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スペシャル授業レポート
授業レポート

春~夏学期「リテラシーD(映画で学ぶ社会の見方)」(ゲスト:山國恭子さん)

COデザインセンター開講科目<リテラシー>
2019年6月18日(火) 投稿

COデザインセンターでは多様な授業が開講されています。

今回は2019年度春~夏学期に「リテラシー」として開講されている「リテラシーD(映画で学ぶ社会の見方)」(担当:山森 裕毅)の様子をレポートします。

本授業の目的と目標は以下です。

COデザインセンターは社会課題に取り組む実践的な知性と感性を育むことを目的のひとつとしています。とはいえ、学生が社会課題のある現場にいきなり飛び込んで実践することはとても難しいです。そのため、まずは映画を通して知性と感性を磨きたいと思います。映画はそれ自体で社会課題への取り組みであり、これらの能力を磨くための優れた素材です。


今回は、2019年5月17日に行われた授業の様子をレポートします。

※)ゲストに山田英治 さん(ドキュメンタリー映画『ほたるの川のまもりびと』の監督、プロデューサー)をお迎えした2019年4月26日の授業についてのレポートはこちらをご覧ください。

この日は、大阪大学の卒業生であり、フィリピン・インディペンデント映画に詳しい 山國恭子 さんをゲストにお迎えしました。

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授業の最初に、映画『バガへ(The Baggage)』(2017年/フィリピン、監督:ジグ・ドゥライ)を鑑賞しました。


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ジグ監督は、本作品の脚本も担当しています。海外に出稼ぎに行く人が多いフィリピンの現状をリサーチし、本当にあった事件をベースに本作品を制作したそうです。

山國さんの
「思ったこと、感じたことをどんどんお話してくださいね。」
という言葉でスタートした、後半のディスカッション。

山森さん
「正直、あそこで映画が終わるのか、という感じでしたね。すごく宙ぶらりんの状態で映画が終わる。あの後主人公はいったいどうなるのか?と思わされました。あと、いろいろな出来事が当事者の意見を無視して進んでいく感じがしました。」

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受講生
「セリフを聞いていて、英語とタガログ語がまざっているなと思いました。これは、現地の状況に近いのですか?」


山國さん
「フィリピンの人びとの現地での会話にかなり近いですね。ジグ監督は元々脚本家としてキャリアをスタートしているので、リアルな会話表現がとても巧みです。フィリピン人同士で話す時は主にタガログ語を使用し、英語とタガログ語が混ざった"タグリッシュ"でも話します。あまり親しい間柄ではない人と話すときは英語のみで会話することが多いです。タガログ語を使用することによって、相手との距離が縮まることもあります。時と場合によって使い分けていますね。」

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山國さんからは、フィリピンのインディペンデント映画の業界事情や、よく取り上げられるテーマにはどのようなものがあるか、というお話もありました。フィリピンのインディペンデント映画では、今回のような社会的な問題を取り上げた作品だけでなく、政権を批判するような作品、セリフでクスッと笑えるようなロマンティックコメディなども流行りだ、ということでした。

いずれにせよ、「自分たちの言いたいことを伝える作品」がインディペンデント映画だ、とのこと。

一方、検閲は厳しく、撮影中に警察からの監視を受けたり...、というようなことも頻繁に起こるそうです。

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受講生
「作品のテーマが、あまりよくわかりませんでした。社会問題に光をあてるというのが目的だとしても、映画作品としては冗長なのではないかな、と思ってしまいました。」


山森さん
「作品には、それぞれ『リズム』というものがあるんですよね。人が楽しいとか面白いと思うリズムに合わせてつくられる映画もあれば、そうでない映画もあります。小説が多様であるように、映画も多様なんですよ。

今、私たちは、楽しまされないと楽しめなくなっている、という部分もあるのではないでしょうか。ひとつの価値に乗ってしまっている可能性があるのではないか、と、僕は思います。ですから、受け手が気持ちのいいものだけを受け入れるのではなく、この作品の作り手はどういう意図でこれを作ったんだろう、一見無意味に見えるあのシーンにどんな意味や思いがあるんだろう、ということを考えるのも大切だと思います。リテラシーを学ぶということは、そういうことなのではないかと考えています。

作品のテーマがよくわからないということでしたが、もともと社会問題自体が複雑なんですよね。ですから、それを映画で多面的に見せようと思うと、どうしても情報量が多くなってしまうということはあると思います。でも、そこをしっかり見て、読み解けるようになっていくことが映画を観ることの価値のひとつだと考えます。

僕としては、みなさんにいろいろな作品を見てほしい。もし、面白くなかったなぁと感じたとしたら、そこで止まらずに、何が面白くなかったのか、どうすれば面白くなるのか、ということを一歩踏み込んで考えてほしいですね。」


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最後の受講生と山森先生とのやりとりは、非常に印象的なものでした。

一般的な学生にとって、フィリピンのインディペンデント映画はそれほど「なじみのあるもの」ではないかもしれません。いつも触れているものとはちょっと違うものに触れ、いろいろなことを感じ、考えることが大切だ、という山森先生のメッセージが受講生たちに伝わったのでは、と思います。

COデザインセンターで行われているその他の授業のレポートについては、こちらをご覧ください。


(書き手:森川優子 COデザインセンター特任研究員)