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集中講義「協働術H(表現の場を作る)」

カマハン(大阪大学 × 釜ヶ崎芸術大学)
2019年12月 2日(月) 投稿

2019年10月4日(金)、大阪大学豊中キャンパス サイエンス・コモンズ スタジオAにて「カマハン(大阪大学 × 釜ヶ崎芸術大学)」第一回、「釜芸 in 阪大」が開催されました。

この企画は、コミュニケーションデザイン科目「協働術H(表現の場を作る)」(秋~冬集中講義)の授業の一環として位置付けられています。

この授業を担当する田中 均 COデザインセンター准教授をはじめ、今回のカマハンのゲストである齋藤 陽道さん(写真家)、そして釜ヶ崎芸術大学を主催するNPO法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)代表の上田 假奈代さん、釜芸参加者の方々、本学学生が集いました。

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授業の一環ではありながら、まるで、お茶会のようなゆるやかなあたたかい雰囲気で、会はスタートしました。

まず、田中先生より、授業「協働術H(表現の場を作る)」の趣旨と内容が説明されました。

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この授業の目的は、「協働術」(さまざまな現場で複数のアクター/プレーヤーとともに支え合い、わかちあい、つくりあうためのアーツ)を学ぶことです。

表現活動を通じて社会的課題に向き合う取り組みが行われている現場に入り、町を歩き、ワークショップを経験することを通じて、「表現が行われ、受け入れられる場」を作り、維持することはいかにして可能かを考えます。

この授業の場合、「現場」は、かつて日雇労働者の町として知られ、現在は単身高齢者が多く住む西成区の通称釜ヶ崎地域です。高齢化の進行と周辺地域の再開発とともに、この地域は急速に変化しつつあります。ココルームはこの地域で2012年から釜芸を開催し、哲学・音楽・詩の講座を通じて、誰もが表現できる場を作り出そうとしています。

「協働術H(表現の場を作る)」は、釡芸とCOデザインセンターとが共同で行う講座「KamaHan(カマハン)」として実施されます。

釜ヶ崎芸術大学(通称:釜芸)
2012 年より大阪市西成区釜ヶ崎でスタート。「学びあいたい人がいれば、そこが大学」として、地域のさまざまな施設を会場にした、ゆるやかな釜芸プロジェクト。天文学、哲学、美学など、年間約100 講座を開催中。近隣の高校や中学校への出張講座を行う。展覧会など:ヨコハマトリエンナーレ 2014、アーツ前橋「表現の森」(2016)、鳥の演劇祭(2016)、大岡信ことば館「釜芸がやって来た!(2017)」招聘。

釜芸のウェブサイトはこちらをご覧ください。

カマハンは2018年から始まり、今年で2年目となります。カマハンの講座は、いつもの釡芸の講座と同じくだれでも参加できます。受講生は、ココルームの協力のもと、ゲスト・アーティストが企画する釜芸の講座に参加し、そこに集う人々と対話します。2018 年度は、講師として武田 力さん、深澤 孝史さんマット・ピーコックさん、藤井 光さんをお招きしました。

今年度のゲスト・アーティストは、ろう者の写真家の齋藤 陽道さんです。齋藤さんは写真と著作を通じて、他者との向き合い方、ことばの可能性について考察してきました。この授業では、齋藤さんとともに釜ヶ崎という街を体験し、体験を通じた自分の感情の動きについて省察し、それについて語り合い、協働の中で表現を形作ることが行われます。

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続いて、上田 假奈代さんからのお話です。

NPO法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)
釜芸を運営するアートNPO法人 。2003年、大阪市の現代芸術拠点形成事業に参画し、いまはない新世界フェスティバルゲートで活動スタート。「表現と社会と仕事と自律」をテーマに喫茶店のふりをしながら、さまざまなであいと問いを重ねてきた。2007年に市の事業は終了し、2008年釜ヶ崎の端の動物園前商店街に拠点を移す。2016年同商店街の南に移転し「ゲストハウスとカフェと庭ココルーム」を開所。

ココルームのウェブサイトはこちらをご覧ください。

「アートは、日々のくらしのなかに、ひととひととの間に中にあります。もしかすると、生きているひとと亡くなったひとの間にもあるかもしれませんし、ひとと自然とのあいだにもあるかもしれません。そう考えると、『生きていること』がくっきりとしてくるのではないでしょうか。表現する、表現できる場があるということが大事だと私たちは考え、ココルームは喫茶店のふりをしながら、いろんなひとがうっかりであう表現の場として存在しています。

今、釜ヶ崎は大きな変わり目に立っています。高齢化がすすみ、たくさんの別れもありました。一方、海外から多くの旅行者が訪れるようにもなりました。

そんななか、釜芸は『釜芸があるから、ちょっと行ってみようかな』と、さまざまなひとが外部から釜ヶ崎を訪れるきっかけになっています。釜ヶ崎の外のひとが釜ヶ崎に身をおくひとつの機会として、これからも釜芸を継続していきたいと考えています。

今年度のカマハンのゲストは齋藤さんです。変わり目にある釜ヶ崎の『今この瞬間』を写しとることができるのではないでしょうか。そしてそこにどのような言葉を添わせるか。空間の粒子のようなものまでとらえる齋藤さんと一緒に釜ヶ崎を歩くとき、私たちの感じ方、見方がいっそう広がっていくのではないかと期待をよせています。

また、今回は、展覧会という形で、写真と言葉をとおして釜ヶ崎を伝える機会をもつということにも挑戦したいと思っています。」

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釜芸参加者のみなさんや、授業の受講生たちもおもいおもいに自己紹介を行いました。

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会の最後に、齋藤 陽道さんが、ご自身の作品の紹介と、それらの作品をどのように制作されているのかについて、お話されました。

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齋藤 陽道(Harumichi Saito)

1983年、東京都生まれ。写真家。都立石神井ろう学校卒業。
2010年、第33回キャノン写真新世紀優秀賞受賞。
2013年、ワタリウム美術館にて大規模個展「宝箱」を開催。
2015年、3331ArtsChiyoda で「なにものか」を開催。
主な写真集・著作に『感動』『宝箱』『写訳 春と修羅』など。
2018年、『声めぐり』『異なり記念日』を同時刊行
2018年、釜芸制作の『釜ヶ崎妖怪かるた』絵札の撮影者のひとりでもある。

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作品の美しさに目をうばわれる参加者のみなさん。

齋藤さんは話します。

「これらの作品は、私自身の感覚を表現したものです。自分の感覚で写真に生かすということを、今回はみなさんとやってみたいと思っています。ひとりひとりの感覚はもちろん違います。写真をとおして自分自身の感覚に気づく機会をつくっていけたらと思っています。

スナップ写真は、車椅子の目線から撮った写真、身長の高いひと、低いひと、それだけで大きく違います。一枚の写真からそのひとの視線の高さを感じ取ることができます。

釜ヶ崎は、ストリートスナップをするには良いところだと思います。いい緊張感があり、おもしろいひともいっぱいいます。なんというか、『密度が高い』場所だと思います。おもしろい写真がたくさん撮れるはずです。釜ヶ崎での緊張感と自分の感覚と融合させて、何か、自分自身も知らないような世界が見つかればいいなと思っています。」

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カマハンでは、齋藤さんを迎える準備として、いくつかのテーマ(釡芸の成り立ち、齋藤さんの写真、手話)についての講座を開きます。そしていよいよ10月の末から齋藤さんとともに街に出て釡ヶ崎で写真を撮ります。その体験のなかで自分の感情がどのように動いたのかを振り返り、語り合うプロセスを通じて、自分の表現の仕方を深めていきます。

最終成果発表の場として、2月28日より写真展を開催する予定です。

カマハン(協働術H)開催日程・内容

10月11日(金)14:00-16:00
「齋藤陽道さんという写真家について」講師:田中 均、会場:ココルーム

10月21日(月)14:00-16:00
「ココルームと釜ヶ崎芸術大学にであう」講師:上田 假奈代、会場:ココルーム

10月23日(水)14:00-16:00
「手話をまなぶ」講師:三田 宏美、会場:太子老人憩いの家

10月31日(木)、11月1日(金)、12月12日(木)、12月13日(金)、1月16日(木)、1月17日(金)、2月27日(木)14:00-16:00
「写真を撮る」、展覧会準備 講師:齋藤 陽道、会場:ココルーム

2月28日(金)14:00-16:00
「展覧会オープニング」会場:サイエンス・コモンズ スタジオB

これらの実践を通じて、表現の場づくりの可能性について探究すること、それがカマハンのねらいです。

本ウェブサイトでは、今後、2月28日から開催予定の展覧会についての告知やレポートの掲載も予定しています。


(書き手:森川 優子 COデザインセンター特任研究員)