J.C. マクローリン『イヌ:どのようにして人間の友になったのか』ノート
The canine clan : a new look at man's
best friend.McLoughlin, John C., Viking Press, 1983
J.C. マクローリン『イヌ:どのようにして人間の友になったのか』岩波書店,1984(The canine clan : a new look at man's best friend.McLoughlin, John C., Viking Press, 1983)の読書ノート
章立て
内容ノート
0.はじめに、謝辞
1.ほ乳動物とは何か
2.イヌの祖先になった肉食類
3.肉食のほ乳動物たちの世界
4.イヌの起源
5.詐欺師レイナードとキツネたち
6.狩りをする野生イヌ
7.イヌ
8.人に飼われたイヌ
9.いろいろな犬種の生い立ち
10.大型のイヌ:マスチフ
11.小型のイヌと矮小なイヌ
12.人間社会のなかのイヌ
13.訳者(澤崎坦)あとがき
14.付録:現存するイヌの仲間の属と種
15.索引
■内容ノートやメモ(本書とは関係のないものも含まれ る)
・狼は、先発肉食者(狩猟者)、人間は後発肉食者(後発狩猟者)
・狼と人間の間は、対象とする犠牲獣のサイズと個体数により、共存関係が、後の人間の人口の増加と狩猟効率の増加により、ライバルになる。
・E.O.ウィルソン『社会生物学』に犬の言及は?
・犬のDNA分布と、人のDNA分布はほぼ重なる(=人間と犬の間の親密な種間共存関係の証左)
・convergent dog behaviour complex, p.252 (ミクロシ 2014:252)
・Scott and Fuller (1965) :人間と犬の間の行動現象の収斂がみられる。
・犬と他のほ乳類が分岐したのは、約2憶年前
・人間とチンパンジーの祖先が分かれた(分岐した)のは、600万年前
・犬と狼の分岐点は、5万年前から2万5千年前
・以上の記述は、イヌの動物行動学 : 行動、進化、認知 / アダム・ミクロシ [著] ; 森貴久 [ほか] 訳,東海大学出版部 , 2014:Dog behaviour, evolution, and cognition,Ádám Miklósi,Oxford University Press 2015 2nd ed.にもよる。
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・「イヌの家畜化は狩猟の場で人とイヌとが同盟関係を結んだことに始まる」(マクローリン 1984:xvi)
・「相互に利益を得るという共同生活形態が定着するようになる」(マクローリン 1984:xvi)
・イヌは、自分よりも弱い動物にいじめられても喜んでいる動物(マクローリン 1984:viii)
・Canis familialis 家畜化された、人に飼われた
・人為的淘汰圧(5万年〜2万5千年前):
・ショロ犬:家畜→ペット→友(→「独自なるものとしてのショロイツクイントゥリ」)
・マクローリン・テーゼ01:「人間と犬の共通性はその同盟関係による」(マクローリン 1984:ix)
・相補的な同盟関係
・【マクローリンの思考実験】:人間の瑕疵により、地球上から動物が全滅したら人間は孤独感に苛まれるだろう。最後の人間以外の動物は? それは「犬」である。その理由は、犬は人間と一緒に暮らしていけるから。(マクローリン 1984:xi)
・このマクローリンの思考実験は、ダナ・ハラウェイの主張をきちんと先取りしhた主張。
・なぜ、犬は、チンパンジーよりも、なぜ先に宇宙に到達したか? ライカ犬(マクローリン 1984:xi)
・ただし、ウィキペディアの記事「ライカ(犬)」によると、おそらく雑種犬ライカ(=彼女の名前)はストレスや熱により「打ち上げの4日後に死んでいた」等の情報が、1999年当時では明らかになった。
「1957年11月3日、ライカを乗せたソ連のス
プートニク2号はバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、地球軌道に到達した。それ以前にも米ソが動物を宇宙に送り出していたが、弾道飛行のみで軌道を周
回するまでは至っていなかった(宇宙に行った動物を参照)……/1999年の複数のロシア政府筋の情報によると、「ライカはキャビンの欠陥による過熱で、
打ち上げの4日後に死んでいた」という。さらに2002年10月、スプートニク2号の計画にかかわったディミトリ・マラシェンコフは、ライカは打ち上げ数
時間後に過熱とストレスにより死んでいた、と論文で発表した。ライカに取り付けられたセンサーは、打ち上げ時に脈拍数が安静時の3倍にまで上昇したことを
示した。無重力状態になった後に脈拍数は減少するも、地上実験時の3倍の時間を要しストレスを受けている兆候が見られた。この間、断熱材の一部損傷のた
め、船内の気温は摂氏15度から41度に上昇し、飛行開始のおよそ5 -
7時間後以降、ライカが生きている気配は送られてこなくなったという。結論としては“正確なところはわからない”ということである」ライカ(犬))https://goo.gl/HSFtxQ および「宇宙に行った動物」ウィキ)
・排泄問題から雌の犬で、彼女が選ばれたのは「ライカの性格は粘着質であった。飼育室の中にいても、同僚犬たちと争ったことがなかった」(『スプートニク』ソ連の人工衛星のすべて、ソ連文化省編、朝日新聞社訳、朝日新聞社、1958年、p.140)。
・犬と一緒にいると人間(老人)のストレスが軽減して寿命が伸びることがいわれている。(マクローリン 1984:xi)
・逆説的な表現だが、犬は「人間よりも人間らしい」(マクローリン 1984:xii)。
・犬=人間説。犬も人間も相互に仲間とみなす説がある(マクローリン 1984:xii)。
・犬の名称、命名関係。
・「ルーファス」=マクローリンが飼っている犬の名前
・装飾的肉食動物(マクローリン 1984:xv)。
・ほ乳類の起源:2憶年、霊長目と食肉目が分岐した のが6000万年前。人間とチンパンジーが分岐するのが600万年。狼と犬が分岐するのが、5万〜2.5万年前。この場合の、人間とチンパンジーの類似関 係/犬と狼の類似関係は「相同」といい、人間と犬の類似関係は、「収斂(しゅうれん)」という。(ミクロシ 2014:252)
・犬を考えることは、ほ乳動物の進化の歴史について考えることだ。
・犬の進化を考えるためには、中生代にほ乳類の祖先 が生まれて、それらが、肉食恐竜の被食者であったことを想起することが重要である(p.15)。そのため、嗅覚と聴覚(フェレックの耳, p.12)が発達。脳の構造に影響(p.9)、知的行動というものが形成される。嗅覚の発達は、前脳の中枢に影響を与える。
・犬の貧弱な色彩の理由、中生代の夜間生活の名残り。その能力を補償する嗅覚能力(p.13)。鼻が長い(感覚上皮を広くとれる)p.54. 人間の嗅覚の15倍の能力(p.52)。鼻の長さは、パンティングの際に、脳への血流を冷やす作用がある(p.52)。
・被食者として逃げ惑うことの進化的意味→危険回避の本能の陶冶。ほ乳類の知性は、恐竜のおかげ(p.15)。他方で空中を飛翔する能力(鳥類への進化)
・食肉目の歯式(p.19)
・ G.G. Simpson: 食肉目——(亜目)肉歯類
・クマ→犬の強力化の進化の事例:クマ=「森のイヌ」(p.49):クマはベタ足
・初期のイヌ→逃げまどうことで進化的な利点をえる→趾行(しこう)性=つま先で歩く。早く走れることは、後に、イヌが(クマとは異なる経路で)タフになったときに、集団で長く追いつめて(p.49)捕食する時に、役立つことになる。
・趾行性=つま先で歩く。足首より先が進化する。足の甲が長くなる。爪は鈍感になり(獲物を捕まえるには不利に)(マクローリン 1984:49)。
・イヌの狩猟は、タフな走力で獲物を追いつめる(マクローリン 1984:49)。
・パンティング=口を開けて舌をだらりとして、ハアハアする、気道より熱を放散する(呼吸とは無関係なので、じっとしているときも体温が高ければパンティングすることがある)(マクローリン 1984:50)。
・イヌのフェロモン器官(マクローリン 1984:52)。
・イソップの285タイトルのうち29タイトルはキツネの話。
・トリックスターとしての動物:キツネ=詐欺師、サル(インド)、カラス(北米)、コヨーテ(アメリカ南西部)、
・レナード、レニャード=アカギツネ=Vulpes vulpes :
・キツネのラインハルト(中世ドイツ)、レナールのロマン(おとぎ話)。
・キツネのオスは「ドッグ」、メスは「ヴィクセン」(マクローリン 1984:70)。
・スイフト Vulpes velox すばやいキツネ(マクローリン 1984:74)。
・フェネック(北アフリカ)Fennecus zerda, pp.76-77.
・ヤブイヌ(アマゾン)Speothos venaticus, 歯式は1/2 38本、完全に肉食化(マクローリン 1984:82)。
・レナード(アカギツネ)の賢さ(マクローリン 1984:83)。
・集団狩猟法は、大型の獲物には有利な方法マクローリン 1984:88-89)。(→狼の狩猟法)
・人間は、霊長類のなかで唯一の集団狩猟動物か?(マクローリン 1984:92)——チンパンジーの狩猟は機会主義的という指摘(テレキやグドール)と計画的という指摘がなかったか?
・ハンティング・ドッグは3種に(マクローリン 1984:82)。
・ケープハンティング・ドッグ(マクローリン 1984:93)。
・大型家犬は300キログラム=600ポンドの(噛む?)力がある。(マクローリン 1984:94)。
・コヨーテ(北米)Canis latrans 吠える犬(マクローリン 1984:104)。
・コヨーテ=特殊化した犬。群れでハンティング、狼に比べて絶滅しにくかった。狼の絶滅の後は、コヨーテがnicheを占める(マクローリン 1984:106)。
・カナダ・コヨーテは狼と交配し、大型化した(マクローリン 1984:107)。
・コヨーテ=犬=オオカミの《連続体》(ミクロシ 2014:72)で修正のこと。/ Canis canis lupus, C.c. familiaris, C.c. latrans
・犬の一夫一妻制は強固(マクローリン 1984:109)。
・ジャッカルは100万年程前には、腐肉掃除屋。これが狂犬病ウイルス (Rabies virus)を得るきっかけ?——ラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルス (Rabies virus) https://goo.gl/zcwC1Y
・オオカミ=イヌの連続性がもっとも強い(マクローリン 1984:114)。
・イヌの誕生、北ユーラシア起源(マクローリン 1984:115)。※これ以外に起源説はあるのか?
・ヒト—マンモス、オオカミ—草食大型ほ乳類 これらは、当初は非競合的な関係でなかった(マクローリン 1984:115)。
・人間の人口増により、マンモスが激減、ヒトが、オオカミがハンティングしていた食大型ほ乳類を狙うようになり、ヒトとオオカミが競合関係に
・同時に、人間とオオカミを同一化する神話や民話が多くみられるようになる(マクローリン 1984:119-121)→リカントロピーLicantropie(マクローリン 1984:121)。
"Trois Têtes Ressemblant Au Loup." (Gravure de Charles Le Brun.) https://goo.gl/oGuVWq
・さらに、野生草食獣の家畜化で、ヒト—オオカミの関係が悪化(マクローリン 1984:120)。
・リカントロピーLicantropie(マクローリン 1984:121)つまり、ヒト=オオカミ神話、古代ローマ起源
「ロームルス (Romulus) とレムス (Remus) は、ローマの建国神話に登場する双子の兄弟で、ローマの建設者。 ローマ市は紀元前753年4月21日にこの双子の兄弟によって建設されたと伝えられている」ウィキ)
・狼男(マクローリン 1984:122)。
・オオカミのイヌ化(マクローリン 1984:127)。——オオカミとイヌの弁別特徴など
・オオカミとイヌの決定的違い(マクローリン 1984:133)。
・Canis dingo のユニーク性(マクローリン 1984:134-)。
・Canis lupus pallipes=白い足のオオカミ(マクローリン 1984:120)。
・アメリカの大陸のイヌたち(マクローリン 1984:139)は、およそ20種。——これはデスモンド・モリスの犬事典で、再確認のこと。コヨーテの血の混交のこと。
・イヌの家畜化(マクローリン 1984:140)。
・オオカミの家畜化(マクローリン 1984:140-141)。
・人間とイヌの共同生活によりイヌの多様な分化が促進される(マクローリン 1984:141)。
・毛色の遺伝子:A, as, ay, aw, at, ee (マクローリン 1984:143)。
・犬種についてのマクローリンの解説には、ほとんど注記を入れていないが、2〜3章分割いている。
・ショロ犬関係(マクローリン 1984:182-)——ショロ犬などは小型だが、ナポレオン・コンプレックスという遺伝型により、どう猛な性格をもち、狩猟にも使えるといいうことだ(マクローリン 1984:182)。
・コリマ犬に関する情報(マクローリン 1984:183)。
・小型犬のこと(マクローリン 1984:184-)。小型犬はアステカを除いて、愛玩用に使われる。
・(私のコメント)ショロ犬を肉をとるだけにつかっていたら、チャウチャウ(マクローリン 1984:206)のように大型化するのが想像可能なのだが、アステカの人たちはそのようには育種しなかった。
・調理法や、中国共産党によるイヌ肉の接待への気配りなど(マクローリン 1984:182)。
リンク
文献
その他の情報
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