はじめに かならずよんでください

人類学 

じんるいがく anthropology

解説:池田光穂

人間を研究する学問。人類(ギリシャ語でanthropos)と学問(同じくlogos)の 合成語がこの言語である。人類学が現在の学問の体勢として出発する以前から、この用語は〈人間学〉という用語と学問(=哲学)で呼ばれていたが、人類学と は別物であり、また直接の先祖というわけではない。

人間の学問(=anthropos+logos)だけあって守備範囲は広く、また専門の人類 学者も若い時には全体を包括できるような視座を展開できず、また長老は最新の展開をフォローできないので、書物でなされる人類学の定義は常に古くて時代お くれのものになっている。今も昔も変わらない定義が、語源にもとづく<人間についての学問>ということに落ち着く。

【四分類人類学】よんぶんるいじんるいがく

北アメリカでいう文化人類学の 領域(1)には、1.先史考古学、2.言語学(副分野である言語人類学のほうがより適切だろう)、3.自然人類学(これが本家の「人類学」と主張する自然人類学 者もいる)、そして4.民族学(ethnology)ないしは文化人類学が 含まれる(1)。これが、人類学の4分類と言われるものである。4分類の人類学(あるいは総合人類学:general anthropology)は、人間の科学としての人類学を知る上では、とても重要な意義を持っている [→人類学のすすめ:四分類人類学とは?

人類学の守備範囲は、その学問がどの国で発達してきたかによって微妙に異なり、民族学民俗 学文化研究、比較文明学などさまざまな類義語がある。日本では、人類学というと自然人類学と文化人類学の2つの領域をさすことが一般的である。前者には 日本人類学会、後者には日本文化人類学会という学会がある。言語人類学系の研究者が後者の研究領域に参画することもあるが、考古学は歴史研究に属している ことがおおい[→日本文化人類学小史]。

かつて流行った〈異文化についての 学問〉という定義も、人類学者の多くは自分の属する社会や 文化の研究もおこなっており、また異文化を自文化と切り離して操作可能なものであるという前提もおかしい。異文化について洗練された議論をおこなう人類学 者の書き物を読めばそれはほとんど自文化について鋭く問うたものになっているからだ。

他方で、現代的な意味で、形容詞のない 人類学には、上掲の「自然人類学」をもって人類学と理解する向きもある。日本では、とりわ け、人類学と呼ぶと自然人類学、民族学(民俗学を含む)は、文化人類学と呼ぶ傾向が強 い。

(1)このご本家の米国の人類学は次第に自然人類学離れがはじまり、人文科学化という傾向が強ま りつつある。

しかし米国でanthropology と言えば、いわゆる文化人類学のことである。しかし上記に触れたように4分類の人類学(総合人類学)は、人間の科学としての人類学を知る上では、とても重要な意義を持っている[→人類学のすすめ:四分類人類学とは?]。他方、日本では、自然人類学の研究者が早くから「人類学会」の名前 を名乗っていたので——ドイツ流の人類学と民族学の区分にもとづくという歴史的 理由もある——米国と日本とは状況が全く異なる。このような歴史的背景を押さえずして、どちらが本家の人類学であると偉そうには語れない。

● 現代の標準的な教科書の章立ての紹介(Molnar, Stephen. Human Variation: Races, Typesm and Ethnic Group. 6th ed., Prentice Hall. 2006.)

1. 生物学的多様性と人種の概念

2. 人間の多様性のための生物学的基 礎

3. シンプルな遺伝的形質について (1):血液型のグループとタンパク質

4. シンプルな遺伝的形質について(2):ヘモグロビンの多様性とDNAマーカー

5. 複雑な遺伝形質とその適応(1)

6. 複雑な遺伝形質とその適応(2)

7. 人間の変異性、行動、人種主義 (レイシズム)

8. 人間の生物多様性の分布

9. 健康の諸相と人間の多様性:人種 概念の影響

10. 人間の種の変貌する次元

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