大阪大学 COデザインセンター

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スペシャル受講生インタビュー
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集中講義「身体表現術」

COデザインセンター開講科目<表現術> 〜触れあわない、踏み込まない、傷つけない、をゆるめてみる
2021年1月15日(金) 投稿

COデザインセンターでは多様な授業が開講されています。


その中のひとつである、2020年度 集中講義で展開された「身体表現術」(ほんま なほ COデザインセンター教授)。

シラバスには、以下のように書かれています。

〈表現術〉では、ことばと感性にまたがる多様な表現活動に参加することで、身体経験を培い、他者や環境との〈つながり〉を育み、それを新しいかたちとして創造することを学びます。身体表現術では、全身の感覚や環境とのつながりを意識した身体の可能性をみんなで探求します。

生身の体でのコミュニケーションに対して過度に慎重になり、出来るだけ触れあわない、踏み込まない存在のあり方が、知らない間にわたしたちの感性にしみついています。また、わたしたちは、頭では多文化、多様な考え方は理解しているが故に、理解できない人とは出来だけ接触を避ける、つまり接触することで傷つけたり、また傷ついてしまうことを避けるために軽くて薄い身体でいることを選択していないでしょうか?

アジアのダンス(舞踊)やコンテンポラリーダンスの手法をヒントにして、そうした身体の情況をみなおしてみましょう。高く飛んだり早く回転したりする身体能力の高さを競うのではなく、立ったり座ったりという日常動作や、風や葉擦れの音など身の回りの出来事を感じることのなかから立ち現れる動きや表現を味わってみましょう。

最後には、一人またはグループで、じぶんたちの選んだ場所で小さなダンスパフォーマンスをつくります。


<講師からのメッセージ>

佐久間 新

ジャワ舞踊家

「流行のダンスとは異なり、環境とコミュニケートとし、いろいろなものを受け容れ、味わうことのできるアジア的感性やコンテンポラリーダンスのおもしろさを味わってみましょう。からだを動かすことが苦手な方、うまく動かせない方も大歓迎です。」

佐久間さんのウェブサイトはこちらをご覧ください。

砂連尾 理

振付家・ダンサー

「様々な価値観が揺らいでいる現状で、今こそ我々一人一人が無意識に形作ってしまった自らのフレームの外側への跳躍が求められています。それを実践していくためにも見知らぬ場所を訪れ、そこで他者と対話し、自分とは異なる考え方を持った人達との協働やジャンルを横断する術、そんな新たな発想法を身体というメディアを軸に、その表現の歴史を学び思考と身体の往復しながら、皆さんの学術研究だけでなくこれからの社会生活にも役立つ授業になればと思います。」

砂連尾さんのウェブサイトはこちらをご覧ください。

いったい、どのような授業なのでしょうか。
今回は、受講生の鈴木 萌花 さん(文学研究科 博士前期課程1年)にお話を伺いました。

写真は、2020年9月23、24日に行われた授業のものです。

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みんなが同じ場所に集まって授業を受けると、コロナでひとと会う機会が減っていたこともあって余計に、人と人とが生身で向き合うことの意味をあらためて感じました。同じ場所に集まるからこそ得られるもの、感じられることがあるのだな、と実感した授業でした。

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授業のはじめに、自分の経験を共有する、というグループワークに取り組みました。私は、過去のつらかった経験を紙に書き、「その経験をした自分は、今の自分とまったく無縁だ」という意味を込めて、その紙をくしゃくしゃって丸めたんです。そしたらそれを見た佐久間先生が「そのくしゃくしゃっとした感じを、あなたの隣のひとに身体をつかって伝えてごらん」とおっしゃって。「どういうことだろう」と思いながら、「これは自分のつらい過去とそのときのつらかった自分。ああ、これはもう本当に忘れたい」って思いながら、手のひらでくしゃくしゃっとする動きをしたんです。

すると、佐久間先生が「じゃあ、鈴木さんの隣のひとは、またその隣のひとにそれを伝えてみて」とおっしゃったんです。円になって座っている隣のひとに、私の経験が身体の表現として伝えられていきました。順番に伝えていき、一周まわって、最後のひとが私に手のひらでくしゃくしゃって表現したとき、「あれっ、私は、確かにあのときの自分を忘れたいけれども、でももしかしたら、その自分を守っていたいのかな」って思ったんです。

私が手のひらでくしゃくしゃくしゃ、って表現したときは、「もうこんな経験は二度としたくない」という思いが強くて、怒りというか、「もうこんなの私じゃない」という気持ちの高ぶりがあったのですけれど、私の隣のひとが私に対してくしゃくしゃって表現したときには、「あのときの自分も、やっぱり私なんだな」ということを感じたんです。それはとても強く私のこころに残っています。

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このグループワークについて、私は最初、ものすごく難しいな、と感じていました。ひとが何かを経験したときに感じたことはそのひとしか分からないものなのに、それを自分が表現してもいいのか、という不安があったのです。でも、お互いに経験を聞きあっているうちに「ここはものすごく安全、安心な場所だ」と感じるようになりました。

自分の経験についても、他のひとによって「こういうこと?」と表現されるのを見たり聞いたりしているうちに、私が気にもしていなかった部分に注目するひとがいたりして、はっとさせられるときがありました。自分の経験に他のひとの視点が入ったり、他のひとの表現が入ったりするのはいいことなのだな、と思いました。

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私は今まで、自分の身体で何かを表現したり、表現している自分を感じてみたりということをしたことがありませんでした。どちらかというと頭で考えて、ああ、こうかな、と考えていたことが、実際に身体を動かして感じてみるとまた違う感覚になることに驚きました。本当に身体って不思議だな、と思いました。日常生活では、自分の身体がどう動いているかなんてそんなに気にしないので、自分の身体に目を向ける経験は、私にとってとても新鮮でした。

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ほかの受講生の方からも、さまざまな感想がありました。

「最初は、どう動くかが決まっていなくて、なんとなくモヤモヤしていたところもあったけど、音にあわせて思うまま動くというのもいいな、と思うようになりました。」

「相当楽しくて、熱中してたのか、今、手がちょっと痛いです(笑)。最初、自分の経験を紙をまるめることで表現したのですが、それを身体だけであらわしてみると、また感覚が違って、おもしろかったです。自分の経験とひとの経験をつないで詩をつくると、また違う経験になっていく、というのも印象的でした。」

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「みんなの経験を詩にしたのですが、詩に表現されているのは最小限のことで、本番ではこの詩からもっといろいろなものを表現していったらいいよ、と先生がおっしゃったのが印象的でした。詩の余白を自由につかう、という発想が新鮮でした。楽しかったです。」

「僕はもともと、すみっこでボソボソしゃべるタイプなんですけど、実際にダンスが始まってみたら、自分が主役だ!と思いました。感情移入して伝えられたのがよかったです。」

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「とにかく楽しかったです。いつもはふりつけが決まったものを踊るけど、リアルタイムで踊るのは初めてでした。いろいろやってみよう、と思って踊れました。」

「作っていく過程がすごく楽しかったです。まだ自分のカラから抜け出せない感じがあって、自由じゃない自分がいて、そこから抜け出したい自分をあらためて感じて、できそうな気がしました。」

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「自分の出した言葉がみんなに伝わる、という経験を新鮮に感じました。結構、はっちゃけて動けたのが、自分としてはよかったです。」

「みんなそれぞれ、考えていることが違うとは頭ではわかってるんだけど、普段の生活ではだいたいここ、と決まってる感じだと思っていました。でも、今回は、私が注目していた単語と全然ちがう単語に注目しているひとがいて、それが積み重なって踊れたのが良かったです。楽しかったです。」


COデザインセンターでは、他にもさまざまな表現のプログラムが用意されています。
興味のある方は、ぜひシラバスをご覧ください。

(書き手:森川優子 COデザインセンター特任研究員)

※所属、担当はインタビュー(2020年12月)時点のもの。