CSCDスペシャルインタビュー

高校生も「白熱教室」にチャレンジしたい!

白熱教室 in 豊中高校 -「NHK白熱教室JAPAN in 大阪大学」の反響から

高校生も「白熱教室」にチャレンジしたい!

NHK「白熱教室JAPAN」放映終了後、寄せられた反響の中には、「自分たちもしてみたい!」という共同実施の要望もある。ここでは、それをいち早く実現させた大阪府立豊中高等学校の先生に、経緯や実施後の手ごたえを聞いた。(プロジェクト名:基礎探究⑥「白熱教室in 豊中高校」/実施日:2011年12月19日)

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大阪府立豊中高等学校  上久保真里先生(写真右)、堀田暁介先生(写真左)
大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 特任准教授 八木絵香
(聞き手:片平深雪-大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 特任研究員)

-CSCDを知ったきっかけは何ですか?

上久保:「サイエンスポータル」というサイトがあるんです。そこにカフェ・オン・ザ・エッジのプログラムが紹介されていて。興味を持ちました。今日もこれから、この取材が終わったらアートエリアB1でのプログラム 研究ときめき*カフェ「ボツリヌス食中毒の秘密」へ行くんです。同じ学校の先生も誘ったんですが「プログラムが終わったら(三田に住んでいるから)、帰りが終電近くになってしまう」と、残念ながら断られてしまいました。その先生も直前まで悩んでらっしゃった(笑)。

堀田:ぼくは(大阪大学)卒業生だけれど、知らなかった(一同笑い)。ちょうど、CSCDが豊中キャンパスに移った時期が、自分の卒業年と重なるくらいでしょうか。ぼくも豊中キャンパスに通っていたので、すれ違ってはいるはずです。

八木:それはしょうがない...ということにしておきましょうか(笑)

-豊中高校は、「スーパーサイエンス・ハイスクール(SSH)」に指定されていますね。それについて詳しく教えてください。

上久保:「将来、日本の科学技術をリードする国際性豊かな人材を育てること」を目的に2002(H14)年から文部科学省が始めた取り組みです。いわゆる「理系」と呼ばれる勉強-科学技術や理科、数学-を重点的に学ばせます。指定校の期限は5年間。豊中高校は2009(H22)年に指定を受け、今年度が2年目です。"重点的に"の内容としては、例えば理科であれば従来の『講義』の他にも『実験』の数を増やしたり、今回のように『社会とのつながりを知るための科学リテラシー授業』を実施するなど、多角的に科学技術の理解を深める授業を推進する、などですね。

-今回、授業の中で『白熱教室 in 豊中高校』を実践されました。その経緯について教えてください。

上久保:今日は来られていませんが、高倉俊一先生という熱心な先生が豊中高校にいらっしゃいます。その先生がNHKでの放送をみて「こういうのをうちの生徒にもさせたい!」と。1年生では「探究基礎」という、一連の授業を組んでいるんです。中学校まででいう「総合学習」のようなものでしょうか。講義もしますが、実際に現場へ出て行って実習をしたり、自分で課題を見つけてレポートも書きます。その中で「白熱教室」のように、自らが議論に参加するような授業をしたいと考えたのが最初ですね。

-八木先生ご自身、高校生を相手に今回のような"CSCDらしい授業"をするのは、初めてだったんですか?

八木:そう。これまでも「ジュニア.サイエンスカフェ」を高校でやったことはあったけれど。「学校の授業で」というのは初めてですね。だから、わたし自身、いろんなことが勉強になりました。試行錯誤の段階ですよね。

-高校生に対しての「コミュニケーションデザイン」のあり方を、高校の先生と一緒に実践しながら研究しているようなものなんですね。

八木:そうかもしれません。とにかく今回1回やってみて、いろいろなことを肌で感じられましたし、「もう少しこうした方がいいかな」ということもたくさん見えた。問いの設定ひとつとっても、「もう少し深い方がいいかな」とかね。
ところで、生徒にさせたいと思った「こういうの」って、どんなものだったのでしょうか?

上久保:双方向性のある...ディスカッション、ということでしょうか。彼ら1年生はまだまだ「自分から話す」ことに慣れていない。授業をしていても、なかなか「活発な議論」が出来ないなぁ、という共通の悩みが教員の間でありました。「探究基礎」の授業の中でも、実際に東京の科学未来館へ行って「ジグソー法」の研修をみんなで受けたんです。希望者だけでしたけれど。「話し合いができるような仕掛けがないかなぁ」と常日頃思っていたものですから。

八木:実は、話し合うための「仕掛け」って、単純に会議の進行方法という意味では、それだけが重要ではないものかな、とも思っていますよ。

上久保:そうなんですか!今回の授業ではポストイットに意見を書かせて・・・と言う手法が新鮮でした。あれだと普段話さないような生徒も発言しやすい。

堀田:授業ではまじめで大人しいけど、あれをしたことで、普段から思っていることがぽろっと出てきたな、とぼくも感じた生徒がいました。

八木:トータルのデザインですよね。その場でどう意見を出しやすくするかという「仕掛け」だけでなく、どんな場所でするか、机をどう配置するか、あとは参加者の属性ですとか。例えばいつもの学校や職場とは違う場所に移動してやるだけで、それぞれが自分の「役割」を脱ぎ捨てて、議論に参加しやすくなったり。参加者の属性も近いよりバラバラの方が盛り上がったりすることもあります。研究者ですら-研究者だから、かもしれませんが-専門を離れた方が、自由に意見をいいやすいということもある。研究者の「コミュニティ」は、ある特定の分野に限定して成果を求める場合には有効かもしれませんが、それは裏を返すと自分自身の立ち位置を固定してしまっているということでもある。でもそんな行動様式から離れて、別の場所にうつると、違うタイプの「しゃべり」ができる。そういうことの意味は大きいと思っています。そして、今回思ったのは「高校生に適した実践方法って、どんなものかな?」ということでした。そこで、まずは「自分が南相馬に住む高校生と同じ立場になったら、豊中高校が事故を起こした原子力発電所から近い位置にあったら」という設定で、議論をスタートしてもらった。

上久保
:あの方法も新鮮でした。実は来年度もまたご協力をお願いしたいと思っていまして...。次回は7~8名1グループから4~5名にグループ編成しなおします。また、ぜひCSCDの学生の方にもTAとして参加していただけないか、と。そして「自分が南相馬の高校生だったら」だけではなく、妊婦さん、警察官、漁師さん・・・いろんなロールを与えてロールプレイさせてみたい。

八木
:人数は確かにもっと少ない方が議論が活発になるでしょうね。また、興味のある大学生を連れて行くのも大丈夫ですよ。ただ、ロールプレイは...個人的にはあまり「好き」ではないですね。

-確かに、ロールプレイをするにしても、やる側の「想像力」には限界がありますね。やっても上滑りな議論しかできない。わたしが別の場所(大学)でやっている取り組みでも、その属性の人のことを理解させるために、できるだけ「ホンモノの人」にインタビューさせています。ただ受身で情報を受け取る授業と違って「インタビューして自分で情報を取って編集する」という作業をさせると、情報の深度がぐっと深まるし、言葉が体感化できる。その後の話し合いがものすごく進みやすくなります。

八木:そうなんですよね。ロールプレイには、かなり限界がありますし、特に、社会経験の幅がそれほど広くない高校生の「体感を伴わない」ロールプレイは、かえってステレオタイプ的な議論になる可能性もあります。

上久保:架空の役割を混ぜ込むのではなくて、実際に保護者に入ってもらったり、中学生と一緒にしたり...の方がいいのかもしれないですね。TAの方も1グループに1人入ってしまうとどうしても高校生が頼ってしまうので、遊軍的に数人、まわりをウロウロしてくれるだけでありがたい。

八木
:実際に他の属性の人がそういう風に入るのはいいでしょうね。

-実際にやってみて、今回の授業の「感触」はいかがでしょう?

堀田:う~ん。まずまず...でしょうかね。

-まずまず、というのは?

堀田:もっと発言が欲しかったですね。やっぱりまだまだ「話す」ことが苦手な生徒が多い。ポストイットのように声を拾う仕組みがもっとあればいいのでしょうか。

八木:ポストイットはあくまでひとつのきっかけですよね。あのような手法は、きっかけとしてうまく使わないと、諸刃の刃で、「ワークをこなす」みたいになってしまいがちです。「はい、書きました!」みたいな、ね。それが目的化してしまうと、議論に結びつかない。

上久保:それでも生徒は楽しそうにしてました。あっという間だったし授業後のアンケートでも「もっと議論したかった!」という声があった。あと1時間くらいは出来たかもしれません。

八木:確かに、テーマがもう少し深くてもいけましたね。今回は少し単純化しすぎたのかもしれません。

上久保:これまでも、ディベートという形ですが「クローン動植物について」「ロボットに心はあるか」など、かなり深く突っ込んだテーマを扱ってきた生徒たちですから。

-校長先生の反応はどうでしたか?

上久保:いや、喜んでくれていると思います。もともと校長の問題意識も「科学技術が専門細分化しすぎている。専門家たちの集団だけで議論していてもラチがあかない」というところにありました。これから必要なのは「ミーハー力(りょく)」のある人間だ!と。いろんなところに話を聞きにいって、どんどんその間をつないでいくような...。

-ディスカッションを楽しめる人材が必要と言うことでしょうか。

八木:「楽しめる」だけではなくて、知的好奇心と、知的体力、ふたつが必要ですよね。これは常々CSCDの小林先生もおっしゃっているところ。異なる意見のひとと議論するとき~例えば原子力の問題でも~スパッとすぐに答えが出るわけではないじゃない。というよりは、どんなに考え続けても皆が納得する「正解」はありえない。そこに「考え続ける、あきらめない力」が必要だというわけです。

上久保:これまでもディベートの授業はしましたが、あれは事前にシナリオがあらかた出来ている。筋書きがあるんです。でも今回のような授業では「筋書き」「オチ」がない。その中で、物事をどう考え続けていくか-そういう意味では、生徒たちも初めての感覚だったのではないでしょうか。

-そんなすぐに現れないかもしれませんが...授業の事前、事後で何か変化のあった生徒はいますか?

堀田:授業後に質問に来る子が出てきましたね。

上久保:確かに。先生を身近に感じてくれるようになったのかな。生徒と先生の間が少しフラットになったかもしれません。「自由に意見を言っていいんだ」というような。

-それは小さいけれど、大きな変化ですね。

上久保:少しずつでも、取り組みを重ねてそういう生徒を増やしていきたいですね。

-来年度に向けての抱負はありますか?

上久保:使命感を持って議論を作っていってほしいですね。例えば「未来への提言をつくる」などでしょうか。

八木:それはいいでしょうね。あとは如何に単なる会話ではなく「議論」へつなげていけるか。「わたしはなぜこう主張するのか」という背景にある論拠を伝えなければいけないし、他者の意見と何が異なるのかも主張できなければならない。こういう部分の訓練も一緒にしていくといいでしょうね。

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