路線に乗らないこと」が

異なる領域からゲストを招きトークプログラムを提供する、「知デリ」。2011年9月29日の「ひと×人 幸福論」に登壇された上田晶子さんにうかがいました。

上田 晶子(うえだ あきこ)

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大阪大学グローバルコラボレーションセンター特任准教授。
1970 年北海道生まれ。ロンドン大学で開発学博士号を取得。在インド日本国大使館、国連開発計画ブータン事務所での勤務を経て、2007年より大阪大学グローバルコラボレーションセンター特任准教授。最近は、ブータン農業省と共同で、フードセキュリティに関する研究を中心に行っている。主な著作に、『ブータンにみる開発の概念』(明石書店)ほか。ブータンでのライス・バンクの取り組みなど、研究を実践につなげる活動にも積極的。


Q.知デリの交渉(研究室訪問*1)が始まってどう思いましたか?

uedaakiko3.jpg最初はふつうに学生さんから問い合わせがあったなあという感じで、じゃあ時間はどこが空いているかなと手帳を見てメールを返しました。その時は、特段何も考えてなかった(笑)。ファーストコンタクトはメールでも、会って話してみないと分からないじゃないですか。だから私はどんな人から問い合わせがあっても、どんな話か話してみましょって思うので、会う日程を決めました。ああ、CSCDって学生企画もやってるんだあとは思ったかな。

実際に会ってみたら、たくさんの学生さんが来て、みんな熱心に話を聞いてくださったし、話をしていて最初から最後まで学生のみなさんが企画をやることに熱意があると思いました。知デリの学生スタッフは全くのボランティアで、授業でもバイトでもない、学部や専門分野もばらばらの混成チームで、本当に企画をやりたい人たちが集まっているんだなあというのはすごいよく分かります。同時に、こういう言い方はすごく失礼なんですけど、「すごいキチンとしている」と思いました(笑)。CSCD教員の方がキチンとやっているのが透けて見える。GLOCOLでもGLOCOLの活動に興味がある学生さんと何かやりたいと思っているので、「どういう風にやっているんですか?」と知デリのイベントの打ち上げのときに教員に聞いてしまいました(笑)。


Q. 実際に出演依頼があって企画が具体化していく際に、不思議に思ったことや面白かったことなどはありますか?

やっぱり、会ったことのない人と、しかも「本番だけ(本番で初めて)会ってくださいね」というステージセッティングだったので、ちょっと不安もありました。そういう場合って私の今までの経験から言うと、打ち合わせで一番濃い話をしてしまって、本番にその濃い部分が出せなくて終わってしまうということもあった。本当は本番でやった方がいいんだろうなあって思いながら、「でももう打ち合わせで十分話したし」って思ってしまうんです。知デリは初めてお会いする方で全く異業種の方で、というのは不安もあったんだけれど、これを試してみる価値はあるかなあと。ちょっと試してみようという気分はありましたね。本番だけ会う。それまで打ち合わせとかでも会わない(*2)。それまで、企画をしてくれている学生さんが、先方が「こう言ってました」、「あんなこと言ってました」というのを聞いて、何となく議論の接点を見つけて「こんな感じかなあ」とすり合わせたり・・・。私はこういうやり方は初めてだったんだけど、いつも違うやり方で対談やシンポジウムをやって不完全燃焼で終わることもあるので、今回は試してみようと思いました。うん、新しかったですね。


Q.本番はいかがでしたか?

いやあ、小山田さんにご迷惑をおかけして・・・、と私は思っているんです。というのは、小山田さんはブータンの生活についての質問など、私への仕掛けをしてくださったのだけど、こっちから小山田さんに仕掛ける切り口みたいなものを私は用意できていなかったなあと。対談なのに、小山田さんに司会のような役回りをやっていただいてしまった。本番の最中に「事前にもっと考えておけばよかった」ってすごく思いました。「これはいかん!」って心の中で思いながら本番あの場でなかなか追いつかなかったです。場の流れをお任せしてしまいました。

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Q.本番を終えて、今思うことは何ですか?

小山田さんとまた会いたいです。小山田さんとまた何かしたいですね。小山田さんのところにも出かけていきたいです。今回の対談の続きもやってみたいですね。今度はステージみたいなのではなくて、みんなで輪になってお客さんと一緒に考えるみたいな場があってもいいですよね。

また、今回の対談を終えて今、やはり「しあわせ」を考えたい、と思っています。「しあわせ」について考えるときに、ブータンの歴史や文化的背景をしあわせの根拠にして、「ブータンだからしあわせで、日本じゃ無理だよね」となってしまうことが多いんです。でも、そうではないと思う。ブータンのhappiness、幸せ感のエッセンスを制度、行動様式などから抽出して、実行して、そうやって行動することで何が変わるか、日本で何ができるか、というところまで話しあいたいです。一番興味あるのは、やってみて、「何が変わるか」なんです。意識、人間関係、社会、思考パターン、行動、・・・何が変わるだろう。たとえば、知デリの場では駆け足で話してしまったハピネス家計簿(*3)やほめグラフ(*4)でもいいし、知デリのWEBレポートにあったように、何人かで本を共有して、読みたいと思っている人で回しあう、というような場所の定まってない本を作ってみるのもいいですね。本はできそう。実際にやってみて、「イケてない」ってこともあるかもしれないけど(笑)。それでも、「何が変わるか」を知りたいです。これは、学生さんと一緒に考えていきたいなと思っています。一緒にやりたい人がいたら、ぜひ私(上田特任准教授)にメールしてください!

色んなことの最先端を "cutting edge" っていうけれど、新しい思考の領域で自分の思考を走らせて見ることで初めて、最先端になっていくんだと思うんです。新しいことに挑戦するとともに、思考回路そのものが、今まで聞いたことないものになるように。たとえば、「国の政策を変えると何が変わるの?」と考えるのもそう。想像力を働かせるということ。既定の路線にこだわらない自由な発想は大学だからこそできるし、私もやってみたい。そして、学生さんと一緒にやることに意義を感じています。学生のみなさんには自由に自分の思考を走らせるということをやってほしいし、「規定の路線に乗らないこと」を恐れないようになって卒業してほしい、と思うんです。

そういう意味では、今回の知デリWEBレポートで、「本を共有する」というアイディアがでてきたのは、私にとって大きな収穫です。これは、私ではでてこなかったアイディアだから。「私がこう言ったから」ではなくて、出てきたアイディアから実行に移していきたいですね。


Q.CSCDに期待していますか?期待することは何ですか? 

もちろん期待しています!部局を超えたコラボレーションはやっていて楽しいし、ワクワクします。GLOCOLも文理融合を掲げて、積極的にコラボレーションをやっているので、これからもっと一緒にやっていきたいですね。地理的に近い(豊中キャンパスのGLOCOLは大学教育実践センターの3階。CSCDは同じく4階。)のに、まだ組織的に遠い、という距離を縮めたいです。

そして、たとえば「GROSS 阪大 HAPPINESS」を考えることなどをやっていくときに、授業のやり方や評価の仕方がどう変わるのかなあ。というのも、興味のあるところです。


Q.知デリに期待することは何ですか?

よく「話が通じない」っていうじゃないですか、文理の間とか、異分野とか。でも私は、知デリで異業種でもこれだけ話せるんだ、ということも引きだしてもらったし、「話が通じないかな?」と思っていても案外話が通じるということも知デリで実現したし、何より私はその楽しさを知デリで体感しました。だから、知デリをもっともっといっぱいやってほしいと思います。

あと、知デリは企画の背後に「伝えたいこと」があって、それをどう現実に落とすかを考えている。学生さんに癖になるまで身につけてほしいのは、どんな小さなことでも、まず、Visionをもって、現実に落とすこと。高等教育機関だからこそ、VISION MAKING できる人を作りたい。知デリのその姿勢が私が知デリを好きな理由かもしれません。


*1)知デリでは、まず話を聞いてみたい教員にアポイントメントを取って、研究室訪問を行う。
*2)知デリの2組のゲストは、初対面のゲストで考える。ゲスト同士は企画メンバーから双方について話を聞くこともあるが、本番当日の開演1時間前から1時間弱の打ち合わせを行うのみで本番に臨む。
*3)上田さん発案。家計簿をつける際、品目と金額だけでなく、それを買ったことによる満足度も一緒につける。
*4)上田さん発案。ほめられて嬉しかったら、ほめてくれた人に「ほめグラフ」上でシールを貼る。こうやって目に見える形にすることで、「ほめ上手」をつくろうというアイディア。


(聞き手:米田千佐子/大阪大学文学部4回生)


【関連ページ】
●活動レポート:知デリ「ひと×人 幸福論」(2011.9.29  Apple Store)