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スペシャル授業レポート
授業レポート

「フィールドプロジェクト」(2)

2022年1月18日(火) 投稿

「フィールドプロジェクト」(担当:山崎吾郎 COデザインセンター 教授、大谷洋介 COデザインセンター 准教授)は、超域イノベーション博士課程プログラム(以下、超域)が提供している授業です。今年度は、対面とオンラインのハイブリット形式の授業として行われ、超域生8名が参加しています。

2021年度の本授業は、以下のスケジュールですすめられています。
・10月1日 初回レクチャー
・11月12日 中間報告会
・11月26日 最終報告会

今年度の「フィールドプロジェクト」には、超域の卒業生でもある山脇 竹生 さん(2017年度卒、株式会社資生堂 ブランド価値開発研究所 原料開発グループ)が課題提供者として参加しています。10月1日に行われた初回レクチャー(レポートは、こちら)において山脇さんから提示されたテーマは以下のようなものでした。

化粧品市場ではアルコールフリー、シリコーンフリー、オイルフリー、グリセリンフリー、パラベンフリーといった「○○成分フリー」を謳った商品を目にするようになりました。しかし、これらの風潮がどういった背景から言われ始めたのか、どういった社会構造のもとで広がったのかは明らかになっていません。

なぜこのような議論が出てきているのか、ステークホルダーは誰なのか、企業としてどう働きかけるのが良いか、みなさんの考えを聞かせてください。

今回は、11月26日の最終報告会の様子をレポートします。

最終報告会には、授業を担当する山崎先生と大谷先生以外に、ゲスト講師として岸本 充生 社会技術共創研究センター(ELSIセンター)長/教授 と、井出 和希感染症総合教育研究拠点(CiDER)特任准教授/ELSIセンター兼担 も参加しました。

社会技術共創研究センター(ELSIセンター)ウェブページ
感染症総合教育研究拠点(CiDER)ウェブページ

受講生たちは、2つのチームに分かれ、約二ヶ月間をかけて議論を重ねてきました。

最初に発表するのは、テーマとして「ヴィーガン」を取りあげたチームです。

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ヴィーガンの定義は「食用や衣料用などの目的での動物の搾取や動物に対する残虐行為を可能な限り排除し、動物を使用しない代替手段の開発と使用を促進する哲学・生活様式」。本チームは、大手百貨店等で化粧品の販売方法について現地調査を行い、ヴィーガン化粧品が日本でどのような状況にあるのかについてまとめました。

調査によると、日本の化粧品市場ではヴィーガンを押し出した販売はあまりなされておらず、製品の原材料やそれに対する動物実験の有無よりも製品の効果に重点が置かれた販売方法がとられているとのこと。 一方、日本でヴィーガン製品は増加傾向であることも報告されました。

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その上で、このチームは、ヴィーガンという考え方に含まれる「多様性」について説明を行いました。ヴィーガンを「厳格なヴィーガン」「動物愛護意識の高いヴィーガン」「著名人の影響を受けているヴィーガン」「ナチュラル志向のヴィーガン」の4種類に分類し、今後の化粧品市場でどの層にどのようにアプローチするべきかについて、チームの意見を述べました。

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山脇さんや、ゲスト講師の先生方、山崎先生、大谷先生からさまざまな質問がありました。

「資生堂がヴィーガン化粧品を開発・販売することで、業界全体にどのような影響があると考えるか。」

「企業としてヴィーガンにアプローチする製品に取り組むことが、どのくらい顧客のためになるのか。」

チームのメンバーは、それらの質問にひとつひとつ丁寧にこたえていました。

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続いて、二つ目のチームが発表を行いました。このチームは、「オーガニック」をテーマとして取り上げました。

オーガニックコスメについては、様々な団体が独自の基準を定めており、「農薬を使わず、品種改良もされていない、有機栽培で育てられた植物成分を主成分としたコスメ」という点で共通しているとのこと。もともとは原材料によってオーガニックか否かを定めていたのが、近年では他の概念が含まれることも多くなっているそうです。本チームは、現状として「オーガニックコスメならなんとなく体に良さそう」という漠然としたイメージが消費者の間に広まっている、と指摘しました。

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次に、オーガニックコスメとその関連分野の歴史について報告がありました。1900年代前半に石油由来の化粧品が登場したのにともない、石油由来の化粧品よる健康被害がおこったこと。同じ頃、工業化に伴う公害問題の世界的な広がりとともに、科学(化学)に対する懐疑的な主張がみられ、それが「自然への回帰」を求める運動につながったこと。2000年前後にはコスメにもその流れが押し寄せ、各地で様々な認証団体ができるとともに、オーガニックコスメの市場が拡大していったこと、などをまとめました。

チームとして、これらの現状分析と未来予測を踏まえ、同業他社や国、行政をまきこんで対応すること、商品成分に関する情報の積極的公開を行うことなどを提案しました。

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チームの報告のあとは、質疑にとどまらず、

「そもそも、化粧とは、ひとびとにとってどのような意味を持つものなのか。」

「ヴィーガンやオーガニックだけでなく、今後出てくると予測される様々なものの考え方やその多様性に対し、化粧品業界全体としてどのように取り組むべきなのか。また、国や行政、社会一般のひとびとに対して何をどのように訴えかけていくのが良いのか。」

というところまで話がおよび、活発なディスカッションに発展していきました。

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最後に、岸本先生と井出先生に、授業の講評をしていただきました。

岸本先生
 「2週間前の中間発表にも参加しましたが、その時の発表内容からがらっと変えてきたことに驚きました。中間発表のままだったら厳しいツッコミを入れようと思って参加したのですが、その必要はありませんでした。
 学生たち自身は意識していないかもしれませんが、学生たちの発表の一言一言が、課題提供者の側の重要な気づきにつながっているのではないでしょうか。本プロジェクトの課題提供者は『クライアント』という位置付けではないのですよね。課題提供者と学生たちがお互いに『対等な立場』だという前提で本プロジェクトに取り組むことに価値があると思いました。」


井出先生
 「2つのチームそれぞれが異なるテーマに取り組んでいたにも関わらず、それでもスタンスの違いがはっきりとあらわれていたのが印象的でした。例えば、(オーガニック製品やヴィーガン製品の)認証制度について、認証を与える側になるのか、認証を申請する側になるのか、両チームの考え方が異なっていたのが非常に興味深かったです。」

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受講生たちにとっては、超域プログラムのなかでここまでに獲得してきたさまざまなスキルを「実践的に使う」機会でもあったこの授業。さまざまな学びがあったに違いありません。彼らは、さらに「超域イノベーション総合」などの授業で学びを深めていくことになります。(2021年度「超域イノベーション総合」の授業レポートは、こちら

超域生の今後の成長に期待したいと思います。

(書き手:森川優子 COデザインセンター特任研究員)