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イベントレポートスペシャル授業レポート
「ソーシャルイノベーションA」

イノベーションを途上国の人々に届けるコペルニクの活動から考える: 社会的インパクトを生み出すには

COデザインセンター開講科目<協働術>
2019年7月 2日(火) 投稿

社会的企業コペルニクは、「ラストマイル」 と呼ばれる途上国で最も支援が届きにくい地域において、貧困削減に繋がる革新的なアプローチの開発、検証、普及に取り組んでいます。また、フィランソロピー(非営利)とビジネスの手法を組み合わせ、様々なセクターと提携しつつ、社会により大きなインパクトを生み出すための活動を展開しています。

本セミナーでは、世界的に注目を集めているコペルニクを共同創設された中村氏をゲストに迎え、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けたコペルニクの活動を紹介いただくとともに、社会的インパクトの創出と拡大のための取組や、その取組の評価方法や課題についてお話いただきました。また、多様なアクター間の協働によって社会的インパクトを生み出す方法について、参加者のみなさんと共に考えました。

本企画は、2019年5月21日、COデザインセンターが「協働術」として提供する授業「ソーシャルイノベーションA(コンセプト編)」(春学期、担当:辻田 俊哉)の一般公開として行われました。

昨年度のイベントの様子については、こちらをご覧ください。

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中村 俊裕

大阪大学COデザインセンター 招へい教授
コペルニク共同創設者兼 CEO

ラストマイルの人々にシンプルで革新的なテクノロジーを届けるため、2010年コペルニクを共同創設。過去10年間は国連に勤務し、東ティモール、インドネシア、シエラレオネ、アメリカ、スイスを拠点としてガバナンス改革、平和構築、自然災害後の復興などに従事。国連の前職はマッキンゼー東京支社で経営コンサルタントとして活躍。京都大学法学部卒業、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で比較政治学修士号取得。2018年より大阪大学COデザインセンター招へい教授も務める。2012年には世界経済会議(ダボス会議)のヤング・グローバル・リーダーに選出。「グローバル・アジェンダ委員会2014-2016」における「持続可能な開発」委員も務める。さらに2014年には、ユニセフの「インドネシア・イノベーション・ラボ」のアドバイザーに就任。著書に『世界を巻き込む。―誰も思いつかなかった「しくみ」で問題を解決するコペルニクの挑戦』2014年。

コペルニクのウェブサイトはこちらをご覧ください。

コペルニクがどのような活動を行なっているかについては、昨年度のイベントにて、中村さんがお話されています。


受講生を含む35人以上の参加者が、中村さんのお話に耳を傾けました。
今日のテーマは、「インパクト評価」です。

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中村さんは、以下のようにお話されました。
「ソーシャルセクターは、さまざまなプレイヤーに支えられて成り立っています。例えば国際機関、NGO、インパクト投資家などがそのプレイヤーにあたります。

インパクト投資家というのは、社会課題をビジネスとして解決しようとする活動に投資する人たちです。彼らは、どこにどのくらい投資をするとどのような社会課題が解決できるか、それによってどのくらいのインパクトがあるか、ということをつかもうとします。そして、できるだけインパクトが大きいものに投資しようとするのです。そういった評価として、『インパクト評価』が必要です。

一方、国際機関は、公的資金を用いてソーシャルセクターの活動を支援します。公的資金を投入した結果どうなったのか、投資した事業はうまくいったのか、それともうまくいかなかったのか、ということに対し説明が求められます。そのような点においても、『インパクト評価』が必要となります。」

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「営利を目的とした企業活動においては、事業がうまくいっているか、いっていないか、ということを測る指標として、いくつか社会的に受け入れられているものがあります。例えば利益や株価です。しかし、ソーシャルセクターの活動では、そういった指標があてはまらないことが多いのです。

インパクト投資家を例にあげると、彼らは、利益があがったか否かという経済的なインパクトだけでなく、社会的、環境的に良い結果を生み出すということを期待しているのです。」

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「一見とらえにくい社会課題解決に関わる事業を行う側としても、評価をきちんと行うことは重要です。

まず、評価を明らかにすることによって、より多くの投資につなげることができる、というメリットがあります。

また、事業活動そのものの経過を評価を伴って見ていくことで、うまくいっているのか、そうでないのか、ということを客観的に把握することができるようになります。事業がうまくいっていればその活動を促進すれば良いし、うまくいっていなければその原因を考えることにつながります。そういった『学び』や『改善』にも指標が必要なのです。」

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過去に行われた社会的課題解決のためのプロジェクトのなかには、指標に基づく客観的な評価が行われず、成果について検証がなされなかったがために、莫大な投資に対して批判的な意見や疑問が多く出たものがあったそうです。中村さんはこういった事例をとりあげ、受講生たちにもわかりやすく説明してくださいました。

「インパクト評価」の重要性が認識される一方で、評価のために精緻にデータをとろうとすると、調査自体に莫大なコストや時間がかかるという問題点もある、とのこと。そこで、コペルニクでは、必要に応じ、早く結果が出る簡易な調査を取り入れることもあるそうです。

「簡易な調査を行い、スピードをもって事業を実行する場合と、深く調査して影響や効果を精緻に把握する場合。大切なのは必要に応じて使い分けることです。事業としての成熟度が高くなく、この事業は本当に実現できるのか、できないのか、という判断を行うときには、素早く簡易に調査を行うことが有効です。小規模でリサーチすることで、これは効果が出そうだ、と予測し、大きな投資に結びつけることができた、という事例もあります。その一方、事業としての成熟度が高まってくると、精緻にデータをとってきちんと評価するということが重要となります。」
と、中村さんはお話されました。

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コペルニクでは、インパクト調査のトレーニングや、調査に利用できる安価なアプリについての情報提供を行い、広くこれらの技術を活用できるように活動しているということでした。特にテクノロジーを活用した調査には注目している、と、中村さんはおっしゃっていました。


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質疑応答も非常に活発に行われました。
受講生や参加者たちからは
「インパクト評価を実際に行うのは誰なのか?」
「事業によって内容が異なるので、何を指標とするか、決めるのが難しいのでは?」
「将来インパクト評価に関わる仕事をしたいと思っているが、どういう知識や経験が必要か?」
という、さまざまな質問が出ました。

また、最後の質問は
「コペルニクにはどのような人が働いているのか?」
というもので、中村さんが日頃どのような採用活動を行なっているか、どういう人をコペルニクに採用したいと思うか、ということをお話される場面もありました。

実際に社会起業家として活躍される中村さんのお話を聞いて、受講生や参加者の皆さんは大いに刺激を受けたに違いありません。
ソーシャルイノベーションの授業では、このような機会を積極的につくっています。

(書き手:森川優子 COデザインセンター特任研究員)