はじめによんでね

03: 文 化人類学ガイドブック

Introducing Anthropology: A Graphic Guide

Mitzub'ixi Qu'q Ch'ij


1
人類学とはなにか?
1.    人類学とは何か?

2
「未開」とはなにか?(括弧でくくってい るところが味噌!)
2.    〈未開〉とは何か?

3
人間を研究する
3.    人びとを研究する


4
人類学のビッグな問題!
4.    人類学の大きな課題 


5
他者(別名「大文字の他者」)
5.    他者


6
変化する問題
6.    変化する課題


7
人類学の起源
7.    人類学の起源


8
創設者たち(父なる創設者たち:The Founding Fathers)
8.    建学の父たち


9
隠された項目(要するに啓蒙主義的系譜の ことです)
9.    隠された項目


10
ルネサンス期(前項を引き継いで)
10.    リコナサンス(大航海)時代


11
「古きものへの忠誠」 ("Fidelity to the Old")
11.    〈古き時代への忠誠〉


12
人権の問題
12.    人権という問い


13
イエズス会関連文書
13.    『イエズス会リレーションズ』


14
西洋思想の主潮
14.    西洋思考の主潮


15
伝統の連続性
15.    伝統の連続性


16
派生したマイナーな風潮
16.    派生したマイナーな風潮


17
帝国主義
17.    帝国主義


18
人類学の複雑性
18.    人類学の加担


19
倫理の違反
19.    倫理の冒涜


20
ルーツに戻ると・・
20.    ルーツへの回帰


21
必要不可欠な未開
21.    必要不可欠な未開性


22
発明創発/でっち上げを思い描いて
22.    創造についての推論


23
何が最初に人類に到来したか?
23.    何が最初にあったのか?


24
生きている残存物=遺風(Living Relics)
24.    現存する遺風


25
肘掛け椅子からの眺め
25.    肘掛け椅子からの眺め


26
進化主義の諸理論
26.    進化主義の諸理論


27
生物なるものと社会なるものを統合する
27.    生物学的理論と社会的理論の統合


28
伝播主義の理論
28.    伝播主義理論


29
人種の詐欺(The Race Spindle, 人種という名の詐欺、てな意味で しょうか?)
29.    人種というペテン


30
フィールド研究
30.    フィールド研究


31
人類学の樹
31.    人類学の樹


32
自然人類学(Physicalであって Naturalぢゃないよ〜)
32.    形質人類学


33
多元発生説《対》単元発生説
33.    多元発生説vs単一起源説


34
人間生態学と遺伝学
34.    人間生態学と遺伝学


35
社会生物学の隆盛
35.    社会生物学の隆盛


36
遺伝子理論における人種の再焦点化
36.    遺伝子理論のなかで再焦点化される人種


37
初期の人類学との別の関連性(リンク)
37.    初期人類学との他のつながり


38
考古学と物質文化
38.    考古学と物質文化


39
人類学的言語学
39.    人類学的言語学


40
社会/文化人類学
40.    社会/文化人類学
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

41
文化とは何か?
41.    文化とは何か?
41. 文化とは何か?

アメリカ合衆国の文化人類学とイギリスの社会人類学との主なちがいは、人類学者の研究対象である「全体」としての文化に焦点を当てているのか、あるいは文 化がそのなかではたらく「全体」としての社会、その構造や組織に焦点を当てているのかの違いである。大西洋の両側で、文化についての莫大な定義が存在す る。1952年にアメリカ合衆国の優れた人類学者アルフレッド.L.クローバー(1876-1960)とクライド・クラックホーン(1905-60)が (それまでの学者が使ってきた)100を超える定義を引用している。

【台詞】学者(人類学者)(E.B.タイラー著『未開文化』を開きながら)「とはいえ、すべての人類学者に馴染み深いのは、『未開文化』(1871)のな かでのE.B.タイラーによるものは、正典となる定義であろうな」

【台詞】エドワード=バーネット・タイラー卿「文化とは、人が社会の構成員として獲得する知識、信念、芸術、法、道徳、慣習、あらゆる能力や習慣を含む、 すべての複合的全体なのである

タイラーにとって、文化は単数形の用語である。つまり文化は、単純なものから複雑なものへという進化論的進歩において、すべての人間社会がそのなかで発展 する領域であった。

専門的職業学問としての現代人類学は、複数形の文化(それぞれの独自の言葉で、理解されなければならない複数形の生のあり方)という思考から始める。

【台詞】アナザシ「今日、文化という概念は、ヘンリエッタ・ムーア(1957-)がそう言うように…」

【台詞】ヘンリエッタ・ムーア「権力のフィールドのなかにある、異議を唱えられる表象と抵抗からなる一連の場所ね」

アメリカ合衆国の人類学者ロイ・ワグナーは、「文化の核は……精神から精神へと直接的に伝達することはできないが、引き出され、輪郭を示し、描写すること はできる心象と類似性の、首尾一貫した流れである」と主張する。さらに、文化的意味は、集合的な表象の不変的システムであるというよりもむしろ、「絶えず 続く、絶え間ない再=創造からなる流れの中に生きている」という。

・文化の定義にまつわる役に立つ知識のティプス

1)文化人類学者の文化の定義は、E.B.タイラーのもの(左参照)が使われやすいです。しかし、タイラーそのものは人類学の創始者の一人だがその学説は 進化主義人類学というパラダイムでもはや時代遅れと言われることが多い。つまり、文化の定義だけが残り、他のタイラーの学問上の貢献は軽んじられる傾向が あります(また、そのような理由も明確です)

2)文化の語源は、17世紀ぐらいにラテン語から導入された「栽培」「つくりあげるもの」ですが、啓蒙思想の陶冶(とうや)の概念とよく似ており、タイラーも文化相対主義的に、その思想を引き継いでいる可能性があります。

3)文化を区分する専門家の間には、人類文化の共通普遍性を強調する単数形の文化(culture)と、複数形の文化(cultures)の文化を使い分 けるやり方があります。後者の複数形の概念は、多文化主義(multiculturalism)という政治思潮のなかに息づいています。

4)文化を含めて「ある概念の使用には、その言語にまつわる政治権力的ニュアンスを脱色することができない=政治権力な意味を考えざるをえない」という、ヘンリエッタ・ムーアの主張に類似するものが、文化以外にあるでしょうか? あれば具体的にあげて論じてください。
42
専門領域への細分化 (Increasing Specialization)
42.    専門領域の増加
42. 専門領域の増加

(なんでもかんでも記してしまう)文化の特徴についてのタイラーの「買い物リスト」は、社会人類学あるいは文化人類学のもとに集められた専門下位領域につ いて説明する時には今でも役に立つ;つまり社会組織、経済人類学、政治人類学、芸術人類学、宗教、法、親族研究などが入っているからだ。

【台詞】アナザシ「ここ10年間にハイフン=連辞符付きの人類学(□□人類学のような細かい分野)が激増したのさ」

まずは、応用人類学、行動人類学、認知人類学、批判人類学、開発人類学——それにフェミニスト人類学、マルクス主義人類学、医療人類学を経由して——象徴 人類学、ビジュアル人類学までという具合にである。これらの境界は、下位の分野、トピック、あるいは理論的なものとして区分けされる。

なになに人類学とは?
・私の本業の医療人類学をはじめ、文化人類学という大きな分野には、しばしば「何々(なになに)」人類学と形容する下位分野があります。多くの西 欧語では、形容詞が人類学を修飾し、日本語では名詞の形容詞的用法で人類学という学問の領域について限定をしています。これらを、ハイ フンつき人類学あるいは連辞符人類学というふうにも表現するすることができます。
・「[なになに]人類学入門」の他に、まだなにか追加する「なになに人類学」はあるでしょうか?——ぜひご提案ください。
・ただし、文化人類学をもじった文化麺類学は、除きます ww

43
民族誌の岩盤=基盤
43.    民族誌(エスノグラフィ)の根幹
43. エスノグラフィーの根底にあるもの

文字どおり文化を書くことつまりエスノグラフィー(民族誌)は、すべての社会人類学/文化人類学の基本的な実践であり、そこにはフィールドワークと、真偽 のほどは保証できないが「客観的で科学的な観察」が含まれている。エスノグラフィーは、人類学に対して生(なま)の研究素材を提供する。それこそが人類学 の存在理由であり、この学問の主要な概念的かつ方法論的に自慢できる「参与観察」なのである。それは、文化比較、一般化、そして人類学理論の根底にあるも のなのだ。

【台詞】学者(人類学者)「もし人類学がその歴史と実践から上手に定義されるのなら、いずれもエスノグラフィーに要約されるのじゃろうな」

【台詞】アナザシ「要するに、人類学者どもは、どこかに出かけ、そこに居ることが、単に好きなだけなのさ」

エスノグラフィーを定義しましょう。
エスノグラファーを定義しましょう。
44
異国人を書く(Writing the Exotic)
44.    エキゾチックを書く
44. エキゾチックなもの※を書く

特定の地域やそこに暮らす住民についてのエスノグラフィーは、人類学でのより下位のあるい細かい専門化された領域とされている。メラネシア、西アフリカ、 オーストラリアのアボリジニ、アマゾンの先住民がよく知られている。「エキゾチックな」人びとについて書くことは、人類学の一種の言葉をつくったともいえ る。エスノグラフィーのかたち、内容、問いや関心は、人類学における長年の論争と変化を記録するものとも言える。

【台詞】アナザシ「古い民族誌が、自然に消えてなくなることはないよね。それらは思い出され、他の人類学者の思考と行動を豊かにするのさ」

エスノグラフィーの重要性は、現代人類学の2人のお偉方、すなわちフランツ・ボアズとブロニスロー・マリノフスキーの両名より強調されたとも言える。


※訳注:エキゾチックは「異郷趣味」とも訳されて、自分たちの文化と異なる外国の風物や人間に興味をもつこと、それ自体のことをさす。ここでは形容詞のエ キゾチックが定冠詞のtheを伴って「エキゾチックなもの」という意味である。エキゾチズムは文化人類学者がフィールドに出かけるための原動力だったが、 なぜ自分がそこに行けて、相手が我々の国にやってこない/これないのかということに無反省である。そのため1970年代以降の人類学の中ではこの「異郷趣 味」は批判にさらされている。

・エキゾチックはかつては「異郷趣味」と呼ばれていました。

・他者をエキゾチックな対象「だけ」にしてしまうことに、どのような社会的弊害があるでしょうか?

フランツ・ボアズについて調べましょう(復習と復習)

ブロニスロー(ブロニスラフ)・マリノフスキーついて調べましょう(復習と復習)
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フランツ・ボアズ
45.    フランツ・ボアズ 
45. フランツ・ボアズ

アメリカ人類学の創始者フランツ・ボアズ(1858-1941)は、ドイツのミンデンに生まれ、最初は物理学と地理学を学んだ。1883年に彼はバフィン 島への探検旅行に参加し、イヌイット※(かつてのエスキモー)のなかでフィールドワークを開始した。

【台詞】フランツ・ボアズ「3年後、私はブリティシュコロンビアのクワキウトルについての調査を始めたのだ」

1896年にボアズはニューヨーク州のコロンビア大学に関わり、3年後の1899年に同大学の最初の人類学教授となった。その後37年間にわたって彼はこ の職を務めることとなった。ボアズは、アメリカの次の世代の人類学者の大部分を教育したことになる。


※訳注:カナダにおける北方先住民はファーストネーションと呼ばれ、イヌイットはその民族集団の一つである。イヌイットはカナダ以外にも居住地(テリト リー)をもつが、アメリカ合衆国の北方先住民は今でも(カナダでの旧名称である)エスキモーと公的に言われる。

フランツ・ボアズについて調べましょう(復習と復習)

四分類人類学とはなんでしょうか?

・クワキウトルは、現在ではクワクワカワクと呼ぶほうが多くなりました
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ブロニスラウ・マリノフスキー
46.    ブロニスロー・マリノフスキー
46.ブロニスロー・マリノフスキー

ブロニスロー・マリノフスキー(1884-1942)は、英国人類学の創始者だと見なされている。彼はポーランドのクラフクに生まれ、イギリスに人類学を 学ぶ前は、母国で数学と物理学を学んでいた。彼は、ジェイムズ・フレイザー卿著『金枝編』を読んだこと人類学への興味を運命のように感じたのだ。

【台詞】ブロニスロー・マリノフスキー「1915年から1918年のあいだ、第一次世界大戦中の敵国外国人として文字通り「抑留」されていたときに、南太 平洋のトロブリアンド諸島の研究のために30か月の間に3回のフィールドワークのために費やしたんだよ」

イングランドへ戻ると、マリノフスキーはロンドン政治経済院(LSE)での職を得て、1927年にLSEの初代人類学教授として任命された。

マリノフスキーは、英国の第一世代の人類学者の多くを教育した。

【台詞】フランツ・ボアズ「マリノフスキーと私は、次の3つの点で意見が一致していた」

1)参与観察を重視すること
2)研究対象の社会に長期間身を置くこと
3)現地人の言語を使用すること

【台詞】ブラニスロー・マリノフスキー「しかし、ボアズが文化の些細なディテールを強調するのに対し、私は、個人が関わる社会組織の機能を強調したのだ」

ブロニスロー(ブロニスラフ)・マリノフスキーついて調べましょう(復習と復習)

・『金枝篇』とは、どのような書物でしょうか?

・『闇の奥
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フィールドワーク
47.    フィールドワーク
47. フィールドワーク

エスノグラフィーを生み出すために人類学者はフィールドワークを行う。フィールドワークは、ひとりの人類学者をつくりだす通過儀礼なのだ。フィールドワー クのもっとも古い入門書は、1874年に初版『人類学におけるノートと質問(通称:ノート質問)』である。NQAは英国科学振興協会が出版した。その書の 文化についての部分は、E.B.タイラーによって執筆された。

【台詞】学者(人類学者)「この本の目的は、人類学者のみならず、人類学に興味を持つ旅行者や政府執行官、宣教師、フィールドでどのような質問をし、どの ような資料を記録するのかについて指導することだったんじゃ」

【台詞】学者(人類学者)「『ノートと質問』ページにある冒頭の表題と質問項目は、かつての人類学がたどるべき行程を記した地図だったのじゃ」

『ノートと質問』は、英国王立人類学協会(RAI)によって1951年に改訂し編集された。


フィールドワークとはなにか

文化人類学者の情報収集︎▶︎参与観察▶︎︎フィールドワークについてのお悩みにお答えします!▶︎フィールドのノートの記述の長さについてインフォーマント︎︎▶︎若いフィールドワーカーに 贈る言葉▶︎︎フィールドワークの現象学▶︎フィールドワークに関するエッセイアクションリサーチ︎︎▶︎フィールドワーク研究の倫理▶︎
48
フィールドワークにおける人間生態学
48.    フィールドワークの人間生態学
48. フィールドワークにおける人類生態学

フィールドワークへ出かける際、最初に知っておかなければならないことは、ある民族がどこに暮らし、その居住環境がどのようなものなのか、そしてどのよう な生業基盤と経済が営まれているのかということである。

狩猟採集:南アフリカのクンやサン(ブッシュマン)、中央アフリカのネグリト(ピグミー)、東アフリカのハッザ、オーストラリアのアボリジニ、アンダマン 諸島民、イヌイット(エスキモー)、アルゴンキン語派(クリーなど)やカナダのその他の集団がこれに類別される。

漁労:クワクワカワク(クワキウトル)や北アメリカの北西岸のそのほかの集団においてそうであるように、おそらく狩猟採集社会の基礎となる。

牧畜民あるいは遊牧民:家畜に依存する人びと。具体的には、西アフリカのトゥアレグとフラニ、ヌエルとマサイ、また西アフリカのその他の集団、中東のベド ウィン、北ヨーロッパのサーミ(あるいはラップ)などがこれに類別される。

定住農耕民あるいは栽培農耕民:アフリカの大部分、南アジア、東南アジア、ニューギニア、アマゾンの大多数の民族、オジブワと北アメリカのその他の北東集 団、ホピ、ナヴァホ、プエブロ、またその他の南西アメリカの集団、南ヨーロッパの農民共同体(コミュニティ)がこれに類別される。

社会がどのように環境を開発するのかを理解するということは、季節の周期を調べ、その社会において環境がどのように理解されているのか、共同体(コミュニ ティ)の構成員間でどのように分業がなされているのかを問うことを意味する。また、生計を立てること、つまり仕事に関係する儀礼や儀式にまつわる信念と実 践は何かということを見つけ出すことを意味する。

狩猟採集民は、農耕民よりも余暇時間がある。

【台詞】イヌイット「俺たちは自分たちの環境を〈贈り物〉だと考えるんだよ」

【台詞】学者(人類学者)「イヌイットには40以上の雪を分けて理解するのじゃ」

【台詞】学者(人類学者)「ヌエルは、さまざまな種類の牛を指し示す100種類以上もの用語をもっているのじゃ」

【台詞】アフリカ農耕民の女性「アフリカでは、農作物のための田畑を整えるのは多くの場合は男だけど、田畑を耕すのは女なのよ」

【台詞】アフリカ農耕民の別の女性「男は狩猟者なんだが、私たち女たちがほとんどの食べ物を集め、食生活の頼みの綱を提供するのよ」

物質文化と技術は、その環境の開発と、生業や経済の独自の形の実践にとって、極めて重要な要素である。

【台詞】ベドウィン「ここは、睾丸をかみ切ることを含め、ラクダを去勢するための50の方法が存在する場所だぜ。さあさあテントの中に入りなさい」

【台詞】学者(人類学者)「しかし、それ以外にもたくさんあるんじゃ。たとえば、鉄と鋼鉄の道具と比較した際の、石器の相対的な利便性と生産性などな」

【作画のなか】
モノをつくり出す技術、たとえばボートの建造などは、それ自身の信念や儀式、儀礼や規制を持っていることがある。


生態人類学

エドワード・サピア
49
生態人類学
49.    生態人類学
49. 生態人類学

ジュリアン.H.スチュワード(1902-72)は、『文化変化の理論』(1955)のなかで生態人類学を提唱した。彼は、環境と技術が、文化の社会組織 を決定する際の重要な役割を果たしていること、そしてこの2つが進化論的枠組みと相互関係を築いていることを指摘した。

【台詞】ジュリアン.H.スチュワード「生態人類学の主要な概念は…」

適応:環境的ストレスに対応する能力

生業手段:漁業、狩猟、採取、遊牧あるいは農業などの、環境を開発する方法(メソッド)

生態学的ニッチ(地位):特定の環境において利用される資源一式。異なる人びとが同じ環境において異なる生態的ニッチを開発する可能性あり

環境収容力:特定の環境下で存在できる、特定の生業手段に従う人びとの最大数のこと。


・Theory of culture change : the methodology of multilinear evolution,

文化変化の理論 : 多系進化の方法論 / J.H.スチュワード著 ; 米山俊直, 石田紝子訳
50
経済の問題
50.    経済という問い
50. 経済という問題

食糧と財がどのくらい生み出されるのかは、経済がどのように組織されるのか、余剰が生まれるのかどうか、そしてその余剰はどうなるのかといった問いにつな がる。経済資源へのアクセスおよびその分配は、まったく異なる原則によって決定され、儀礼や儀式にまつわる関係と関わっていることが多い。

【台詞】J.H.スチュワード「土地へのアクセスを有するということは、親族、家族のメンバーシップあるいはその集団のあり方に依存する場合が多いという ことなのだ」

【台詞】J.H.スチュワード「モノとサービスの生産も、親族や生まれに基づいていることが多いのである」

【台詞】J.H.スチュワード「モノの交換は、社会における力と影響力の獲得に関係している場合が多いのだ」

「ポトラッチ」、「ビッグマン」、クラは、前資本主義社会において経済概念がどのように働くのかということを示す3つの事例である。



ジュリアン・スチュワードと地域研究
51
ポトラッチ儀礼
51.    ポトラッチ儀式
51. ポトラッチ儀礼

カナダ西海岸のクワクワカワク(クワキウトル)社会は余剰を生み出すが、これは大きな儀礼を開催するために利用され、ある親族集団によって生み出された余 剰が儀式の場で他の親族集団に分配される。生産物の分配を同等にし、与える側に名声を与えるのである。

【台詞】クワクワカワク「受け取った側には互恵的な義務が付与されるのさ」

【台詞】クワクワカワク「私たちは、将来のある時点で、ポトラッチを開催する義務を負うんだ」

儀式の名称になっている〈ポトラッチ〉は、儀式の一部として儀式用の他のモノと一緒に破壊されることになる真鍮製の皿のことである。

・ポトラッチ(potlatch
A potlatch is a gift-giving feast practiced by Indigenous Peoples of the Pacific Northwest Coast of Canada and the United States,[1] among whom it is traditionally the primary governmental institution, legislative body, and economic system.[2] This includes the Heiltsuk, Haida, Nuxalk, Tlingit, Makah, Tsimshian,[3] Nuu-chah-nulth,[4] Kwakwaka'wakw,[2] and Coast Salish cultures.[5] Potlatches are also a common feature of the peoples of the Interior and of the Subarctic adjoining the Northwest Coast, although mostly without the elaborate ritual and gift-giving economy of the coastal peoples (see Athabaskan potlatch).


52
ニューギニアの「ビッグ・メン」
52.    ニューギニアの〈ビッグマン〉たち
52. ニューギニアの「ビッグマン」たち

ニューギニアでは、余剰の経済資源(特に豚)は、蓄財され、贈り物として分配される。

【台詞】ニューギニアの男性「豚を贈ることで、贈る側つまりビッグマンの個人的名声と政治的影響力を増大させるんだ」

【台詞】ニューギニアの男性「そして、クワクワカワク同様、受け取った側には義務が生じるんだよ」



53
クラ交換
53.    クラ交換
53. クラ交換

西太平洋のトロブリアンド諸島の島民たちは、交換の範囲をひろげて、その範囲の内側で腕輪(ムワリ)を首飾り(ソラヴァ)と交換する。交換は、首長とそれ 以外の有力者によって行われ、交換が行われるごとに地位が授与される。

【台詞】学者(人類学者)「規則的な交換の周期があり、財は、島々の集まりの周りを特定の方向に旅することになるんじゃな」そして「そのときには、それ以 外の生産物もまた交換されることになる」


・クラ交換(→「クラ交易/クラの輪(Kula, Kula ring)」)


54
経済人類学
54.    経済人類学
54. 経済人類学

フランスの人類学者マルセル・モース(1872-1950)によって1925年に出版された『贈与論』は、経済人類学の土台を築いた。モースは、贈与は決 してタダ(無償)ではないこと、つまり贈与は、(i)与えねばらない、(ii)受け取らねばならない、(iii)お返しせねばならないという3つの義務を 生むことを指摘した。

【台詞】マルセル・モース「返礼は、すぐに行われる場合と、後で(遅れて)行われる場合とがあるのだ」

【台詞】学者(人類学者)「ここでのひきおこされる義務とは、モノ(の返礼)でなされることも、またそれとは異なり、贈与側の有り難さを感謝として表すこ ともある」

マルセル・モース

互酬性
55
交換と交易のネットワーク
55.    交換と交易のネットワーク
55. 交換と交易のネットワーク

交換は、市場を介して行われ、広域的な交易のネットワークを巻き込むことが多い。西アフリカや東南アジアの例のように、女性はしばしば交易の重要な担い手 となる。

【台詞】メアリー・ダグラス「交換媒体としてのおカネは、さまざまな形をとり、単なる通貨以上のことを意味することも多々あるのよ」

メアリー・ダグラス(1921-2007)は、コンゴのカサイのレレについての研究のなかで、ラフィアヤシの布を交換のために編んでいる一方で、近隣集団 の人びとはその布を衣服として使うためだけに編んでいることを示した。つまり、レレのラフィアヤシの布は、次に示す4つの異なる機能を果たしていた。

1)衣服として
2)公式の贈与、あるいは親族間での自分たちの地位を得るための財としての利用
3)親族以外の間で交換される財の価値を決めるための貨幣としての利用
4)鍬から陶器までのさまざまな財を他の人びとから獲得するための交換のなかでの利用。つまりレレにとっては貨幣で、受け取る側にとっては財の交換物とし ての利用。

互酬性

メアリー・ダグラス
56
形式主義《対》実体主義論争
56.    形式主義者と実体主義者の論争
56. 形式主義者と実体主義者の論争

経済人類学の大きな論争は、経済学の「法則」が普遍的かどうかという問いをめぐる、形式主義者と実存主義者間の論争である。

形式主義者は、経済学は科学であり、経済人類学とこの学問と大いに関係があると主張する。経済的合理性は、基本的な「法則」である。人びとは、自らの最大 の利益となるものを選択し、そうではないものを拒絶する。

【台詞】形式主義者「形式主義は、根本的に異なる文化を比較することを可能にするのだ」

実体主義者は、経済の普遍的な「法則」とりわけ「経済的合理性」という考えに反対する。その代わりに、経済は文化のなかに埋め込まれていると主張する。交 換にはいろいろ違った面があるが、それらはさまざまな社会でそれぞれ異なった働きをする(と主張するのだ)。

【台詞】実体主義者「交換と労働に対する異なる態度があって、異なる社会においては、同じ財に対しても異なる価値概念を付与しているのよ」

経済史家のカール・ポランニー(1886-1964)は、『初期帝国の交易と市場』(1957)において、経済の「実体主義」と「形式主義的」とを区別し た。「実体主義」は、経済は自然環境や社会環境との関係であると考え、経済の「形式主義的」は、手段と目的の間に経済合理的な論理的な関係があるとした。

【台詞】学者(人類学者)「これら2つの関係は、はたして対置されるものなのか、それとも、これらの間に相互関係があるのじゃろうか?」

エドワードE・レクレアとハロルドK・シュナイダーが編集した『経済人類学』(1968)は、この論争から両方の立場から論文や抜粋をあつめた古典的論集 である。


・まず「経済人類学」の項目をみてください。

・形式主義者と実体主義者の論争はもう古いか?



・【閑話休題】
Economic Anthropology 2020 DOI:10.1002/sea2.12189 Bitcoin and its spheres of consumption:Transactional orders of consuming moneyin the Czech and Slovak Bitcoin community.

・ビットコイン(→「ブロックチェーン」)

フィンテック・イノベーション入門
57
マルクス主義人類学
57.    マルクス主義人類学
57. マルクス主義人類学

形式主義者の立場も実存主義者の立場も共に、マルクス主義人類学の批判対象であるが、実際にはマルクス主義人類学も両方の立場も兼ね備えている。資本主義 社会を説明するために発展した基本的なマルクス主義の概念を、前資本主義社会の研究に導入するというのがマルクス主義人類学なのだ。

生産様式:採集、封建制、資本制

生産手段:狩猟、漁業、農耕

生産関係:上述の活動がどのように組織されているかということ

【台詞】マルクス「マルクス主義人類学は、経済を人間の社会生活の根本だと見なしている」

【台詞】人類学者「しかし、マルクス主義人類学は、生産様式が(しばしば力関係で表される)特定の社会関係を意味して、それにより特定の社会形態と文化的 抑制必然的に伴うことも認めてもいるのじゃ」





・【閑話休題】→「ムブティの狩猟民における「動物残虐趣味」について

58
マルクスの進化論的見解
58.    マルクス主義的進化論の見方
58. マルクス主義的進化論の見方

マルクス主義は、矛盾というダイナミックな概念に依拠した進化主義的な見方である。このことは、生産様式が崩壊し、歴史的により進歩した様式への変容を生 むということがある可能性をしめす。

さまざまな生産様式は、しばしば〈節合の過程〉にある。その意味は、前資本主義経済は、資本主義経済の内部あるいはその関係において動いていて、またそう であるように研究されるべきだ。

【台詞】学者(人類学者)「マルクス主義の考えに影響を受けた人類学者は、「他者の」文化を、植民地主義やグローバリゼーションとの関係において、あるい は世界システムの一部として研究するようになっているのじゃ」

【台詞】アナザシ「つまりお前達人類学者どもは、現実の世界がどのように作動するかということに気が付いたんだね?」

経済人類学は、現在『事物の社会的生活』として研究できるが、これは、1986年にアルジュン・アパデュライが編集した論文集の書名である。この論文集に は形式主義的な経済アプローチはされておらず、その代わりにそれぞれの社会的文化的文脈のなかでの経済活動——すなわち実体主義的側面——を描写し理解す ることが試みられている。

【台詞】学者(人類学者)「〈贈与〉と〈商品〉の区別は、新古典派経済学に支配的な前提を批判することを目的とするものなのじゃ」

【台詞】アナザシ「言い方を変えると、人びとが互いに対して実際にどのように行動を起こすのかは、たんに抽象的な経済〈法〉の帰結ではないということだ ね」
・「マルクス主義者たち:人間の活動を生成する二次的な場:「文化」概念の検討

The Social Life of Things: Commodities in Cultural Perspective, Edited by Arjun Appadurai, New School University, New York, 1986, 2014
59
世帯単位(The Househould Unit)
59.    世帯単位
59. 世帯という単位

世帯は、社会を構成する最も重要な単位であり、フィールドワーク調査をはじめる標準的な場所である。

【台詞】学者(人類学者)「世帯は、社会の小宇宙であり、文化がじっさいに行われる場所、として見なされたり」——そして——「あるいは、生物学的性別、 社会的性別、家族というものを調べることができる家の中=ドメスティックな領域として世帯がみなされてきた」

誰が世帯の構成員なのか?、どのように世帯が組織されるのか?、世帯それ自身をどのように養い、どのように必要なモノやサービスを提供するのか?を尋ねる ことは、生態、経済、家族、親族から、政治、宗教、慣習、儀礼的象徴という、より規模の大きな社会組織まで、人類学者にとってのあらゆる関心分野を呼び覚 ますのだ。

婚姻・家族・親族、を参照してください
60
家族の形態
60.    家族の形態
60. 家族の形態

異なる社会には異なる家族のかたちが存在する。

核家族
結婚した夫婦とその子どもからなる。

複合家族
1人の男性※、彼の複数の妻あるいは内妻、そしてその子どもからなる。

合同家族
ある兄弟集団とその妻と子どもの同居。

拡大家族
近い親族関係の核家族の集まりで、そこには祖父母、両親、子どもが含まれるもの。
この用語は、都市の環境下で、同居はしないものの近しいつながりを維持している集団にも用いられる。

【台詞】学者(人類学者)「家族のさまざまなかたちは、家族の成員で認められているさまざまな権利と義務の広がりを示すものなのじゃ」

※【訳注】男性中心主義のように思えるが、複婚制(polygamy)を取る人類社会のうち民族社会の数では、約8割が一夫多妻制(polygyny) で、一妻多夫制(polyandry)は1%にも満たない。

婚姻・家族・親族、を参照してください
61
婚姻紐帯(The Marriage Links)
61.    結婚紐帯
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62
婚資、あるいは婚礼[契約]資金
62.    結婚契約にかかる支払い


63
親族の研究
63.    親族研究


64
親族記号
64.    親族コード


65
類別的親族 (Classificatory kinship)
65.    類別的親族


66
擬制的親族(fictive kinship)
66.    疑似的親族


67
出自理論(descent theory)
67.    出自理論


68
結婚と居住の規則
68.    結婚と居住の規則


69
親族用語
69.    親族の表現方法(イディオム)


70
親族の「効用(use)」とは何か?
70.    親族の〈効用〉とは何か?


71
連帯理論と近親相姦の禁止
71.    縁組理論とインセストタブー


72
心のなかの構造
72.    心(マインド)のなかの構造


73
基本的構造の形態
73.    基本構造の形態


74
縁組理論は本当にうまくいっているのか?
74.    縁組理論は役に立つのか?


75
政治と法律
75.    政治と法


76
オマケの例
76.    その他の事例


77
用語法的研究
77.    用語法(ターミノロジー)的アプローチ


78
政治人類学
78.    政治人類学


79
年齢階梯社会
79.    年齢階梯社会


8
共時的《対》通時的見解
80.    共時的視点vs通時的視点


81
他の社会階層化
81.    その他の社会階層


82
交渉するアイデンティティ
82.    交渉するアイデンティティ


83
エスニシティ(民族性)の諸問題
83.    エスニシティの諸問題


84
植民地主義
84.    植民地主義


85
反ー資本主義的人類学
85.    反-資本主義人類学


86
法の人類学
86.    法人類学


87
口論解決のメカニズム
87.    係争処理のメカニズム


88
宗教
88.    宗教


89
シャーマニズムとカーゴ・カルト(積荷崇 拝)
89.    シャーマニズムとカーゴカルト


90
聖と俗
90.    聖と俗


91
魔術/呪術の人類学
91.    呪術の人類学


92
信念をめぐる論争
92.    信念についての論争


93
儀礼の検討
93.    儀礼の検証


94
通過儀礼
94.    通過儀礼


95
神話の研究
95.    神話研究


96
クロード・レヴィ=ストロース
96.    クロード・レヴィ=ストロース


97
二項対立と構造
97.    二項対立と構造


98
象徴とコミュニケーション
98.    象徴(シンボル)とコミュニケーション


99
象徴と社会過程
99.    象徴(シンボル)と社会プロセス


100
アクター、メッセージ、コード(行為者/ 伝達内容/暗号)
100.    主体(アクター)、メッセージ、コード


101
シンボリズムと新しい見解
101.    象徴主義と新たな視点


102
芸術の人類学
102.    芸術人類学


103
映像人類学
103.    映像人類学


104
消失してゆく世界
104.    消えゆく世界


105
新しい枝か?古い根っこか?
105.    新たな枝派か?あるいは古根か?


106
フィールド経験を書きたてる (Writing up the field)
106.    フィールドを書き上げる


107
現在において書く
107.    現在において書く


108
自己[回帰の]人類学(Auto- Anthropology)
108.    自己回帰の人類学


109
二重のテポストラン、闘争的テポストラン
109.    テポツォトラン論争/テポツォトランの2つの顔


110
テポストラン再訪
110.    テポツォトラン再訪


111
人類学とは科学なのか?
111.    人類学は科学なのか?


112
科学のふりをすること
112.    見せかけの科学


113
インディアンは居留地を出る
113.    保留地の外へ出たインディアンたち

114
誰がインディアンのための語るのか? 114.    誰がインディアンのために語るのか?

115
神としての白人
115.    神としての白人

116
権威の神話
116.    権威神話

117
出来事の位相
117.    出来事の地平線


118
自己批判的人類学
118.    自己批判の人類学


119
人類学のヒーロー
119.    人類学の英雄


120
ミード神話の没落
120.    ミード神話の崩壊


121
観察される観察者
121.    『観察される観察者』


122
粘土の足
122.    もろい基礎


123
自己投射の議論
123.    自己投射の問題


124
文化を書くこととポストモダニズム
124.    文化を書くこととポストモダン


125
ポストモダンの麻痺
125.    ポストモダンの無気力感


126
人類学における女性
126.    人類学の女性たち


127
人類学者たちの親族紐帯
127.    人類学者の親族紐帯


128
フィールドの協力者
128.    フィールドの協力者


129
フェミニスト人類学
129.    フェミニスト人類学


130
フェミニスト人類学の位置づけ
130.    フェミニスト人類学の位置付け


131
未接触の人々
131.    穢れなき民


132
ヤノマモ・スキャンダル
132.    ヤノマミ騒動(スキャンダル)


133
内戦を創り出す
133.    生み出される内乱


134
人類学はどこへゆく?
134.    人類学はどこへ行く?


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