はじめにかならずよんでください

多文化共生社会とプライマリヘルスケア:比較文化論の視点から

Multicultural Symbiotic Societies and Primary Health Care: A comparative perspectivism

解説:池田光穂

多文化共生社会とは、私の定義によると「複数の他 者の民族、他者の文化の相互承認と共存が可能になっている社会の状態のことである」(出典:多文化共生社会)。本来ならば、複数の民族が同じ時空間に存在することなどは 普通にあるはずなのだが「共生」という肯定的な意味を付与しようとするのは、人間集団はしばしば「敵」と「味方」の差異を無からつくりあげるほとほと困っ た存在なのだろう。長野県も他の自治体と同様に多文化が共存する状態になっている。これは可視化されやすい「外国人」の存在に影響を受けているが、他者の 言語や文化を理解することが共存には欠かせないという意識の誕生は、同時に、同一文化内においても長野社会の固有性のみならずより小さな文化的共同体であ る地域社会のかけがえのなさやそれらの差異について敬意を抱くという態度を生みつつある。

では、長野県佐久におけるプライマリヘルスケア (PHC)と聞けば誰もが思い浮かべるのが現在の佐久総合病院と若 月俊一(1910-2006)らの存在である。名著『村で病気とたたかう』(1971)を紐解けば、アルマアタ宣言(1978)などが生まれるは るか以前から、佐久は「骨の髄まで」社会医学をこれまで実践してきたメッカであることがよくわかる。住民のもとに赴き、住民と共に話し行動し、そして演劇 を通して住民を近代的な主体として啓蒙・育成するという佐久病院の人びとのこれまでの輝かしい活動の歴史は、佐久の経験に比べれば千分の一にも及ばないが 不肖私の1985-87年当時の中米ホンジュラスの農村での同国政府のPHC活動の経験に完全に重なる(拙著『実践の医療人類学』2001年)。私は会場 の皆様にこの分野の実践について有益なアドバイスや提言をできるほどの知見を持ち合わせてはいないだろうが、時空間を異にしながらPHCの夢を追い続けた 同胞(同僚)としての私見を開陳できれば、何らかのお役に立てるだろうと思う。

クレジット

第30回日本国際保健医療学会東日本地方会分科 会、2015年06月20日(土)13時〜14時30分「多文化共生とプライマリヘルスケア」座長:佐久大学 准教授 宮崎 紀枝 氏

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参照文献


他山の石(=ターザンの新石器)

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