大阪大学 COデザインセンター

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スペシャル授業レポート教員インタビュー
センター長インタビュー

池田 光穂 教授

知識は一生ものだから、学びは一生続いていく
2020年6月 2日(火) 投稿

大阪大学は、新型コロナウィルスへの対応として、春夏学期のすべての授業を原則メディア授業として実施しています。

COデザインセンターもここまで、様々な対応を行ってきました。

そんななか、2020年4月、池田 光穂 教授(文化人類学)がCOデザインセンター長に着任しました。2020年度は思いがけずこのような状況でのスタートとなりましたが、今、池田先生として感じておられることをお話しいただきました。


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<オンライン授業を行う池田先生。学生だけでなく、社会人や研究者も参加しています。>


- 池田先生ご自身が今感じておられることは、どのようなことですか?

私自身も今学期、メディア授業を実施しました。そこで実感したのは、メディア授業の利点です。対話型の授業において、学生たちがむしろのびのびとしゃべっている、遠慮なしにしゃべっている、ということが、私の授業でも起こっています。今までは時間があわなくて受講できなかったとか、自宅が遠方で参加できなかったという、参加したかったけれど参加できなかった人たちが参加できるということもあります。授業の受講人数が昨年度に比べて大幅に増えたのには、私自身も驚きました。

学生が物理的に登校を禁止されるという不可避的な状況が、先生たちをしてオルタナティヴな授業を工夫させるようになったと、私は現状を前向きに捉えています。今後、状況が落ち着いて学生がキャンパスに戻って来たとしても、この経験を活かしつつ対面授業とメディア授業を併用していくのが良い、と考えています。


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<「フィールドノート」を披露する池田先生。オンライン授業ならではの光景。>


- 池田先生ご自身がメディア授業を行うにあたり、意識しておられるのはどのようなことですか?

私の授業には、他大学の文化人類学系の研究者が参加することがあります。授業の合間に、自然発生的に私とその研究者との間で専門家トークが行われたりするのです。学生たちは、そのトークを、横で、というか、イヤホンで、なんとなく聴いている、という状況になります。専門家たちがいったい何を考えているのか、裏話も含めてさりげなく聴くことができるわけです。

こういった状況は、非常に文化人類学的だと思います。文化人類学のフィールドワークにおいて、研究者は現場に入っていき、そこで「君は何も知らないんだねぇ」などと現場の人たちに言われながら、様々なことを感じ取り、学んでいくわけです。医療の現場をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれませんね。部屋の中央で患者と医師が話をしている。それを取り巻いているのは助手たちで、そのさらに外側、部屋の隅には、医学生やそれ以外の人たちがいて、患者と医師の話に耳をすましている。徒弟制度ではそういった仕組みが今も機能していますし、我々の日常生活のなかにもそういう風に物事を学ぶ場面がありますね。一方、学校ではそういう経験はなかなかできません。私は学生たちが「現場に埋没して学ぶ」という経験をするのに、このようなメディア授業は良い機会なのではないか、という捉え方もしています。

授業では、私はまるで深夜ラジオのDJのように講義をしているのですよ。そういう意味では、受講生みんなが私を観察している、という風にも捉えることができます。たとえ私の話を漫然と聴いているようであっても、知らない間に、この人が言いたいことは何なのか、とか、この人は何をしようとしているのか、とか、そういうことを考えているはずなのです。

私は、「じわじわと」大学の外に出ていくような授業をしたい、と考えています。ここからここが大学、とはっきりとした線をひいてしまうのではなく、気がついたら授業を受けているのは大学の外だった、というような状態をつくりだしたい。大学の外の人も、なんだか気がついたら授業に参加してしまっていた、という状態が、学ぶ環境として良いのではないか、と考えています。

知識というものは「一生もの」なのだから、今だけ学ぶ、この時期だけ学ぶ、というものではないのです。学びは一生続いていくものであり、大学という場所にはいつでも入って来ることができるし、いつでも帰って来ることができる。そういう環境をつくることが大切だと考えています。

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<例年より多くの受講生が参加していました。>


- ウィズ・コロナ、ポスト・コロナに向けて、今後、重要になることはどのようなことでしょうか?

授業を行う人、授業を受ける人、そして、授業を管理する人の「倫理」が非常に重要になると思います。最低限これは守る、ここは大切にする、というものを整理しておく必要があります。そしてもし、そこからはみ出るようなことがあれば、いつでも相談できる体制づくりも必要でしょう。

メディア授業を経験したことで、かえってやりやすくなった人、モチベーションがあがった人が、必ず存在するはずです。それはどういう人たちなのか。どのような理由でそうなったのか。そのような経験を糧にして、ウィズコロナ、ポストコロナ時代を迎えるべきだと考えています。

以上